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第2章「はきだめ」 2-3 大広間

 さらに、それらの従者や代理人、さらには主人と思わしき者たちまで……かなり広い部屋だったが、合計で三十人以上も男たちばかりいては、むさ苦しくもなろうというものだ。


 そこに、若い女が四人も入ってきたのだから、歓声、戸惑い、下卑た笑い、驚き、嫌悪、色々な感情が渦巻いて四人に雪崩こんだ。


 「なんだ? 試合前に、女を食わせてくれんのか?」

 「ばか、普通は試合のあとだろ……」

 「罠だね。キンタマ、カラにさせて、精気を抜こうってハラだ。あくどいな」

 「誰のハラだよ……」

 「冗談はいい。なんのつもりだ」

 質問は、四人を案内した若い職員に向かった。


 「新人だ。だが、メインか、その前か、その前の前か……とにかく、後ろの方だ」

 「はああ!?」

 とうぜん、ほぼ全員が口をぽかんと開ける。

 「ど……どいつ・・・が、だ!?」


 ストラが手を挙げずとも……案内と、三人がストラを見たので、自然、ストラに注目が集まった。


 「オイオイオイ……」


 革の軽装鎧に身を包んだ若いのが、鼻で笑って前に出る。他の連中は、いくらこんな場所に不釣り合いな細身の女だからとて、得体の知れぬ相手をナメたりはしない。


 「確かに、フィッシャーデアーデは女だから出られねえってもんじゃねえ。が、こいつ、なにが……」


 「既に、ちょっかいだしてきたガンダをつぶしてるよ。外でね」

 プランタンタンの前に、代理人たるフューヴァが物怖ものおじせず出た。

 「バカか! 冗談や寝言が通じる世界じゃねえぞ!」

 「本当だ。ガンダは引退だ」


 案内係が厳しい表情で云い、流石に雰囲気が変わった。ザワザワと空気が揺れた。

 前に出た若いのだけが、威勢よく続ける。

 「……フン、誰かと思えば、自称元貴族様のフューヴァじゃねえか」

 (元貴族?)


 プランタンタンとペートリューが、フューヴァを見やった。フューヴァがあからさまにイラついて顔をしかめ、


 「自称じゃねえ……!! 本当だ!」


 「なんでもいい。聞き飽きた。おまえ、ついにレーハーをクビになって、マタ開くのやめてフィッシャーデアーデに鞍替えか?」


 「うるっせえな……!!」


 フューヴァが、鼻っ面を歪めてにらみつける。若いのもめつけ返しながら額を近づけ、


 「なんだ、その眼は。売女ばいた売女ばいたらしく、こんなところに出しゃばってねえで、いつも通りオレのモノをうまそうにしゃぶってりゃあいいんだよ。なんなら、いまカネはらってやろうか?」


 「こいつ……!!」

 そのとき、後ろから野次が飛んだ。

 「おい、そんな出涸らしの棒っきれより、こっちのほうがいいぜえ」


 そう云って、薄い毛皮を裸身にまきつけた、どこの人種とも知れぬ蛮族がいきり前に出て、無駄に胸と尻がでかいペートリューに抱きついた。


 「アヒ……ヒッグ!!」


 驚愕と恐怖と不快で、ペートリューが固まる。男は笑いながら、もう肩を抱きながらその隠れ巨乳をわし掴みにし、魔法使いの職能ローブスカートに逆の手を突っこんでいる。


 大部屋の連中は、逆に驚いた。

 (な、なんだ、あいつ……)

 (魔法使いだって分からねえのか)

 (あんなやつ、いたか?)


 フューヴァと最初にしゃしゃり出た若いのも、あっけにとられて思わず見つめてしまった。


 「ゲァハハ! ちょっと、景気づけにこっちで遊ばせてもらおうかい!」


 そのまま身悶えるペートリューを抱きかかえながら部屋の隅の暗がりに押し倒そうとして、


 「…………」


 そのままガックリと膝をつき、ペートリューに覆い被さるでもなく……横倒しになった。


 ペートリューがあわててそやつの腕を払いほどき、這うように離れるや、入口付近まで逃げると頑丈な革の肩下げ鞄より水筒を出して一気飲み干した。そして、それをしまうと次のを出してまた飲む。


 (え……ペートリューさん、もしかして鞄の中に何本も酒入りの水筒を持って来てるんでやんすか?)


 プランタンタンが、そっちに驚いた。

 「おい、死んでるぞ、こいつ!!」

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