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第13章「ていと」 1-2 10日後に出発

 城での打ち合わせが終わり、戻ってきたルートヴァンとストラを出迎えて、フューヴァとプランタンタン以外の4人がいっせいに席を立った。


 「御疲れさん」

 「ああ、久々の王宮の仕事は、疲れるね」


 ルートヴァンがそう云ってソファに座る。4人は、立ったままだ。ストラは、音もなくロビーの片隅でいつも通り腕を組み壁の向こうを透かし見るように立ちすくんだ。


 「でも、そろそろ終わるよ。御爺様とレクサーン王とのやり取りの段取りも、ようやく終わったからね」


 「そうか……ヴィヒヴァルンとチィコーザが同盟を結ぶんだものな」


 「皇帝府や、周辺諸国……とくに帝国中央部や西方部は、腰を抜かさんばかりに驚いているようだよ」


 「なんででやんす?」


 「ヴィヒヴァルンとチィコーザは、ここ100年はいつ戦争をしてもおかしくないほどの仲の悪さだったからね」


 「へえ……」


 聞いておいてプランタンタン、人間の国のことはさっぱり分からないし、相変わらず興味もない。


 「殿下、では、そろそろ出発でしょうか?」


 真冬にもかかわらず熱い石炭ボイラーの湯で入浴もでき、衣服も仕立て直してもらってこざっぱりとしたホーランコル達だったが、状況に飽きてきてヒマを持て余しているのも事実だった。そのホーランコルの目の輝きに苦笑し、ルートヴァン、


 「そうだな。まずはノロマンドルでオネランノタルやフローゼと合流し、ペッテルに状況を聞く。それから、帝都に向かって出発だ」


 「アタシやプランタンタンは、リューゼンは初めてだぜ!」

 フューヴァも御上りさんめいて、目を輝かせる。

 「キレットとネルベェーンは、元々帝都の出身だったっけ?」


 「いえ、生まれは南部大陸の奥地ですが、10年ほど前より帝都を起点に冒険者を」


 「じゃあ、案内してくれよ」

 キレットが微笑みながら、


 「帝都は広いですよ。宮城の城下だけでもこのバラーヂンくらいはありますし、その周囲にはここくらいの街や大きな田畑を抱える村が幾つも」


 「へええ、帝都だけで、1つの国みてえなんだな」

 ルートヴァンが、フューヴァの言葉にうなずいた。


 「そうだね、僕も何度か御爺様やシラール先生に連れられて行ったことがあるけど……本来の帝都自体は、大帝国の首都にしては意外にこじんまり・・・・・としているんだ。けど、それを取り巻くいろいろな街やら村やらがひしめいていてね……それらを含めると、事実上の皇帝府国だね。帝都州というか」


 「そこで、何かするんでやんすか? 通り過ぎるだけで?」


 「ま、僕はいろいろと魔王に関する調べ物をね……みんなは、その間、好きにしていてよ。シーキよ、お前も来るか?」


 急に話をふられてシーキ、

 「行きませんよ」

 苦笑するほかはない。


 「ホーランコルらを通じてでもよいから、何かあればすぐさま連絡つなぎをつけるのだぞ。そのために、レクサーン陛下はお前を騎士団長にしたのだからな」


 ルートヴァンのにやけた流し目に、シーキは直立し胸に右手を当てて敬礼した。

 「ハッ、有り難き幸せ!」

 ルートヴァンがフューヴァとプランタンタンに向き直り、


 「じゃ、あと3~4回の打ち合わせで御役御免だと思うから……10日後に出発することとしよう。聖下、それで……」


 「いいよ」


 ストラがルートヴァンを見もせずに、ぶっきらぼうに云い放った。いつものことなので、誰も何も思わなかったが、ルートヴァンはストラが凝視している壁の隅の方角が西であることに気づいていた。


 (フフ……聖下の全てを通す恐るべき眼差しは、既に帝都とそのはるか西方の未だ秘されている未知の魔王たちとの死闘を見据えているのだ……!!)


 ルートヴァンが、これからまだまだ待ち受けているであろう超絶的な冒険の数々に、武者震いをした。



 きっかり10日後、一行が王やその家族、騎士団、宮廷魔術師たちの見送りを受け、密かに王宮を出発した。旅の物資は、全てレクサーン王が手配してくれた。


 王都のひとびとは、特に「魔王様御一行」の存在や滞在を知らされていなかったので、王宮の裏門勝手口から街に出てしまえば、よくいる冒険者一行にしか見えなかった。もっとも、ピオラを除いて。


 「やあっとゲーデルに行くんだなあ?」

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