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第10章「彼方の閃光と星々の血の喜び」 1-3-13 次元光

 プランタンタンは、もうストラの次元格納庫にしまってある山のような金銀財宝を思い浮かべることしか生きる希望が無くなったような気がして、気が滅入ってガックリと肩を落とした。


 (その御金様や御宝様も、ストラの旦那が目を覚まさねえんなら、もう二度と拝めねえでやんす)


 そう思うと目の前が真っ暗になるが、きっとそのナントカのカントカの光がストラの眼を覚ますと信じて、いまは進むしかない。


 「おっ、噂をするとよお」


 ピオラが、そう云って山間の木々の向こうを指さした。プランタンタンとペートリューも、その方向へ目をやる。


 「あれは……」


 山の端の合間から虹色の光線がオーロラめいて光り、揺らめきながら立ち上っているのが見えた。


 「ありゃあ……」


 プランタンタンとペートリュー、嫌でもゲベロ島の次元クレバスや、宇宙船ヤマハルの出現を思い出す。


 次元の裂け目から発せられる光……次元光だ。

 「あれが、彼方の閃光だあ」

 


 それから、約2週間が過ぎた。


 山脈を上ったり下りたり、尾根を進み谷を越え、峠を幾つも越えてまた戻り、雪と泥にまみれて歩きまくってるが、彼方の閃光はいつまでも近づかず、本当に彼方の閃光のままだった。


 「どうなってるんでやんすかあ!」

 野営の時、さすがにプランタンタンがそう云った。

 ピオラも、疲労が溜まってきている。


 というのも、魔竜パガンゲドルのせいか、狩りをしようにも獲物がおらず、食料が尽きているのだ。


 ペートリューの酒も、心もとなくなってきていた。

 「これが、彼方の閃光たるゆえんだあ」


 「なにを呑気なことを云ってるんでやんすか……このままじゃ、魔物に襲われるめえに飢え死にでやんす」


 「確かになあ」

 ピオラが、大きく息をついた。

 とたん、腹が鳴る。


 トライレン・トロールは、そのパワーや特殊な装甲皮膚を維持するため、非常に燃費が悪い。


 「いったん戻って、ゲドル狩りに精を出したほうがいいかもなあ」


 「ピオラの旦那がそうするのなら、そうするでやんす。飢え死にするよりゃあ、マシでやんすし、いまここで旦那に倒れられたら、あっしらもおしめえでやんす」


 そう云いつつ、プランタンタン、


 「ペートリューさん、まったくもって期待もしてねえでやんすし、これっぽっちも分からねえとは思いやすが、万が一、奇跡みてえに分かるんなら、教えてほしいでやんす。いや、ルーテルの旦那でねえんでやんすから、分からなくたっていっこうに構わねえんでやんすが、このままじゃあペートリューさんも酒が尽きて一巻の終わりでやんしょうから、念のため聞くでやんす。なんで、あの光はまったく近づいてこねえんで?」


 「強力な魔力が、この辺の地形を歪めてるからじゃないですか?」


 ギョッとしてピオラが、ペートリューを澄んだ泉のような蒼い眼を丸くして凝視した。


 ペートリューは、何ともなしにただ天然に感知しているままを答えたのだが、もしルートヴァンがこの場にいたら、流石だと唸っていただろう。


 「え、どういう意味でやんす?」

 「いやっ、そのままの意味だけど」

 ペートリューがさっそくどぎまぎ・・・・し、水筒をグビグビと傾けた。


 プランタンタンがピオラを見やって、

 「分かりやす? ピオラの旦那……」

 「ううーん……」

 ピオラは顔をしかめて胡座あぐらに頬杖をつきつつ、


 「前に巫女様が云ってたんだけどよお、彼方の閃光は、位置を変えるんだあ。けどよお、変えるったって、あの通り同じ場所、同じ方向に見え続けるんだあ。けど、こっちが魔力で位置を変えられてるんなら、また話は別だよお」


 「ははあ……」

 焚火を前に、プランタンタンが顎に手をやり、

 「じゃあ、その魔族の番人ってやつの仕業でやんしょうか」


 「そうじゃねえかあ。いや、きっとそうだあ。そうにちがいねえ。だって、そいつしか、そんなことできるやつ、いねえものお」


 「ペートリューさん、どうしたらいいんで?」

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