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第2章「はきだめ」 5-5 闇の中の銀灰色の眼

 (確かに……強力あるいは多量のシンバルベリルが秘匿貯蔵されていた場合、安易な攻撃的接触での影響は甚大……三人・・を防御しきれるか不確定……)


 その様子を、柄にもなくドキドキしながらシュベールが見つめていたが、ストラがふい、とシュベールをその鋼色の眼で見つめ、


 「手動により、レンガ及び土砂を除去したいと思いますが、どう思いますか」


 「え?」

 「手動で穴を掘ろうかと思います。どうでしょうか」

 「え、手で……?」


 穴を手で掘るのは当たり前だろう・・・・・・とシュベールは思ったが、

 「ストラさんが、一人で掘るんですか?」

 「ええ」


 「えー……と、すみません、詳しくないのですが……そういう魔法でもあるんですか?」


 「魔法……みたいなものかもしれません」


 「はあ……しかし、何にせよ、いまは手を出さないでほしい。なぜかと云いますと、連中、どうにかして出入りしているようなんです。この中にね!」


 シュベールが、真っ暗な壁を左手で叩いた。

 「ですから、その方法を調べたいんです。その協力をしてほしい」

 「いいでしょう」

 「有難い!」

 シュベールの安堵の声が、通路に響いた。

 「で、具体にどうすれば?」


 「まずは、組織のトップに近づいてもらいます。そして、この謎の空間のことを聞き出せるまでの地位になっていただくのが賢明かと。ストラさんなら、案外短時間で可能かもしれません」


 さすが、潜入工作員らしい堅実さだ、とストラは思った。

 (特定組織上層部の脳内を直接探査したほうが早い……)

 ストラなりのやり方はある、と判断した。

 「わかりました。連絡方法は?」


 「こっちから、アンタの手下の誰かにつなげるよ。フューヴァは連中に顔が割れている。あのエルフも目立つ。あの、大酒のみの姉ちゃんがいいかな。で、なくば……直接、あんたのアパートにオレが行くさ」


 「了解」

 云って、ストラが闇に消えた。

 ふう、と息をつき、とりあえず戻ろうとしたその時。

 「なんだい? ストラさ……」


 また闇の中に気配だけ感じ、当然ストラだと思って振り返ったシュベール、異様な殺気に身がすくみ、本能的に下がって、ランタンと、なんと予備の油瓶を投げつけた。


 何者かが咄嗟に油瓶を叩きつけ、瓶が割れ闇に炎が上がって、ストラより細身で背の高い姿が浮かび上がる。


 もう、シュベールは脱兎のごとく走り去っていた。


 炎を消し、こちらは本物の・・・姿隠しの魔法を解いて闇中に銀灰色の眼だけを光らせたのは、ストラとはまた違う意味で無表情を極めた風体のエルフだった。


 「シュベール子爵……勘のよいやつ……!」


 山岳地方のゲーデルエルフ語でつぶやいたが、男とも女ともつかぬ、谷あいを吹き抜ける寒風のように冷たい声だった。


 エルフはシュベールの後を追おうとしたが、すぐに止め、ストラと同じく再び闇に消えた。



 6

 

 「えーと、次の試合は、総合一位のトルネーグスというやつです」

 「二回目なのに、いきなり一位と当たるんでやんすか」

 「何か、魂胆でもあるんだろ?」

 「どんなやつなんで?」


 四人が居間にそろって、三日後に迫った試合の話をしている。もっとも、常時、話しているのはプランタンタンとフューヴァのみだが。


 「どんな奴って云われると、半分が獣というか、人間と獣が合わさったようなやつというか……バケモノだよ」


 「なんで、バケモノが試合に出られるんで?」

 「何でもアリだから?」

 「とんでもねえでやんす」


 要するに、人間じゃよっぽど・・・・の勇者英傑じゃないと勝てないようなヤツを最初から一位に据え、うまく演出して興行し、客どものなけなしの種銭を無尽蔵に巻き上げているのだ。


 「だけどさ、そんなバケモノを倒すようなすげえ英雄がたとえ本当にいたとして、こんな大昔の剣闘奴隷みたいなことはしねえよなあ」


 「だからって、同じようなバケモノを連れてこれるやつあ、そうそういねえという寸法で」


 「ストラさん以外はな!!」

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