第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-4-10 光る刀
魔獣が二撃めの魔法の矢を放つ前にストラが第二射を放ち、また直撃する。
しかし、魔獣も魔力の壁を機体もとい身体の下面に展開しており、ストラの攻撃をねじ曲げて逸らした。
(この出力を逸らすとは……魔力子の使用量が、シンバルベリル内臓型上級魔族に近い……)
その通り、これは魔獣ではなく、魔族だった。
ストラの対空砲をくらった瞬間、ダメージは無かったがレーザーに押された勢いでバランスを崩し、大きく傾いたとたん、変形して人形になるや、そのままストラに向けてつっこんだ。
「竜が、でっけえヒトになったでやんす!!」
「だから、魔物ですって」
見もせずに、ひたすら大きな徳利から酒を移したカップを傾けながらブチブチ云うペートリューを見やって、プランタンタン、
「酒の入ったペートリューさんは、相変わらず無敵でやんす」
外骨格をもった人形の魔物は、既にフィーデ山の地下空間にいた「ガドナン」と会敵している。また、ギュムンデの闇闘技場で、ガドナンを改造したと推測される魔物とも戦っている。
その、ガドナンやガドナン改とは比べ物にならないほどの大きさで、かつスタイリッシュでメカメカしい姿の魔族は、背中に回したユニットや脚部の生体ジェット噴射で浮力を得つつ、ストラの攻撃を空間バリアで防ぎながら、巨大な杵のような棹状打撃武器を取り出した。
「あんなもん、どっから出したんでやんす!?」
震え上がって、プランタンタンが叫ぶ。ストラも魔族も、互いの魔法・熱攻撃を防ぐのであれば、物理攻撃しか無い。
「ストラさんと同じで、空間の裏側から取り出したんですよ」
「ナニ云ってるか、分からねえでやんす!! ペートリューさん!」
(稼働許可時間、残り18秒)
ストラが、もう2人を置いて空中に飛び上がった。
光子剣が、既に煌めいている。
同時に、超高速行動に突入。
文字通り眼にも止まらぬ速さで、巨人のような魔族を股下から脳天まで真っ二つにした。
その際、ストラの三次元サーチにより両肩に埋めこまれていた薄黄色のシンバルベリル2つを熱線で直接攻撃し、そのエネルギーを開放せしめる。
つまり、切った瞬間に大爆発を起こしたのだが、さらに同時に余剰エネルギー回収フィールドを展開、全て吸収した。
それらが2秒以内で行われ、プランタンタンが瞬きする間に、巨大な変形魔族は粉々に砕け散って風に乗っていた。
「見たか」
「観たか?」
「視た、視たぞ!」
「あの、光る刀が、ロンボーンを切り裂いたのだ!!」
「魔法の攻撃は、互いに無力化できる……」
「あの、光る刀だ!!」
「あの光る刀を!」
「光る刀だ!!」
「そうだ、光る刀だ!」
「光る刀を封じるのだ!!」
「封じよ!!」
「どうやって封じる!?」
「誰か、あの光る刀を封じる法を考えよ!」
「お前が考えろ!!」
「おまえこそ、何かいい方法はないのか!?」
「空間法はダメだ、イジゲン魔王も空間戦闘が得意だぞ!」
「じゃあ、どうするんだ!」
「ロンボーンですら、真っ二つにした刀だぞ!」
「魔力の塊ですら切り裂くぞ!!」
「いまは、よい考えが思いつかん……」
「この役立たず共め!」
「お前も役立たずだろが!」
「なにを、この……!」
「やるのか!?」
「やめろ、やめろ!!」
「やめんか!!」
「ケンカは止めろ!!」
「神の子を食いつぶす気か!」
「いまはまだ、正式な替わりが見つかっていない!」




