第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-6-7 王宮崩壊
「貴様らをぶち殺すなど、造作もないことなのだぞ!!」
「そうだそうだ!」
「ふざけるなよ、こんなところまで土足で……!」
「頭が高いのだ!!」
「そんなことはいい!」
「そうだ、いいから、いまは見逃せ、この結界を解け!」
「オネランノタル、聴いているのか!」
「おい!」
「オネラ……」
「うるっさいよ、グチャグチャと」
オネランノタルが細い顎を上げ、四ツ目でキヤ=フィンシ=ロ……いや、リノ=メリカ=ジントを見下ろした。
「なぁんだとお……!!」
それぞれ眼が無いか、あっても複眼や単眼のリノ=メリカ=ジントだったが、その眼が吊り上がったように見えた。人のような小さな口で、歯ぎしりをしている。
「逃げるってことはさあ、ストラ氏が恐いんでしょ? こんなにたくさん星を落としても、勝てそうにないからさ」
「なッ……!」
「だっ……だだっだ!」
「黙れ!!」
「黙れ黙れ!!」
「だまれぇえ!!」
「黙らんか!」
「口のききかたに気をつけろよ!!」
「無駄な戦いをしないだけだ!」
「我らは、平和を愛するのだ!!」
「平和主義者なのだ!!!!」
「侵略者の手先が!」
「貴様を精神支配し、結界を解かせてやるぞ!」
「そうしたければそうすればいいだろ、ね、大公ー~」
オネランノタルが、ルートヴァンを振り返った。四つの眼のうち、一つの眉を上げ、また異なる眼でルートヴァンの懐をさし示し、何かを目配せする。
「……」
もう、ルートヴァンが懐からストラの羽飾りを取りだしていた。
「やっちゃえよ、大公ー!」
ルートヴァンが、分離されたテトラパウケナティス構造体に溜めこまれたストラのエネルギーを解放。数万の軍勢を一撃で焼き殺した凄まじいエネルギー照射が、一撃で王宮を粉々に吹き飛ばし、破壊した。
ルートヴァンとオネランノタルが、それぞれ魔法防護、魔力防護で爆発を防ぎ、爆炎の中を飛翔魔術で空中に舞った。
同じく、意識を失っているキヤ=フィンシ=ロごと、リノ=メリカ=ジントも同様に黒煙と炎の中を魔力防護壁ごと宙に浮かんだ。
「こおおおおのおおおおおクウウウウソオオオオオオオおおおおがああああああああああああああああああああああああギィイイイいいいいいいいいいーーーーーッッッッ!!!!!!!!」
15匹すべてがユニゾンで大合唱し、極小シンバルベリルが真っ赤に光った。
とたん、大口径チェーンガンめいて、ルートヴァンとオネランノタルに、連続して正確に隕石が衝突し始めた。その勢いは、数秒に1発というほどだった。
たちまち何重もの防護壁が半分以上も突き破られ、さらに飛翔魔法で浮かんでいるので、空中を押しこまれる。
ルートヴァン、オネランノタル共、防護壁を次々に内側から補充し、さらに隕石を回避した。素早く動けば、遥か天空から落ちてくる弾丸は咄嗟の軌道修正が難しく、かなり避けることができた。
その分、まっすぐ王都に落ちるのだが……。
人の拳や頭大の岩石や鉄が真っ赤に焼け、音速に近い速度で突き刺さるのだから、石造りやレンガ作り、木造、果ては毛長牛のフンを乾かして土と混ぜた建築資材による建物の屋根や壁、レンガ塀など簡単に突き破り、爆発して人や物を吹き飛ばした挙句、どんどん火災が発生した。
ただでさえこの騒動で夜中に通りを右往左往して逃げまどっている人々も、隕石の直撃を食らって五体バラバラに宙に舞った。
「逃げるでやんす!」
街中の路地裏に隠れていたプランタンタンが、防護魔術のバリアごと通りに出た。
が、人々の波に押し返され、路地に転がりこんだ。
「何やってんだよ、おまえ!」




