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第2章「はきだめ」 5-2 この街に長居はしない

 プランタンタンがダイニングから続く空き部屋のドアを開け、


 「フューヴァさんの部屋でやんすが、本当はこっちをペートリューさんの部屋にして、あっちの大きいのをストラさんの部屋にしようと思ってたんでやんすが、ペートリューさんが大きいのを酒樽置場にしちめえやんして、しかもその部屋に酒と一緒に寝てるありさまで……ちょいとせめえでやんすが、こっちをフューヴァさんの部屋にしておくんなせえ」


 「今までいたとこに比べりゃあ、むしろ広いくらいだぜ。でも……ストラさんは?」

 プランタンタンが肩をすくめ、


 「それが、旦那は窓が一番大きいところがいいそうで……屋根裏の、あっしの隣でやんす」


 「屋根裏? 窓?」


 フューヴァは意味が分からず、驚いたが、ストラのことだから特に意味も無いのだろうと思い、納得した。もちろん、ストラはエネルギー補充やその他の独自探索のために、夜な夜な窓から抜け出すのに都合がよいからである。


 「で、そのストラさんとペートリューは?」


 「ペートリューさんは寝てやす。ストラさんは……部屋にいやす。いや、いるはず・・・・でやんす」


 「次の試合の話があるんだけどな」

 「え、もうでやんすか?」

 意外そうに、プランタンタンが目を丸くした。まだ数日しか経っていない。


 「驚異の新人だからね……! ストラさん、たった一回の試合で、いきなり総合四位になったんだ。なか二週で、月末だ」


 「へええ……」


 「で、どうせ組織の勧誘が集まってたから、ついでに云ってやったんだ。一番、値段の高いところに所属してやるってね。そうしたらりみたいになってさ、早々にレーハーは脱落した。ま、あそこは売春ウリ麻薬ヤクが本流で、賭け試合にそこまで入れこまないしな」


 「はあ」


 「カネの量だったら、裏金融を牛耳ってるギーランデルなんだけど、フィッシャルデアにもメンツがある。吊り上がって、すごい額になってさ……」


 「いくらで、どっちになったんで?」


 「ギーランデルが、一試合ごとに試合料8,000トンプ、勝つごとに4,000だ。フィッシャルデアが、試合料10,000だけど、勝つごとに2,000」


 「……おんなじでやんす」

 「だから、さ……示し合わせてやがるんだよ、アイツラ」

 「なんでえ……」

 興醒めし、プランタンタンがテーブルにつく。

 「飯でも食いやせんか、フューヴァさん」


 テーブルの上には、午前中に買い置いた新鮮な白パンと、ゴーラン(イノシシに似た野ブタに近い生き物である)肉と根菜の煮物があった。


 「この肉は、うめえでやんす」

 「エルフが、ゴーランなんて食うのかい?」

 「初めて食いやあした」

 「じゃあ、遠慮なくいただくかな」


 フューヴァも席につき、手を伸ばす。薄めたワインを飲み、しばし他愛も無いことを話しながら食事をし、やがて今後を話しあった。


 結論は、

 「この街に長居はしない」

 ということだった。


 「ストラの旦那に勝てるヤツあ、おそらく現れねえでやんす。組織のてまえ、いつまでも自由出場ってわけにもいかねえだろうし、かといって所属したら飼い殺し。カネはそれなり・・・・に儲け続けられるでやんしょうが、当たりも外れもねえ額で終わりやしょう」


 「いったい、いくら稼ぐつもりなんだよ」

 フューヴァが、そう云って笑った。

 「……自分にも、分からねえでやんす」

 プランタンタンが、ちょっと笑って遠くを見た。


 (グラルンシャーンのクソジジイの牧場を、買収できるか……対抗できる牧場を開業できる額だなんて……)


 「じゃあ、総合一位になって、二、三回防衛したら、電撃引退してどこか行こうぜ」


 フューヴァの声で我に返って、プランタンタン、

 「どこに行きやあすか? もっと、バカみてえに儲けられるところは?」

 フューヴァが笑う。

 「バカみたいかどうかは分からないけど、スラブライエンはどうだい?」

 「どこでやんすか」


 「西にずっと行った……マンシューアルとの国境地帯の主要都市だ。キナ臭いぜ。しょっちゅうガチャガチャやってる」


 「ガチャガチャ」

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