表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
615/1279

第11章「ふゆのたび」 2-11 まともなの

 しかし、それは云い換えれば「常識」というやつだ。

 なかなか、いったん身についた常識を捨て去るのは容易ではない。

 最初から「常識が無い」のなら、どれほど気が楽か。

 「はーあ、あ……」


 自分は、本当にこのメンバーの中に入っていて良いのだろうか……。フューヴァの脳裏に、時々、そういう想いが強く沸き上がる。いくら、ストラが自分を必要と感じている(らしい)としても……。


 (ま、いいさ……棄てられたら、そこまでだ。ストラさんは、アタシなんかがどうこうしなくたって、この世界で神になるぜ……間違いねえ。見届けることができたら、それで本望じゃねえか。御家の再興なんか、そのついで・・・だぜ……!)


 そこまでの覚悟や自己認識を備えているだけで、やはりフューヴァはこの中ではある意味「別格」なのだが……。


 「……?」


 一同のうち、その存在を認識して「おかしいな」と思ったのは、ルートヴァン、オネランノタル、そしてピオラだった。ストラが完調状態なら、広域三次元探査に「妙なもの」がひっかかったことを不審がるのだろうが、残念ながらいま広域三次元探査はプログラム圧縮修正中で、常時機能していない。


 「なんだ? あんなやつ、いつ現れやがった?」


 フューヴァの言葉に、初めてプランタンタンとペートリューも、その真っ赤な出で立ちの女戦士を認識した。


 「さあでやんす」

 「あんな派手なの、遠くからでも分かりそうなのに、よ」

 見晴らしの良い田園地帯に、フッと出現したかのようだった。


 かと云って、転送魔法は御法度。いや、そもそも魔力が動いていない。

 「ストラさんに、雰囲気が似てる……」

 ペートリューが、据わった眼でフローゼを見つめ、じっとりとささやいた。 


 「大公……」

 オネランノタルが、 2人にしか聴こえない魔力通話で小さくつぶやく。

 「やっと、まともなの・・・・・が出てきましたな」


 「うん……だけど、なんか……なんかおかしいよ、あいつ」

 「……と、申しますと?」

 「作り物・・・みたいだ」


 「ふうん……?」

 「ストラ氏に、似ているよ」

 オネランノタルは、ペートリューと同じ感想を述べた。

 「どれ……」


 ルートヴァンがチラッとストラを見やったが、ストラはまったく違う方向を半眼で見つめて、腕を組んで立っているだけだった。


 そのストラを、フローゼが遠くより見つめた。

 (あの方向・・……? あいつ……まさか・・・……?)

 フローゼが、ストラを鋭い視線で見すえる。

 そのフローゼの視線に、ルートヴァンが気づいた。


 (なんだかよく分からんが……聖下の行動の意味に気づいている様子……フフ、ますます、その実力が楽しみな……)


 そう思いつつ、ルートヴァンが前に出る。

 「大公!」

 「次は僕の番ですよ……」

 「いいやあ、あたしだあ」


 ピオラが、真っ黒い魔力のローブをマントのように前開きで脱ぎ捨て、背中の多刃戦斧を右手に持ち直して、鋭い視線でフローゼを睨みつけながら大股で歩いた。


 「ピオラ、どうした?」

 ルートヴァンがそう訪ねると、


 「あのヤロウ、大明神サマを睨みつけやがって……!! 生意気なやつだあ! 大明神サマの露払いは、あたしときまってるう!!」


 そこで、初めてフローゼがピオラに視線を移した。

 そして、小鼻で笑った。

 ピオラの眼が、一気に赤くなった。


 「うるぉおおぐああああああーーーーーッッ!!!!」

 全身の筋肉が膨れ上がり、重戦闘モードでフローゼに突進する。

 「おい、迂闊に……」

 と、ルートヴァンが云った瞬間であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ