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第2章「はきだめ」 7-3 強制排除

 「で……では、どういたしましょう……ストラさん……」

 想像を絶した事態に、シュベールが途方に暮れる。

 「フランベルツ家に、報告するのでは?」


 「報告はするさ! し、しかし……魔族が絡んでいるとなればですね……」


 シュベールが、非常に渋い顔となった。

 「報告が、無事にガニュメテに届くかどうか……」

 ガニュメテとは、選帝侯地方伯の城がある首都のことである。


 「魔族は、魔物を自在に使う。伝令にしても、魔物を撃退できるような強者でなくては……!」


 そこで、プランタンタンがストラを伝令に雇うのはどうかと提案しようかと思った矢先、


 「では、強制排除してかまいませんか?」

 「え?」

 意外な質問だった。シュベールにとって。

 「きょ……強制……排除……とは?」


 「フランベルツ家にとって、三組織はおろか、その魔族そのものが排除対象と推察します。報告し、指示判断を仰ぐことが困難なのであれば、先んじて排除します」


 シュベールが口を開け、息も止まって眼をしばたかせる。


 「え、え……できるんですか!? い、いやいや、よろしいんですか!? フランベルツ家に協力をしていただけると云っても、いきなり三つの組織とその裏の魔族を武力で壊滅して頂けるので!?」


 「もちろん、報酬は頂きます」

 「ですよね」

 「十万トンプでいかがでしょう」

 「十万トンプ!?」


 思わずプランタンタンが嬉しさのあまり声を出そうとして、口を手で抑えた。見ると、フューヴァが驚愕しきって細い眼を見開き、大口を開けて硬直している。無理もない。小さな村や町の、年間予算に匹敵する。


 「伯爵にとって、それくらいの価値があると推察します」

 「う、ううむ……」


 シュベールが唸る。確かに、魔族が相手では、討伐するにしてもそれくらいの予算がかかる可能性はあるし、ついでに組織を三つともつぶせるのであれば、安いものかもしれない。なにせ、地方伯の兵はまったく失わないのだから。


 「ですが、私の判断権限を超えています……」


 「それは理解します。では、十万トンプに匹敵する報酬を考えていただきます。私達がそれくらい稼げる環境を、設定してください。どちらにせよ、あの魔力の蓄積量は危険です。私の防衛モード発動条件に合致し、防衛戦闘が適応されますので、先制強制排除します」


 「は、はあ……」

 シュベールは、ストラが何を考えているのかよく分からなかったが、


 (なんにせよ……コイツ・・・が勝手にやってくれるのであれば、伯爵家にとっても有益……マズった場合も、被害は無い……)


 そう判断し、

 「いいでしょう。なにか、協力できることは?」

 「特にありません」

 「あっ、そう……」

 「ですが……もし、よければ、町の人たちの避難を」

 「えっ……それは、つまり……」

 街が戦場になるということか。


 シュベールは表情を引き締め、

 「分かりました。組織と関係の無い人々を、なんとか誘導しましょう」

 「よろしくお願いします」

 「いつ、決行しますか?」

 「明日にでも」

 「早すぎます……避難が行き届きません」

 「では、どれほど時間をとればよいですか?」


 「七日……いや、五日。市役所で、地方伯の緊急避難命令を発出します。私には、その権限があります。万が一、伯爵家の兵がこの街を攻めた場合、一般人を避難させるためにね……」


 「では、五日後に決行します」


 事態が急展開し、興奮したシュベールはもう一杯、ワインを注ぐと一気に飲み干した。


 そしてゴブレットを置き、

 「あ……あと、私からも報告が」

 「…………」

 ストラが黙っていたので、そのまま話を続ける。


 「地下で、貴女と別れてすぐ……何者かに襲われました。眼が銀灰色に光っており……まるで死に神のような……恐ろしい相手です。あれが、その魔族でしょうか?」


 「背が高くて、痩せていましたか?」

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