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第2章「はきだめ」 6-3 魔物

 外骨格だ。二足歩行で手足が二本、人間タイプの甲殻類か、節足動物だ。頭部にあるのは、間違いなく人間のそれではない。では何かと問われると、なんとも云えぬ何か・・が乗っている。ヘルメットをかぶった人間のような、何かの肉食昆虫のような、我々で云えば、アニメかゲームに出てくる敵メカのような。それが巨大で艶やかな黒い円楯と片刃で幅の広い蛮刀を持ち、背中にも何か甲羅のような、甲虫の羽のようなものがついている。


 「フューヴァさん、いくらなんでも、あんなの……!」


 「い、いや……知らない……トルネーグスは……ニデル人ニデラスタだったはず……あんなやつじゃないぞ!!」


 ニデル人ニデラスタとは獣人の一種で、ニデルと人が混じったような姿をしている。ニデルというのは、我々で云うトラやライオン、あるいはサーベルタイガーに近い猫科の巨大猛獣だ。


 「あいつは、二代目だよ!」

 セコンド席の近くの観客のオヤジが、歓声に混じって声をかけてくる。

 「二代め!?」


 「ニデル人ニデラスタのヤツは、半年前に殺されたんだ! 勝ったヤツが入れ代わって総合一位になったんだが、次の試合でアイツに一撃で殺された! そして、アイツがトルネーグスになったんだ! おれたちゃあ、二代目って呼んでる!」


 「なんだよ、そりゃあ!!」


 フューヴァは呆れた。獣人はそもそもあまり知能が高くないが、きっとあの虫人間(?)はもっと少ない・・・のだろう。どこで調達したかは知らないが、ソイツをいいように使っているのだ。


 「こりゃ、ギーランデルにしたのは正解だったかもな……」

 そう思った矢先、隣でプランタンタンが、

 「ペートリューさん、どうしやした!? しっかりしておくんなせえ!」


 フューヴァが見ると、ペートリューは酒の入った水筒も床へ放り出し、頭を両手で抱えてガタガタと震えていた。


 「おいペートリュー!? どうした!? 気分が悪いのか!?」

 「……ものです……!!」

 「なんだって!?」

 大歓声で良く聴こえない。

 いきなり、ペートリューが顔面蒼白でフューヴァへとりすがった。


 「魔物ですよ!! アイツ!! 魔物!! どうして、こんな興業に魔物がいるんですか!? どうやって、魔物を操っているんです!? 組織の人たちは、どうやって魔物を!?」


 「…………!!」

 フューヴァが凍りつく。そして、ステージのトルネーグスを見上げた。

 「ま……魔物だと……!?」


 魔物がこんな街中で……しかも、大観衆の面前にいるというのは、確かに前代未聞だ。しかも、誰も気づいていない……。


 「強力な魔法使いか……魔族にしか魔物は操れません……とても、雇われの魔法使いなんかには、魔物は使えません……!! この街の組織というのは、魔族結社だったんですか……!?」


 「い、いや、そんなハズは……!」


 ペートリューの恐れは、魔法使いではないフューヴァにもプランタンタンにも分からなかった。が、裏の殺し合いとはいえ、本当に魔物がこんな興業試合に出ているとなれば、黒幕に邪悪な魔法使いや魔族がいるというのは、理解できる。


 プランタンタンとフューヴァが眼を合わせたが、何も言葉が出て来なかった。


 壇の上では、ストラが一瞬でそのトルネーグスを探査。


 (……魔力子マギコリノを細胞内に取りこみ……ATP回路に酷似した生体回路に通してエネルギーを得ている……まったく未知の生命体……。また、外骨格表面に先日の対戦相手の甲冑表面に施されていた対魔法効果と同じく、魔力子マギコリノによる一定の構造パターン……魔法的空間歪曲効果により、こちらの攻撃を無力・弱体化する可能性が高い……。魔法生物……あるいは、魔力子マギコリノ依存生物……すなわち、魔物・・……)


 だが生物である以上、もしストラが作戦行動中の完全戦闘モードであれば、圧倒的な超絶火力をもって瞬きする間もなく原子分解レベルで蒸発させることができる。


 現在の作戦行動圏外自律行動待機潜伏モードでの戦闘行為は、必然、攻撃力に大幅なリミッターがかかっている。


 こんな、中近代に毛の生えたような世界では、それでも超絶に圧倒的なだけだ。


 (……火器及び光子振動攻撃は弱体化される恐れ……やはり、直接的パワー勝負か……)


 銅鑼ドラが鳴った。

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