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第12章「げんそう」 3-3 ホーランコル吶喊

 率いるのは、シャスターク騎士団長のドゥメートルだ。52歳になる大ベテランで、年齢的には引退間際であったが、若いころは冒険者として腕試しをしていた経験もある。軍を率いての実戦は初めてだったが、他国の内戦に参加したこともある。少しばかり規模は大きいが、こんな街中での賊退治など、


 「いくさにすらならんわ」

 と、思っていたし、通常ならその通りだった。


 「傭兵連中だけ気をつけろ、油断はするな! 無頼兵どもは降伏も許すな! どうせ死罪だ、てっとり早く殺せ!」


 そう厳命していたし、騎士や兵もその通りにしていた。

 「展開、完了しま……」


 副団長がそう報告しかけた時、ホテルの正面玄関から扉をぶち破って魔法の矢マジック・ミサイルが10本も騎士たちを襲った。


 騎士団付属魔術師隊(13名)が幾重にも防御魔法を展開しており、ほぼ防いだが、中にはやけに強力な矢があり、バリアを突き破って馬上の騎士を1人、討ち倒した。


 他の騎士たちが馬から落ちて転げる仲間に驚いているや、

 「うおおおおお!!」

 雄叫びと共に、ホテルから傭兵戦士団が飛び出てきた。

 その中に、ホーランコルもいる。


 キレットとネルベェーンは、ホテルの2階の木窓から適当に魔法援護しつつ状況を観ていた。


 傭兵隊長ウィーガーの狙いは、騎士団長だ。多勢に無勢であるが、相手はホテルの周囲に展開し、逆に手薄なのである。町中の狭い路地で騎兵が素早く移動するのは困難だし、大将首を初手で落とせば、勝機もあるというものだった。


 「まさか……!!」


 一直線に向かってくる傭兵たちを見やり、大胆な攻めにドゥメートルも驚くと同時に思わず笑みを浮かべた。


 「こうでなくては面白くない! 迎え討て!!」


 とはいえ、いつもムーサルクが人を集めて演説していたホテル前の広場も、それほど大きくはない。人が30~40人も集まればギュウギュウになる程度であり、とても騎兵が縦横無尽に駆けて敵を駆逐するようなものではない。


 そこを、ウィーガーが突いた。


 6人をムーサルクの護衛に残し、30人の傭兵軍団が一直線にドゥメートルに向かった。50の騎士団のうち、裏手に15、横手に10ずつ出して、正面には15騎しかいない。2,000の兵士は通りや狭い路地に展開してホテルを含めた区画全体を包囲しており、広場にいる騎士団長直掩の兵は30人ほどだ。熟練の戦士団である傭兵部隊にとって、やってやれない状況ではなかった。


 「団長、御下がりを!」


 市街戦闘用の薄手の板金補強鞣し革鎧に短めの手槍装備の騎士が、素早く馬を前に出した。その数、5騎。


 先制でまたもその騎士たちめがけて魔法の矢マジック・ミサイルが飛び、逆にホテルに向かって騎士団直属魔術師部隊から火球ファイア・ボールが飛んだ。


 互いに防護魔術がそれらを防いで大音響を伴って爆発が起きた時に、騎士団と戦士団が衝突した。


 これも、互いに防護魔術が互いの攻撃を初手で防ぎ、軋んだ音が交錯して、衝撃に押される。


 ウィーガーを含めて戦士団の先鋒が崩れたが、騎士達も馬がよろめいてバラけた。


 その騎馬の隙間を縫って、戦士団が後ろから第2派の攻撃を繰り出した。

 「やるな!」

 ドゥメートルも意気昂揚し、馬を前に出す。


 対物理防護魔法は、よほどの高レベル魔術師がよほど重複して施さない限り、通常は1回の魔法で1回の攻撃を防ぐ。つまり、敵の直撃を防ぐのは、1回だけということになる。


 従って、騎士団長に多重防護が施されていると仮定して、1騎に対し5人で取り囲んで攻撃を繰り出せば、まず魔法を突き破ってダメージを与えられると思われた。また、それが対騎兵戦の定法セオリーだ。


 「オレが初手を出す!!」

 ホーランコルが叫び、真っ先に騎士団長に迫った。

 あわてて他の騎士も馬を並べ、前に出たが、ホーランコルのほうが速い。

 「舐めるなよ!!」


 ドゥメートルが、ホーランコルめがけて馬の前蹴りを出しつつ、剣の間合いの外から槍を突きつけた。


 ホーランコルはキレットとネルベェーンに全幅の信頼を置いていたので、狂兵バーサーカーめいて無防備に突っこんだ。


 そして分厚い蹄鉄のついた馬の蹴りをまともにくらい、脳天を割られてもおかしくなかったが、強力な魔法がそれを防いだ。まるで巨大な亀の甲羅でも蹴ったような衝撃に馬がひるんでよろめいたが、さすがに騎士団長、そのまま手槍の第2撃をホーランコルに放つ。


 それすら魔法が防いで、穂先が流れた。

 「なんと……!」

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