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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-6-1 星々の血の喜び

 ほぼ同時に、天蓋空中の至るところ……はるか天の遠く上から、雲の下の高さまで、空中のあちこちでバチバチ、バチバチと連続して火花が散るように爆発し始める。


 「うわっ! 燃える星だああ!!」


 ピオラが叫ぶや、雲を割いて大きな火球が一直線に落ちてきて、王都上空で大爆発した。


 とたん、昼間より明るく周囲を照らす閃光と耳をつんざく爆音、大地を揺るがす衝撃波が周囲をなめた。


 ピオラが、耳を抑えて苦悶する。

 「星が、落っこちたのかああ!?」

 「いや、まだだよ。空で砕け散っただけ」


 「ええ!? 聞こえないよお!」

 「そうか……これが……『星々の血の喜び』か……」

 オネランノタルが、柄にもなく戦慄した。



 6


 「警告!! 衛星軌道上に集結していた768,356,548個の隕石群による、大気圏突入開始を確認! 最大は直径60メートル、最小は5センチ以下多数のため計測していません。大多数は大気圏内で燃え尽きると推測されますが、多くて2億以上、少なくとも数千万は地上に到達するものと予想されます。疑似観測衛星群による臨時迎撃プログラム作成の進捗状況は73%、大気圏外での迎撃は一部にとどまります。地上での迎撃を推奨!」


 流れ星が出始めたとたん、いきなりストラがそう云ったので、ルートヴァンやフューヴァが仰天してストラを凝視した。


 「スッ……ストラさん、目が覚めたのかよ!?」


 「いや、違うよフューヴァ、これは一時的だ! 聖下、ルートヴァンに御座ります! 何か御指示があれば……!」


 「ルーテルさん、私の残存エネルギー量及びプログラムの修復状況を鑑み、状況的に、私でもこの攻撃の全てを防ぐのは不可能です。私達への直撃コース及び落下影響範囲内の隕石のみを直接的にしろ、間接的にしろ防ぐしかありません」


 「えっ……」


 「戦闘バトルモード発動……不許可、準戦闘セミ・バトルモード……限定的許可。許可時間は、932秒」


 約15分である。

 15分で何ができるのか。

 ストラが、もう、空へ向かって飛び立っていた。


 「あっ、聖下……!」

 「ルーテルの旦那あ! 見ておくんなせえ!」


 プランタンタンが叫び、指さした先……平原のずっと東の方角に、今さっき王都上空で爆発した物より遥かに大きな火球が夜空を切り裂いて落ちてゆき……地平線の向こうから、すさまじい爆発の閃光が煌々と周囲を照らしつけた。


 続けざま、夜の闇を切り裂いて、天まで高くきのこ雲が盛り上がる。


 ルートヴァンが本能的に防御魔法をかけ、遅れて届いた衝撃波を防いだ。


 そんな巨大な隕石が、目に見えるだけで20ほども、次から次に北の大地のあらゆる方向に落ちていった。


 「こ……こんなこと・・・・・が……!!」

 さしものルートヴァンも、言葉が無かった。


 四方八方の地平線で、大小の差はあろうと、巨大な閃光と爆発、そしてきのこ雲が乱立した。


 「ルーテルさん、突っこんでくるぜ!!」


 フューヴァが叫び、上空を見渡すと、ほぼ直上から真っ逆さまに燃え盛る巨大な塊が、とんでもない速度で追ってきた。


 「こおおの野郎おおおーーーーッ!!!!」


 ドッ、と脂汗を流しつつ、ルートヴァンが防護魔法……いや、自分とフューヴァ達3人を転送させる。


 間一髪、摩擦で大地が融け、溶融した地面が波打って盛り上がり、丘全体が衝撃波と大爆発で吹き飛んで、直径10キロほどのクレーターを造った現場から、一条の光が飛び去った。


 きのこ雲と炎が数キロも吹き上がり、真っ赤に溶けた活火山の火口のようになった丘を見下ろして、浮遊魔術で浮かんだルートヴァンらが空中で息をのむ。


 「……とんでもねえぜ……!!」


 ルートヴァンの展開した球体のバリアの中に浮遊魔術で浮かび、フューヴァが、深紅の光を顔に映して戦慄した。


 まだまだ……いや、さらに数を増して、続々と大小の隕石が落ちてきている。


 「ルーテルさん、こんなの、防ぎようがねえぜ! 防げるのかよ!?」

 「い、いや……」


 ルートヴァンも、何をどうやって防げばよいのか、まったく想像がつかなかった。1つ、2つなら巨大で何重もの強力な防護魔法や、対抗する火球魔術をぶつけるなどが考えられるが、この数では如何ともしがたい。


 「ルーテルの旦那ア!」


 プランタンタンが叫んだそばから、魔術の防護壁に真っ赤に焼けた直径20センチほどの隕鉄が、音速で直撃した。

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