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第12章「げんそう」 4-1 ゾールンの神殿跡

 とはいえ、今は共にストラに協力する立場であるのは理解しており、任務を放棄するつもりはない。


 フローゼの案内により、街道をショートカットしてまっすぐ進んだのと、なにより3人とも「人間ではない」ため、ピオラが少しの休息をとるだけでほぼ夜通し休まずに進んだことにより、日程を5日ほども短縮して、荒涼とした原野に忽然と出現する遺跡に到着した。


 グリーケル地方にある「ゾールンの神殿跡」と呼ばれる、チィコーザでも知る人ぞ知る古代の廃墟だ。


 が……。

 「あれ?」

 フローゼが、半ば呆然として原野の向こうに現れ始めた遺跡を見やった。

 「どうしたあ?」


 誰とも遭遇しないので、ピオラとオネランノタルは、魔力のフードをとっている。ただ、ピオラはかなり冷えてきているとはいえ、未だマントのようにオネランノタルの魔力で「冷房」の効いている大きな漆黒のローブを羽織っていた。


 「あんな高塀は、前はなかったような?」

 「塀だって?」

 オネランノタルが、魔力で視界を近づける。望遠だ。

 「ほんとだ、ピオラの背よりも高そうな塀に、グルッと囲まれてるよ」

 「へええ。なんでだあ?」

 「知らないよ。フローゼ、なんでだい?」

 「私だって知らない。前は無かったもの」

 さすがに、この異変でオネランノタルを無視するほど子供じみてはいない。

 「じゃあ、以前フローゼが侵入してから、何者かがあの塀を建設したってことだ」

 「なんのためにだあ?」


 「そりゃ、新たな侵入者を防ぐためにだよ。ヒヒ……こりゃ、大公の云っていたことは、当たり・・・かもね」


 「どういうことだあ?」


 「まだ神殿の地下に、封じられたな謎の魔王に関する『何か』が残ってて、それを護ってるってこと!」


 「誰が護ってるってんだあ?」

 「この国が、でしょ!? 行きましょう!」


 やおらボタ雪が降り注いでくる中をフローゼが小走りに進み、ピオラとオネランノタルも続いた。


 神殿はかなり古いもので、少なくても数百年前に放棄されている。石材を独特の接着剤のようなもの……古代コンクリートに近い……で組み上げており、王宮のように大きい。それが半分近くも崩れ、瓦礫が山のように積もっている。敷地の何か所かに地下への入り口が開けられており、これまでも幾多の冒険者が古代のお宝を求め、探検隊として中に入っている。


 フローゼも、その1人だ。


 「ただ、この遺跡、建物も大きいけど地下の空間がさらに広大で……天然の洞窟部分も含めて、まさに、地下迷宮なの。入ってすぐの段階では、めぼしいお宝はあらかたとられちゃってるから、どんどん奥に行くんだけど、やっぱり魔物や怪物が多くなって……冒険者の成れの果ても、何十……いや、何百と転がってる」


 「でも、フローゼと一緒に行った勇者連中は、きみも含めて石板を見つけて無事に地下から戻ってきたというわけだね」


 「今にして思えば、最初からその石板目当てだったのかも。他にも宝物はありそうだったけど、石板を見つけたらすぐに撤退したし」


 「そうかもね。そして、その後に王国で遺跡を封印した」

 「そうね」

 「ついたぞお!」


 フローゼとオネランノタルが走りながら(オネランノタルは低空飛翔だが)云っている間に、3人は神殿をぐるりと囲う、のっぺり・・・・とした灰白色の高い塀に到達した。


 「どう見ても、石じゃないねえ」

 オネランノタルが塀を触りながらそう云い、珍しそうに見上げた。

 「何でできてるんだい?」

 「さあ」

 云われたフローゼも、コンクリートを知らない。


 「漆喰? ……にしては、異様に硬そうだけど」

 質感の違いに気づき、フローゼが眉をひそめた。

 「漆喰なら、私も知ってる。でもこれは、漆喰じゃあなさそうだね!」

 「うん。すごい不思議な材質」

 フローゼがピオラを見やったが、

 「あたしもわかんねえ」

 ピオラも、不思議そうにしながら、ピョンピョンと飛んで塀の向こうを確認した。

 「この塀と同じようなかんじのやつで、小山がいっぱいあるなあ」

 「どういうこと?」

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