第11章「ふゆのたび」 4-2 等しいほどに無力
「こんな御宝様も残ってねえようなトコロにいたって、なんにも楽しくねえでやんす」
いきなりプランタンタンがそう云い、ペッテルが顔を向ける。
「そら、お前だけだろ」
フューヴァに突っこまれ、
「フューヴァさん、少し、この御屋敷を探検いたしやしょう。何か、コットーヒンでも残っているかも……ゲェヒッシッシッシッシッシッシッシシ……」
「おまえなあ」
肩を揺らして笑うプランタンタンに呆れつつ、フューヴァ、
「ルーテルさん、ちょっと探検してくるわ。泊まらねえで都に帰るんなら、カラスかなんかで連絡してくれよな」
「気をつけてよ」
「おう」
部屋を出ようとした2人に、ペートリューがいそいそと着いて行った。
「わたしも行きますう~~」
ヴィンテージワインでも残っていないかという魂胆なのは、見え見えであった。
「待って、私も行くよ!」
なんと、それにオネランノタルもくっついた。
「なんでえ、珍しいな」
「いいじゃないかよ~」
ペッテルについて色々と調べたいことはあるが、ペッテル自身には、「つまらないやつ」ということで、興味が無くなったのだった。
「……」
ペッテルが、不思議そうにそんな4人を見送った。
「魔族と人間やエルフが仲良くしていることが、信じられないか?」
ペッテルがハッとしてルートヴァンを見やり、
「……はい」
「それこそが、異次元魔王様の御力よ。聖下の偉大過ぎる御力の御前では、魔族も人間もエルフも、等しいほどに無力なのだ」
「無力……」
ペッテルが、ピオラの隣で謎の踊りから謎の動き(ラジオ体操である)に変わっているストラへ顔を向ける。
「あれは、何をなさっておられるのですか?」
「え? いや……さあ」
半笑いで眼をそらし、肩をすくめるルートヴァンに、
「プッ」
凶悪な様相のまま、ペッテルがふき出して、クスクスと笑い出した。
「不思議な御方……あの御方と出会って、救われた方が、たくさんおられるのでしょうね」
「滅んだものも、数多いる。既に、何十万……いや、百万以上の人々が、芥のごとく死んでいる。心底恐ろしくも……御優しい御方よ」
「世界を救う旅……と、おっしゃいましたか?」
「いかにも」
「タケマ=ミヅカ様という御方に、聴いたことがございます」
「ほう」
タケマ=ミヅカがペッテルと既知だったとは全く聴いていなかったルートヴァン、
(どこまで人が悪いのか……あの御方は……!)
と、内心で憤慨しつつ、
「タケマ=ミヅカ様は、僕も幼いころよりずっと御世話になっている」
「そうでしたか!」
ペッテルが、両手を胸の前で合わせて顔を上げた。
「しかし公女、であれば、話は早いじゃないか」
「はい……ですが、まさか本当に世界中の魔王を次々に倒す方が現れるなど思いもよりませんでしたし……こんな世界は、早く滅べばいいと思っていましたので……」
「なるほど……」
こいつは、仲間にするのは無理そうだな……と、ルートヴァンが思った時、
「殿下、私は、皆様と共に歩いても御役に立てるとは思いません。しかし、ここで世界の情勢を探り、隠れている他の魔王の居場所を探しましょう。心当たりが、あるのです」
「おおっ」
しっかりと顔を上げ、そう云ったペッテルが席を立ったので、ルートヴァンも表情を明るくした。
「情報の伝達は、私やオネランノタル殿と随時に」
「……わかりました」
ルートヴァン、あえてオネランノタルの名を出したが、ペッテルが張りのある声でそう答えたので安堵する。
「皆様がたには、フローゼを随行させましょう」
「修理するので?」




