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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-6-8 流星

 「そ、そんなこと云ったってフューヴァさん、石の雨がすげえでやんすよ! それに、いつもだと、そろそろストラの旦那と魔王の戦いがおっ始まるころあい・・・・でやんす!」


 「た、確かにな……」

 そこでフューヴァ、ペートリューがいないことに気づく。

 「おい、ペートリューのヤツはどこ云った!?」


 「知らねえでやんす! どうせペートリューさんのことだから、1人で酒もって逃げたんじゃあありやあせんか?」


 「それもそうだな」

 あっさりとそう云い、フューヴァ、

 「アタシらも逃げるぞ、こっちだ! 表通りは駄目だぜ!」

 「合点の承知の助でやんす!」


 ルートヴァンと王都に潜伏していた短い期間で、フューヴァはできる限り裏通りや下町を探索し、道を頭に叩きこんでいた。今はもう消滅した、フランベルツの歓楽街ギュムンデで生きるためには、どんな逃げ道があるのかを把握するのは必須のスキルであり、どこへ行ってもその癖や習慣が抜けないでいたのだが、こういう時に役に立つ。


 その、ペートリューであるが……。


 いまの路地の近くの、家人が逃げだしてもぬけの殻となった小さな家に入りこみ、大きな酒甕に頭を突っこんでガブ呑みしていた。


 大音響で家の屋根を岩石が貫いて落ちてきても、平然としている。(というか、気づいていない)


 王都上空では、さらに隕石が集中を始めていた。より大型の隕石がより正確に、より短い間隔で飛来し、衝突した。


 ルートヴァンとオネランノタルが防護壁を厚くして直撃を防ぎつつ、

 「大公、は、早くストラ氏に連絡してよ!」

 「分かってる! ……聖下、聴こえますか、聖下!!」

 だが、ストラから返事はない。

 (……どうしたというのか……!? 時間がないはずなのに……!?)


 ルートヴァンがまた冷や汗をかいたその時、王都の遥か上から、ひときわ明るく輝く流星が一直線に落ちてきた。


 「……!」

 「なんだ」

 「なんだ!?」

 「なんだなんだあ!?」

 「どこの星だ!?」

 「我らの落とす星ではないぞ!?」

 「何の光だ!?」


 リノ=メリカ=ジントが、一斉かつ口々にそう喚きたてた。

 「よもや……!」

 それは、最大出力の光子剣アンセルムの放つ光だった。

 ストラである。


 「来おったな、イイイイジゲン魔王おぅおぉおおお!!」

 「あの、光る剣か!」

 「なんでも切りおるぞ!」

 「気をつけよ!」

 「来るなら、来いいいィイイイ!!!!」


 同時に、ストラもルートヴァンとオネランノタルに空間通信。

 「2人とも、脱出を!!」

 「よしきた、逃げるよ、大公!」


 云うが、オネランノタルはもう地表に向かっている。

 「聖下、お任せ致します、御武運を!!」

 ルートヴァンも、プランタンタン達を迎えに降りた。


 「大公、私はピオラを連れて脱出するよ! 君は、プランタンタンらを!」

 「分かってる!」


 オネランノタルは人ごみの隅に佇んで空を見上げ、時折衝突コースの隕石を叩き落しているピオラとすぐさま合流し、そのまま転送して王都を脱出したが、ルートヴァンはプランタンタン達と別れた路地に降りても誰もいなかったので焦った。


 「お、おい、フューヴァ! どこ行った!?」 

 一瞬、路地を間違ったかもと思い、またドッと汗をかいた。

 「あれええ~~、ルーテルさんじゃないですかああ~~~~」


 振り返ると、空き家でしこたま・・・・酒をかっ食らったペートリューが、フラフラしながら出てきていた。


 「ペッ、ペーちゃん! 2人は!?」

 「なんかああーー~~、さっき、あっちのほうに……」

 「なんなんだよ、もう!!」

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