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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 2-1-8 信じて疑わない

 「し、心配するな。私と大公で、世界を変えて見せるよ!」

 「やっぱり、ついて行かないとダメかあ?」

 「分かったよ……じゃあ、お前は来なくていい。村に帰れ」


 「そうさせてもらうよお」

 乗り気でないものを無理に付き従えたとて、むしろ足手まといだ。

 しかし……。


 「テトラパウケナティス構造体分離方式による疑似偵察衛星とのリンクが、一時的に回復しました。当該大陸北部上空に、小惑星の破片と思わしき岩石、隕鉄群の集合を確認。原因は不明ですが、大規模かつ広範囲な魔力子マギコリノの動きが関与している模様です」


 いきなりストラがそう云いだし、またラジオ体操を第1から始めだした。

 「……な、なんだってええ?」

 ピオラが目を丸くして、オネランノタルに尋ねた。


 「いや、よく分からないけど……星隕ほしおちの魔王が……動き出したってことじゃないかい?」


 「この国の魔王かあ?」

 「そうだよ」

 「ほしおち・・・・ってなんだあ?」


 「それは知らない。昔から、そういう異名なんだよ」

 「ふうん……」


 「ストラ氏は、その魔王を退治しに来たんだ。そして、全ての魔王を討伐したとき……この世界の要となり、世界を宇宙規模の魔力の大奔流から護る。そうして、新たなる神名を名乗ることになるだろうよ」


 「ホントに、そうなると思うかあ? 番人よお」


 「なるかどうか、じゃない。我々でそうする・・・・んだよ! じゃないと、世界が滅ぶんだってさ!」


 オネランノタルがピオラを指さし、こんな面白いことは無いだろうという表情かおで断言した。


 その後ろで、ストラも同じポーズをとってオネランノタルの背中を差したものだから、ピオラが吹き出して笑った。


 「何がおかしいんだよ! こいつ!」

 オネランノタル、四つ目をむいて叫んだ。

 「いや、だって……」


 ピオラがストラを逆に指さし、オネランノタルが振り返ると、もうストラは半眼で突っ立っているだけだった。


 それを見て、ピオラがまた笑いだした。


 「ピオラの旦那あ、少なくともストラの旦那はなんだかんだと、魔王を3人もブッ倒しているんでやんす。そうして、その都度、魔王の溜めこんでいた御宝をがっぽり頂くってえ寸法で……ゲヒッシッシシッシッシッシシシ~~~……あっしらは、それ・・さえ頂けりゃあ、難しいことはなああーーんにも、いらねえんで……」


 「素直だなあ、おい!」

 ピオラは、そんなプランタンタンにも好感を抱いた。


 「みんなよお、この御方ひとを、信じて疑わねえんだなあ。ペートリューもかあ?」


 「あたしは、お酒が飲めれば……ストラさんにくっついてれば、死ぬまで飲めるんです!」


 「そんなこと、断言することかよお!」

 ピオラが、腹を抱えて笑いだす。それを見てオネランノタル、


 「ピオラよ、これを面白そうと思わないのなら、勝手に帰って山の中にひっこんでろ。だけど、ストラ氏を神とする旅に同行したいのなら……これが最後の機会だよ」


 「よおし分かった! 大明神サマにつき従うよお!」

 「決まったね……」

 オネランノタルが、手を叩いた。


 「では、これより、異次元魔王ストラ氏を奉じ、我らは王都へ向かって進軍する! 途中でエルンスト大公と合流し、星隕ほしおちの魔王を討伐だ!」


 「たった5人の、魔王退治の進軍かあ!」

 ピオラが、また高らかに笑った。

 「え、あっしらも数に入ってるんでやんすか!?」


 プランタンタンが、御免被るという表情で叫んだ。もちろんペートリューも眼を丸くし、驚愕している。


 「頭数だよ、気にしないで。私に任せておきなさい!」

 「へえ……」


 オネランノタルに云われたプランタンタン、不安げな表情を崩さなかったが、


 「大丈夫ですよ、プランタンタンさん……オネランノタルさんは魔族なんですから、きっとルーテルさんより強いですし、頭もいいですよ。御任せしましょうよ」


 ペートリューがそう耳打ちし、ははあ、とうなずいた。


 「……そう云われりゃ、そうかもしれねえでやんす。分かりやんした。オネランの旦那、御任せするでやんす。あ、でも、そのナントカの魔王の御宝は、ちゃんと頂くでやんす!」

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