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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-2-6 ゲドラゴロ

 シーキがギョッとしてホーランコルとキレットを見やったが、キレットは豪快に笑いだし、


 「では、そうさせていただきますか。ネルベェーン、既に適当なの・・・・を見繕ってあるのだろう? 召喚しろ!」


 「分かった」


 寒風をものともせず、ネルベェーンが分厚い防寒マントを脱ぎ去って魔術を発動させた。


 「ホーランコルさんは、敵を引きつけてください!」


 「任せておけ! エルンスト大公殿下の名にかけて、この宝剣にイジゲン魔王様の御加護を!」


 ホーランコルが、この旅で初めて、ルートヴァンより授かった魔法の宝剣を抜きはらった。


 キレットがすぐさま、宝剣にさらなる攻撃力付与魔術を、ホーランコル自身に防御魔術をかけまくった。


 「おいおい、あんた達、マジであの数を相手に!?」

 シーキが驚いて叫ぶ。常識では考えられぬ。

 「イジゲン魔王様の配下は、これくらい当たり前ですよ!」


 ホーランコルの嬉々とした笑顔に、

 「狂ってるぜ!」

 「シーキさん、御逃げになって結構ですよ」

 「お、おいホーランコル、死に急ぐな……!」


 「こんな程度で死んでいるようじゃ、新しい世界でイジゲン魔王様が神と成る世界を、とうてい見届けられませんって!」


 云うが、

 「キレットさん、もう結構です、私とネルベェーンの援護を!」

 毛長牛ゲルクを駆って、数百という相手に向かって疾走、吶喊した。


 「ホーランコル!!」

 「シーキさんは、どうします?」

 「えッ……」

 キレットが、付与魔術を待機して、語りかけた。


 「急いでください。ホーランコルさんが接敵する前に、決めてください。攻撃魔術に切り替えますので」


 「うう……!」

 シーキが、流石に躊躇した。


 その時、ネルベェーンの召喚したこの北方の大地の魔獣が、地面を割って現れた。真冬でも冬眠せずに獲物を襲う、全長20メートルはあろう巨大なムカデとゲルクを合わせたようなバケモノで、しかもムカデの節々にある手は、ごつく太い人間の手だった。魔物と怪物の両方の特性を持つ、半魔怪物というべき魔獣だった。


 素早く、身を低くしたその魔獣の首の後ろにネルベェーンが飛び乗った。

 「キレットの分も召喚した!」

 「分かった!」

 すぐさま、2頭目が現れて近くに待機する。


 「ゲッ、土潜竜ゲドラゴロじゃあないか! ア、アンタ達……魔獣使いだったのか!」

 2人は普通の魔術師だと思っていたシーキが、毛長牛ゲルクの上で腰を抜かしそうになる。

 (これは、いける・・・……! エルンスト大公にも、恩を売れるだろう……!)


 瞬時にそう判断。

 剣を抜きはらった。

 「頼む、キレット!」


 キレットが、ほぼ同時に4重の攻撃及び防御魔術をかける。

 「ホォウりゃああ!」

 2番手で、シーキも毛長牛ゲルクを駆った。


 そして土潜竜ゲドラゴロに乗ったキレットが、最後に魔獣を進めた。

 驚いたのは、500人の正規兵を預かる大隊長だ。彼らは、王都の常備軍である。


 国外より侵入した4人の冒険者を捕らえるか殺せと命じられ、たった4人に500とか正気かと思ったが、


 「既に、幾つもの国を滅ぼしているという魔王の手下だ……人間と思うな!」


 という王太子の言葉を将軍より伝えられ、緊張し油断せず兵を動かし、探索していた。


 そして発見したとたんに、この数に真正面から突っこんできたかと思えば、土潜竜ゲドラゴロを2頭も操って反撃してくる。


 500でも勝てるかどうかだ。

 あの怪物は、それほどの魔獣なのだ。

 「あ、あれが魔王の手下か……!!」


 大隊長が歯ぎしりした。が、王太子の勅命である。逃げるわけにはゆかぬ。

 「か、囲め、囲んですりつぶせ!」

 よく訓練された兵士が、牧羊犬に追われる羊のように動く。

 「魔術師、攻撃を開始しろ!!」

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