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第12章「げんそう」 1-3 ある村の喧騒

 その集落の中を歩いていると、やはり南部人の様相が珍しいのか、たまに通りすがる人々が驚きの眼で3人を見やった。


 が、ホーランコルの物腰や分厚い冬期用防寒マントの下の腰の剣、またはキレットとネルベェーンの同じく防寒マントの下から覗く魔術師ローブや杖を確認し、


 (ぼ、冒険者か……?)

 (ガントックからきたのか?)

 という程度で、見逃された。


 集落を過ぎ、2時間も歩くと、まともな村が現れた。既に周囲は暗くなりかけていたが、村の広場に人だかりができており、


 「な、なんでしょう……」

 「さあ」

 3人も訝しがる。

 とにかく、久しぶりに宿を取りたかったのだが、

 「あの……すみません、この村に、宿屋は……」


 と、ホーランコルが村人に尋ねても、興奮した村人がなにやらひどく訛ったチィコーザ語……いや、それはもはやこの地方の独自語でまくしたて、何が何だか分からなかった。


 とはいえ、よくよく耳を傾けていると、なんとなく云っていることが分かってきたし、村人達の様子もわかってきた。


 どうも、二派に別れて云い争っているようだ。

 しかも、

 「本物だ!」

 「偽物に決まってる!」

 「いいや、今度こそは本物だって!」

 などと、「本物」「偽物」という単語が飛び交っているのも判明した。

 「何の話でしょう?」

 ホーランコルが、首をかしげながら人の輪より出て、キレットに尋ねたが、

 「さっぱり分かりません」

 当たり前だが。キレットもそう答える他はない。


 「面倒に巻きこまれても困ります。残念ですが、この村は素通りしましょう」

 などと、ホーランコルが云った矢先であった。

 「おい、あんたたち、もしかして旅の冒険者か!?」

 そう、3人に話しかける者がいた。


 薄暗くて良く見えなかったが、初老の男性だった。見た感じ身なりが良く、取り巻きか護衛のようなのを3人も連れていたので、村の有力者か。


 「え、ええまあ」

 ホーランコルが答え、男性はキレットとネルベェーンを見やりながら、

 「いつ、村に入った?」

 「いまさっきですよ」

 「ガントックから、森を抜けてきたのか?」

 「そうですが」

 「……そっちの2人は、もしかして帝都の南部人か?」

 「そうですよ、よく御存じで」

 「魔術師か?」

 「そうです」

 「あんたは、剣士だな?」

 「観ての通りです」


 すぐ近くてガヤガヤ云い合っているので聞き取りづらかったが、ホーランコルがなんとか会話を続ける。


 「こんな時刻だ、村で休もうと思ったのか?」

 「そうですが、いけませんか? それより、なんの騒ぎです?」

 「ううん……それなんだが……ちょっと、宿屋に来てくれないか」

 「はあ?」

 「もしかしたら、いい仕事になるかもしれんよ、あんたら」

 「はあ……」


 3人が顔を見合わせ、宿屋に来いというのに断る理由もなく、そのまま男性に着いて宿に向かった。


 宿屋にも人がいて、狭いロビーに溢れかえっていた。まるで、村の男たちが全員外に出ているようだ。


 「じっさい、ほとんど出ている」

 「何のためにですか?」

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