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第12章「げんそう」 7-18 運命の主兵装

 単純な攻撃魔法では、魔力量が大きければ、威力も比例して大きくなる法則がある。最も初歩的な魔法の矢マジック・ミサイルとて、習いたての子供では豆鉄砲ほどの威力もないが、ルートヴァンでは対人ライフルに匹敵する。まして、父より送られる魔力をもってすれば、さらに威力は上がる。


 (だが、こやつほどともなれば、おそらく人間の使う術式など、ほとんどすべて無条件で無効化するはずだ……!)


 で、あれば。


 (できるかどうかしらんが……!! 僕も……魔力を物質化し、直接たたきつけるしかない!!!)


 単純明快にして、最大の効果があるが、使用する魔力は桁違い。

 まさに、魔王級の魔力をもってして初めて可能な、魔王の戦闘法だ。

 ルートヴァンが強大な魔力を一点集中し、杖先に集めた。


 これまでも、魔力を集めて槍のようにしたことはあったが、あくまで我々のイメージで云えばビーム・サーベルのようなもので、純粋に魔力から得られる「攻撃力」を集めたに過ぎない。


 魔力そのもの・・・・を物質化するまで超絶的に凝縮するのは、根本から異なる。

 「ほう……」

 ゾールンが、内心、ほくそ笑んだ。


 (けぇっへっへ……なかなか、やる・・じゃねえか……こっちの誘いに乗ってこねえ……) 


 ゾールンの全身から、蜷局とぐろを巻いて魔力が吹き上がった。

 それらが、まさに竜のようにうねり、次々に実体化する。

 魔竜パガンゲドルだ。


 さらに、人の頭ほどもあるゾールンの両拳に魔力が集まり、装甲のように物質化する。


 (クソッ……分身の分際で、なんたる……!!)


 いかにルートヴァンとはいえ、この魔力槍ごと粉砕されるのは、目に見えていた。


 無言でゾールンが身構え、ルートヴァンが死を覚悟した、その時……。

 ゾールンの真上から、突如としてオーロラのようなものがふりそそいだ。

 「?」


 ルートヴァンも、オネランノタルも、ノコォノスガンマナ、ゾールンにも、それが何なのか、分からなかった。誰も、見たことがなかった。


 この世界の・・・・・ものでは・・・・なかったからだ・・・・・・・


 余剰エネルギー回収フィールドが完全にゾールンとノコォノスガンマナを包囲し、その魔力より強制的にエネルギーを奪った。


 「アゥがアアアあああアアアア!!!!」


 全身の細胞が爆発するような、全身の神経が引き裂かれるような衝撃と激痛がノコォノスガンマナを遅い、ゾールンの肩より転がり落ちた。


 「ガ、ガンマナ!!」

 ゾールンは実体としてはゾンビ体であり、痛みも衝撃もない。

 だが、とんでもない勢いで魔力からパワーが吸収されていることは分かった。

 分体の維持が、不可能となるほどに。

 「……てめえ……!!」

 ゾールンが見上げた、空中にいたのは。

 「……聖下ァ!!」


 ルートヴァンが涙目となって、頭上に浮遊したまま、下目でゾールンを凝視するストラを見やった。


 (あれが異次元魔王か……ケッ、異次元から来たっちゅうだけあって、ワケのわからねえ術を使いやがるぜ……)


 魔力を吸収する法というのは、この世界にもある。しかし、魔力から純粋に潜在エネルギーを奪うという発想は、この世界のものには無い。


 「おもしれえ……」


 ゾールンが、上空30メートルほどにいるストラめがけて空間攻撃を試みる。空間をゆがめ、距離を無視してその物理的大威力をぶちかます。


 だが、既に空間を操作するエネルギーが残っていなかった。エネルギーを奪われた魔力(ストラの定義によると超絶高エネルギー密度の未知素粒子『魔力子マギコリノ』)は、変質して空間中に霧散する。すなわち、どんどん「消える」ことになる。


 いま、ゾールンは自身の肉体ですら魔力で構成している。これもストラの定義で云うと、疑似物質状態だ。


 その根源の魔力が見る間に消失しているので、ゾールンの身体もたちまちのうちにスカスカ・・・・になってきた。


 (なぁる……やる・・じゃねえか……こんな攻撃方法が……!)


 この「余剰エネルギー回収フィールド」プログラムは、当然攻撃用ではないし、補給プログラムとしてもサブサブ機能程度の些細なものである。それが、この世界・・・・では超絶的に効果的な主兵装メイン・ウエポンとして機能するところが、まさに運命的であろう。


 一方そのストラも、


 (待機潜伏中自己防衛戦闘モード3残り258秒……このまま回収フィールド持続……許可……対象が消失するまで回収を続けます)

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