表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
531/1278

第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-3-2 ストラの羽飾り

 「先日、陛下が神の子サマタイに御会いになったさいに、な……」


 それに関しては、リザキや王太子ガミン=ドゲルであっても、深くは聴かない習わしになっている。近衛将軍たるレザル=ドキだけが、藩王につき従って神殿まで行くことができる。


 「なんでもいい。いまは、神の子サマタイの御託宣の通り、ヴィヒヴァルンと戦い、勝利して神聖帝国をガフ=シュ=インと陛下の治める地にすることだけを考える」


 「まあ、な」

 「そのために、わざわざ大元帥自ら、本軍を指揮するのだ!!」

 「その通りだ」

 「なんにせよ、ネズミを早く王都より追い出してもらわないことには……な」

 「分かっている!」


 レザル=ドキが意識を切り替え、ルートヴァン包囲作戦の為、リザキの部屋を出た。



 「王都から追い出すだけでいい! あらゆる路地をつぶせ! 戒厳令を発する! 魔法探索を急げ!」


 近衛将軍直々の号令一下、近衛兵8,000が総出でルートヴァンとフューヴァを探索した。魔法合戦ではルートヴァンの足元にも及ばないとはいえ、腐っても宮廷魔術師だ。高度な探知魔法で、的確にルートヴァンの位置を掴んだ。


 「ふうん……作戦を変えてきたな」


 冷え切った夜の空気に、ルートヴァンが杖を掲げて敵の動きを掴みながらつぶやいた。


 2人とも、姿隠し術で見えなくなっているが、軍勢がそんな2人を素早く包囲している。


 「どういうことだよ?」


 フューヴァが、周囲の気配を探りながら云う。吐きつける白い息ごと、姿隠し術は隠してしまう。


 「どうも、王都から追い出しにかかっているようだ」

 「追い出しねえ……罠なんだろうな」

 「それ以外にないよね」


 「咬み破るのかよ? 罠を」

 「破るのは容易さ。問題はその後、どうするか、だよ」

 「そんなもん、ストラさんと合流するんだろ?」


 「それが……まだ、スーちゃんと連絡がとれてないんだ」

 「ハアア!?」

 思わず声を荒げ、見えないながらもフューヴァが肩をすくめ、口で手をおさえる。


 ちなみに、2人は、お互いに見えている。そういう・・・・魔術だ。

 「てめえ、いままでナニやってたんだよ!! てめえの仕事だろ!!」


 フューヴァの囁きながらも怒鳴る声に「相変わらず、厳しいねえ……」と思いつつ、ルートヴァン、


 「コレ・・で、何度か通信を試したんだけど……応答が無いんだよ」


 「ナニ云ってやがんだ、無いなら無いなりに、なんか方法を考えるのがルーテルさんの役割じゃねえか!」


 「云うねえ……!」

 むしろ楽しそうにルートヴァン、


 「このスーちゃんの羽飾りの使い方を、ずっと探っていたんだけど……思っていたより、かなり危険な代物さ」


 「危険? それが?」

 胡散臭げに、フューヴァが眉をひそめた。

 「え、そもそも、それ、なんなの? 魔法の道具か何かじゃねえの?」

 「もちろん、魔法の道具さ」


 ルートヴァンが羽ペンでも回すように、その鈍い銀色に輝く羽飾りを指で弄んだ。

 「ただし、スーちゃんの・・・・・・魔法の道具だ」


 フューヴァが、文字通り切れ味の鋭い刃物のような、真剣な眼つきとなってルートヴァンの手の羽飾りを凝視した。その視線に、ルートヴァンは満足した。


 「ストラさんの魔法って……」


 「そう。聖下の魔法は、この世界の魔法とは異なる。魔力を全く使わないのは、フューちゃんも知っているだろう? だから、この聖下の・・・魔法の道具・・・・・を、僕がどう使えばいいのか……皆目、分からないんだ」


 「……」

 フューヴァが、刃物めいた視線のままルートヴァンを見上げた。

 「いまさらてめえ、マジで云ってんのか……」

 ルートヴァン、その視線にゾクゾクしつつ、


 「まあまあ……スーちゃんは、僕ならどうとでもなる・・・・・・・っておっしゃったのも確かさ。使いようはあるんだ……。ただ……ね」


 「ただ、なんだよ。勿体ぶってる時間が、いまあるのかよ?」


 「これは、魔力ではないけど、凄まじい『力』の集合体だ。その『力』を解放する方法は、なんとなく分かった。魔術式でね。まるで、燧石ひうちいしで発火させるように、この羽飾りを発火させることはできる。その『力』で敵を薙ぎ倒せるだろうし、スーちゃんと連絡もとれるだろう。……問題は、その制御がねえ、ちょっと自信が無いんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ