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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-6-11 バラバラに遁走

 本当に偶然なのだが……王都上空に岩石と鉄の混じった、直系20メートルほどの巨大隕石が落ちてきた。


 それが大気圏内降下の際に圧縮された大気に砕けて、バラバラになり、彗星のように光り輝いたのだ。


 砕けた岩石の破片が王都上空で爆発し、大音響と共に、四方八方に散って行く。


 だが、まっすぐ王都に落ちてくる破片もあった。

 1メートルほどの鉄の塊が灼熱に光り、音速でつっこんでくる。

 このまま王都に落ちようと、ストラにはなんの影響もない。

 しかし、


 「……ルーテルさん、オネランノタルさん、脱出は済みましたか!? 直撃コースです!」


 空間通信に、答えは無かった。


 なんらかの障害、もしくは妨害により通信が届いていないのか? あるいは、答える余裕もないほどの状況におかれているのか?


 (脱出が確定しない以上、王都に落とすわけには……!!)


 ストラが余剰エネルギー回収フィールド展開をいったん中止し、すさまじい速度で落ちてくる真っ赤で巨大な鉄塊に向き直った。


 戦闘バトルモードならば、重戦闘プログラムと余剰エネルギー回収フィールド制御を同時に行えるが、準戦闘セミ・バトルモードでは禁則が組まれており、無理なのだ。


 次の瞬間、ストラが戦艦の主砲クラスの重プラズマ砲を両腕から発射するのと、

 (…………!!!?!!????)


 何が何だか分からないが、千載一遇のチャンスとばかり、15体のリノ=メリカ=ジントが死んだキヤ=フィンシ=ロを捨てて、15体バラバラに・・・・・遁走した・・・・のは、ほぼ同時だった。


 王都の真上で大爆発が起き、衝撃波と焼けた無数の破片が王都を襲った。少なからず建物や通りをひしめく人間が圧し潰され、雨のように降り注ぐ真っ赤な鉄片に貫かれた。あちこちで火の手が上がり、轟然と燃え広がった。


 リノ=メリカ=ジントが、その王都に落ちてゆく。


 いくら深紅のシンバルベリルを多数有しているとはいえ、潜在魔力の高い人間の子供に寄生しないとその強大な魔力を使えないというのだから、この状態ではルートヴァンにすら踏み潰されるだろう。


 逆に、その身の小ささを利用し、隠れることができる。魔力も使えないのだから、魔力の痕跡を追うのも難しい。


 15体のうち、何体かはその背中に昆虫のような羽が生えて、風に乗って飛翔した。羽の出ない個体は、そのまま闇に落ちた。


 ストラが超高速行動ハイ・マニューバに移行し、光り輝く光子剣アンセルムを振りかざしてリノ=メリカ=ジントを追った。


 既に、15体を三次元探査で捕らえている。

 ……つもりだったが、11体しかいない。

 (どういうこと……!? 空間が歪んで……!?)


 隕石降下や衝突の影響か、リノ=メリカ=ジントの超広域魔力使用の影響か、その他の未知の現象か。広範囲の空間振動により、何体かのリノ=メリカ=ジントを追跡できない。


 (ルーテルさんと通信できないのも、この影響の可能性が94%)

 とはいえ、いま、探索不能な4体を探している暇はない。

 光子剣アンセルムの残像が光の線となり、夜空に残った。


 落下中の4体のリノ=メリカ=ジントが、真っ二つ……いや、ジグザグ斬り細切れに寸断されて、瞬時にプラズマ弾をくらって夜空に散った。


 ほぼ同時に、真っ赤なシンバルベリルから膨大なエネルギーを回収フィールド及び次元転換法で吸収するのを忘れない。


 さらに地表めがけて飛び、もう2体に追いつくと、連続回転斬りでバラバラの輪切りにして、同様にシンバルベリルからエネルギーを頂く。


 この、魔王の持つ強力なシンバルベリルからエネルギー回収を行うことが、ストラがこの世界で魔王を退治する主目的である。


 エネルギー総量を回復させ、どうするのか?

 元の世界に、どうやったら戻れるのか?


 まったく分からなかったが、とにかくエネルギー回復が最優先プログラムだったので、それに従って行動している。


 今回、15個もの赤色シンバルベリルのエネルギーを吸収できたならば、かなりの回復量になると思われた。


 (残り9体……把握できているのは、地面に到達した5体)

 行方不明の4体は、羽が生えた個体で、風に乗って何処ともなく散っていた。

 王都に落ちた5体は、それぞれ別個にストラから逃げた。

 が、1体は猛然と燃え盛る家の中に落ちてしまい、


 「グゥアアアア!! アッ、ああっ、あああああ! アッアアア!! アッグ、クッッソおおおお! こんな……こんなああああ! まッ、魔力さえ……魔力さえ使えたならばああああ、こんなていどのおおおお……!!」

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