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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-6-4 5分

 成層圏で、ストラはほぼ上空全天に攻撃して、15分の間にどれだけ隕石を防げるかに挑戦していたが、


 (無駄。とても稼働時間内に防ぎきれる規模じゃない……!)

 30秒と経たずに不可能と判断。隕石群の直接迎撃を中止した。


 かといって、空間転移法で次元の向こうに降りそそぐ隕石を転移させるのも同じことだ。15分後にはできなくなる。


 (敵魔王への直接攻撃に作戦変更)


 だが、王都へ力技の大規模広範囲疑似核熱攻撃を行い、万が一逃げられたら探索に手間と時間がかかる。ピンポイントかつ確実、短時間で倒さなくてはならない。


 ストラ、自身へ直撃するパターンの隕石のみを迎撃するか回避し、空間通信。

 「ルーテルさん、オネランノタルさん、聴こえますか、ストラです」

 「……ッ、ハ、ハハァッ、聴こえます、聖下!」

 「私も聴こえるよ!」


 「作戦を変更し、敵魔王を直接攻撃しますが、私の稼働時間を鑑み、ダラダラと戦闘行為を行っている時間はありません。一撃必殺です。敵魔王の位置を、5分以内で特定してください。王都にいると推測されますが、空間転移法等で逃がさないでください」


 「かしこまりました、聖下!!」

 「ご、5フン!? 大公、5フンってどれくらいだ!?」

 「今すぐ・・・ってことだ!!」


 天変地異に騒然とする王都内に潜伏したはよいが、隕石が的確に自分たちの上に落ちてくるのを確信していたルートヴァン、


 「魔王め、何らかの法で僕たちを把握し、隕石を故意にぶつけに来ているな!」

 と考えていたところに、ストラからの空間通信が来た。


 「いまから、オネランノタルと合流して魔王を探す! 3人には悪いけど……」

 「ルーテルさんの、この魔法の球を信じるぜ!!」

 フューヴァが真っ先にそう云い、ルートヴァンを安心させた。


 「そうでやんす! どうぞ、ストラの旦那のために御働きくだせえ! 目が覚めたストラの旦那は、そりゃあ超絶無敵なんで!」


 「ち……違いない! ハハハ! じゃ、行ってくるよ!」

 ルートヴァンがそう叫んで、防御魔術の球の中から出ようとしたとき、

 「ルーテルさん……」


 球の底に座りこんで我関せず酒を飲んでいるペートリューが、ボソリとつぶやいた。


 「こいつ、酔っ払い! ルーテルさんの邪魔すんなよ! 黙ってろ!」

 ペートリューが怒鳴ったが、

 「い、いや待って! なんだい、ペーちゃん」


 ペートリューの魔法能力……ではなく、絶対に意識的に活かされない潜在魔力に気づき、買っているルートヴァンがその言葉を待つ。


 「王宮の奥に、天の向こうまで触手を伸ばすような、キモチわるい魔力を感じます。これって、もしかして……」


 それだけで、充分だった。

 「まかせておけ!!」

 もう、ルートヴァンが超高速行動ハイ・マニューバに匹敵する高速行動魔術で飛び出ていた。


 その魔力の動きをつかみ、オネランノタルのほうから魔力通話。

 「大公、王宮かい!?」

 「急いでください! 王宮全体に、転送を封じる結界を!!」

 「まかせておいてよ!」

 ピオラを置き、オネランノタルも王宮めがけて転送する。


 ピオラは、慌てふためいて自分も目に入らず深夜の通りを右往左往するだけの人間たちを見下ろしながら、オネランノタルを見送った。



 王宮には、既にかなり大がかりな対魔法防御の結界が展開していたが、ルートヴァンとオネランノタルの同時対抗魔術に打ち破られ、2人は別の方向からそれぞれ王宮に入った。


 「……って、て、敵襲ゥウウウーーーーーー!!!!」

 「し、侵入者だ!! 討ち払え!!」

 「出会え、出会ええええ!!」


 2人のうち、王宮の壁をぶち破ってオネランノタルが飛びこんだ場所の近くに、ちょうど警備兵や近衛兵、レザル=ドキに代わって新たに近衛将軍となった元副将軍のカラウ=バウが詰めており、たちまち大騒動となった。


 しかし、オネランノタルがその漆黒に融ける魔力のローブを脱いで、部屋を照らすランタン照明の薄明りに魔族の素顔を曝したものだから、


 「…………!!」

 「ッバ、バババ、バケモノだ!」

 「こいつ!! 人間じゃないぞ!!」

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