表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
562/1279

第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-5-11 妙なやつら

 「それは、落ちてくる星の大きさによるのではないでしょうか? それこそ、石ころ程度の物が1つ2つ落ちて来るのなら、大したことはないでしょうが……例えばそれが雨あられと降って来れば、街の1つや2つも滅ぶかと。さらに、もっと巨大なものが大量に落ちて来れば……国は、穴だらけになるのでは」


 「まあ、確かに……なるほど。そうか……なるほどね……」

 オネランノタルが細かく頷く。少しずつ、イメージが浮かんできた。


 「しかし、名前に惑わされていないか? ただの例え……何かの異名の可能性は?」


 「もちろん、あります。ですが……」


 ルートヴァンが、チラッとストラを見た。ストラはもう、妙な声は発しておらず、ただ彫像のように軽く両手を掲げて小首をかしげ、半眼で天を睨んでいる。


 「聖下がずっとああやっているのが、とても気になります。聖下は、無意味にあのようなことをする御方ではありません。その星隕ほしおちの魔王の落とさんとしている星の屑……百や千ではありますまい……万……いや、億かも……それを、観測し、把握しているのではないかと」


 「億だってぇ……!?」


 さしものオネランノタルも四ツ目を丸くし、ストラと天空を交互に見やった。


 「……なんとなく、分かってきたよ。だけど、途方もない話だね……そんなもの、私や大公では、どうしようもないんじゃない?」


 「で、しょうね。まさに、人知を超えた攻撃かと」


 「それが本当だとしたら、タダものじゃないな……リノ=メリカ=ジントめ……そんな力を、隠していたとはね……」


 「ですが、聖下はおろか、私ごときに見破られるあたりが、その魔王めの限界かと」


 「フン……それは、自慢かい?」

 オネランノタルがニヤッと笑い、ルートヴァンは無言で笑い返した。

 「分かったよ。よし、じゃ、私は私の仕事をしよう! ピオラ、行こうか!」


 「やっと話が終わったのかあ!?」

 待ちくたびれたとばかりに、ピオラが両腕を振り回す。

 「終わった終わった。さ、行こう行こう」


 「応!」

 「ピオラ、そのうち、無数の流れ星がこの地上まで落ちてくるらしいよ」

 「流れ星があ!? まっさかあ!」


 「ハハハ、それが普通の反応だよね!」

 オネランノタルが右手を振り、ピオラと共に平原まで短距離転送で消えた。

 それを見送り、フューヴァが、


 「しっかし、ストラさんの周りにゃあ、妙なやつらが集まってくるなあ」

 しみじみとつぶやいた。

 「あっしらも含めて、でやんす!」

 「ちげえねえ!」

 プランタンタンとフューヴァが笑う。


 「ルーテルさんよ、ちゃんと使えるのか? あんな、魔族とトロールなんてよ」


 「嫌でも使わないと……スーちゃんの天下は、支えられないさ」

 ルートヴァンが、そう云って苦笑しながら肩をすくめた。


 「さて……と、星が落ちてくる攻撃がいつ始まるのか知らないが……今は聖下を信じて、オネランノタルとピオラが王都の残存軍団を蹴散らすのを、ゆっくりと見物しようじゃないか」


 「見物場所にしちゃあ、ちょっと遠くて寒いけどな」

 「はいはい」


 ルートヴァンが魔術を思考行使し、ストラを含む5人のいる周辺が風よけ(と、ついでに強力な対物理攻撃、対魔術防御結界)に包まれる。


 「さすがルーテルさんだぜ」

 フューヴァが屈託なく笑みを浮かべ、ルートヴァンはその笑みに満足した。



 王都では、王太子……いや、藩王になったばかりのガミン=ドゲルが自ら先頭に立ち、王都の近くの練兵場に全軍が集結していた。


 その数、約53,000である。


 藩王国全土全州より招集した場合の1/10ほどの規模であるが、それでも、帝国内ではこれだけでも充分すぎる兵力といえた。ガフ=シュ=インは、王都防衛軍だけで下手な国の全軍の規模の兵力を有している。


 「これより、帝国中を侵略して回っている、悪逆非道なるヴィヒヴァルンの魔王の手先を駆逐する! 平原に軍を進めよ! 恐るべき敵の魔術師が待ち構えているだろうが、いま、神の子サマタイが大神殿より出られ、この王宮におられる! 恐るるに足らず! 神の子サマタイの起こす奇跡を信じよ!! ガフ=シュ=インとバーレン=リューズに栄光あれ!!」


 「うおおおおお!!」

 ガミン=ドゲルの檄に、兵士たちが応じた。

 が、半分以上が、疑心暗鬼だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ