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第12章「げんそう」 7-11 戦闘開始

 「ィヒーーッッシュッヒヒヒヒィ! なんでもいいよお! 私から戦火を開くよ!」


 まだ魔物の姿のままのオネランオタルが、地面でカニめいた脚を振り上げる。


 「では、初手は主攻撃がオネランノタル殿、フローゼが直掩、僕が魔法援護と参りましょう。あとは、随時臨機応変に」


 「わかった」

 フローゼがうなずき、オネランノタル、

 「じゃあ……戦闘開始だね!!」


 云うが、蝙蝠翼を広げ、羽ばたくというよりその翼から猛烈に魔力を噴き出して、凄まじい速度の飛翔でシャスターめがけて突っこんだ。


 ルートヴァンも続き、フローゼはルートヴァンの術で飛ぶ。


 この場合、攻撃の前に勇者級パーティの定石である各種の攻撃力・防御力付与魔術を発動させるのが先だが、オネランオタルとルートヴァンは思考だけで勇者の数倍の威力、効果を発揮し、フローゼは「能力」でそれを有している。


 この3人、そのまま・・・・で並の勇者パーティ数組を難なく瞬殺せしめる戦闘力であった。


 「来たぞお!」


 宝箱の中の「冬の日の幻想」から魔力の供給を受けたノコォノスガンマナが、まず吶喊してきたオネランノタルを防ぐべく、邸にバリアをかける。魔術ではなく、魔力の直接行使だ。


 「無駄だね!!」


 神殿跡の大洞窟でゾールンにやられた御返しとばかり、オネランノタルが魔力を集中させる。


 凄まじい衝撃音と地響きがし、シャスターの街全体が震度3ほどの揺れに襲われた。


 「な、なんだあッ!?」


 街の人々も驚いたが、ゴドゥノやウィーガーも何事かと戸惑った。あまり地震のない地域なので、地面が揺れるという実感がない。棚やテーブルより高級そうな飾り皿や花瓶などが落ち、割れた。


 「正体を現しなよ、エルフの巫女さん!!」


 オネランノタルの割った部分に内側より魔力を補給し、バリアを厚くするノコォノスガンマナだったが、オネランノタルの中和がそれに勝った。


 くわえて、後ろからルートヴァンが膨大な魔力を使って中和をサポートする。

 「あいつめ、人間の癖に、なんという魔力か!」


 さすがのノコォノスガンマナも、魔力を映してピンクに光る眼をむいて、むしろルートヴァンに驚いた。


 バリバリ、バキバキとバリアが砕け、完全に砕け散る前に、その隙間から既にフローゼがシャスターク邸に侵入していた。


 忍者めいて屋根を伝い、背後より接近。

 (くらえ!)

 効果範囲内にノコォノスガンマナと大男が入ったとたん、魔力阻害装置を作動!!

 「……!?」


 フローゼの能力を知らなかったノコォノスガンマナが虚を突かれ、まともに食らった。


 「ギュチャァアア!!」


 まさに蟲が潰されたような音を立て、大男が即死した。無理もない。魔物なのだから。魔力中枢器官が機能停止し、瞬時に全身が砕け散った。


 従って、宝箱が屋根に落ち、フタが壊れて中より純白で虹色に光を反射するシンバルベリルが転がり出た。


 フローゼの魔力阻害効果により、シンバルベリルからノコォノスガンマナに供給されていた魔力も、一時的に遮断された。


 魔力が弱まり、オネランオタルとルートヴァンの中和攻撃が、堤防が決壊したように邸に押し寄せた。


 中和と云っても、魔力の振動波だ。目に見えない巨大な何かが押しつぶしたように、伯爵邸が一瞬にして屋根からぐしゃぐしゃに崩れ、崩壊する。


 これは、伯爵邸の真上で気化爆弾が炸裂したにも匹敵し、伯爵邸と周囲数百メートルの家々と人々が、衝撃波で粉々に吹っ飛んだ。


 もちろん、ゴドゥノや、ウィーガーも……。


 爆発が収まり、瓦礫の山……いや、瓦礫の散乱する更地となったシャスター中心部で、猛烈な土煙と白煙が立ちこめ、風に流れる。異変に気がついたシャスターの市民が外に出て、その立ち上る巨大な煙を見やり、わけが分からずとも我先に逃げ始めた。


 その更地の中心に、魔力の塊で身を護ったノコォノスガンマナが立っていた。

 フローゼの攻撃で変身が解け、真の姿を曝している。


 帝国では知られていない、南方大陸の奥地ガナンの、さらに奥にいるという幻のヴィーキュラーガナンダレ密林エルフだった。


 ビターチョコレートにも似た濃いこげ茶色の肌をし、長く編まれて盛り上がり、木や金の飾りかんざしが幾つも刺さっている髪は血のように赤い。その目は薄い赤に魔力を映してピンクに光っていた。背がひょろっと高く、肩が広くて、やけに首が長く見える。顔が小さくて、手足が長い。顔立ちは、ネルベェーンに似ていた。眼が丸くて大きく、だんご鼻だった。草原を走るネコ科の猛獣を人型にしたら、このようになるのではないかと思われた。魔力で護られており、寒く無いものか、衣服は南方民族的で、これも真っ赤や黄色による幾何学模様の一枚布を胴体を巻き、金具で止めて短いスカートのように垂らしているだけだった。エルフはもともと男女の区別があまりつかないが、巫女であるというし、胸元まで布を巻いているので女なのだろう。耳は、長耳種ではなく、すこし尖っている程度の短耳種だ。特に武器もなく、素手だった。このレベルになると、魔法(巫女)戦士とはいえ魔力が武器だ。だが、肩にかけた帯に、細い飾り短剣のようなものを二本結び、ぶら下げている。

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