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第9章「ことう」 6-5 ダジオン山脈の片隅

 「ようし! 行こうぜ! まずはゆっくり休んでさあ」

 ペートリューが、その旨をプランタンタンに訳した。


 「きまりでやんす!! しばらく、世話になりやあしょう! ついでに、旦那も運んでもらって……」


 「そ、そうね、そうだね、お酒もあるかもしれないし……」

 「酒は、しらねえでやんす」

 そこでピオラが、


 「じゃあ、魔王と戦ったその戦友はよう、ここに埋めてやろうぜえ」

 「いやっ……!」

 ペートリューはビックリして息を飲み、


 「し、死んでません!! ストラさん……この方が、この方が魔王を倒したんです!!」


 「なんだってええええ!?」

 ピオラが、うっすらと雪が積もっているストラを見下ろした。

 「え、でも……息もしてないしよお……もう、冷たくなって……」


 「ね、眠っているんです……たぶん、魔法で……眠らされて……でも、起こし方は、分かりません……私達には、分からないんです」


 「そうかあ……」


 ピオラが顔を曇らせて、悄然とするペートリューとまるで彫像のようなストラを見つめる。


 「ようし、じゃあ、村の巫女に聴いてみるといいよお! 魔法で眠らされた人を、どうやって目覚めさせるかさあ!」


 「い、いいんですか……!?」


 「もちろんさあ。魔王を倒した戦士様とその仲間なんて、最高の客人だよお! あたしが戦士様を運ぶよお」


 「いいんですか!? お、お願いします! ぜひ! ぜひ!!」

 「おやすい御用さあ!!」


 そう云ってピオラが巨大な多刃斧を腰のベルトにひっかけ、血抜きと最低限の(食べられない)内臓や部位を抜いた巨大なゲドルの後ろ足を軽々と肩にかけて右手で押さえると、左手で豪快にストラを脇に抱えた。


 それを見て、プランタンタンが手を打った。

 「やっ、やりやあしたねえ、ペートリューさん! 見直したでやんすよ!」

 ペートリューは大きく息をつき、一仕事終えた感触を味わった。


 「酒のみてえーーーーー」


 「さ、さ、行きやんしょう……まずこの、ナントカっつうトロールさんの家まで」


 「そうだね……」


 ペートリューも膝に手を当て、ゆっくりと立ち上がる。

 その2人へ、ピオラが、


 「なあ、この人、すっげえ重いなあ。とても、この大きさの人の重さじゃあないよお」


 「え、そうなの……? よく分からないです。ストラさんが、重いだなんて……」


 そりゃ、ストラを抱き上げたことなど無いので、重いなどと夢にも思っていない。


 「魔王を倒すくらいだから、ただの人じゃあねえんだろうなあ」


 「その方も、魔王ですよ。イジゲン魔王っていうんです。意味は知りません。もう、他の魔王を3人も倒してるんです」


 「ええええええええええ!?!?!?」

 ピオラが仰け反って驚き、


 「いやっさあ! ま、魔王を村に招待できるなんてさあ……こりゃあ、村はじまって以来の出来事だよお!!」


 そして豪快に笑いながら、さらに雪が降りしきってきた森の中を歩き始めた。

 ゲドルを、まるで張子か何かでできているかのように楽々と引きずりながら。


 「いや、とんでもねえやつでやんす」

 呆れて、プランタンタンがそれを見つめた。


 「とりあえず、お酒のみたい……。まあでも、なんとか……なんとかなったね……」


 苦笑して、プランタンタンがペートリューを見やり、


 「で、やんすね。さ、行くでやんす。落ち着いたら、ストラの旦那を目覚めさせる方法を考えながら、なんとかルーテルの旦那につなぎ・・・をつけやんしょう」


 「そうだね……(酒のみたい)」

 2人は、しんしん・・・・とボタ雪の降りしきる中、ピオラの後ろに着いて歩きだした。


 ここは、広大なガフ=シュ=イン藩王国のほぼ西端にある、ダジオン山脈の片隅である。

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