表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
450/1279

第9章「ことう」 6-4 ここ

 「えっ、な、なに……!」


 「なに、じゃあ、ありやあせんよ、こいつ、どこのなんだか知りやあせんが……助けてもらいやしょう!!」


 「ええっ……!? だって、トロールだよ!?」


 「こんなトロール、見たことも聴いたこともありやあせんよ。きっと、あしらの知ってるトロールとは違う連中ですよ。とにかく、ここ・・にいつまでもいるわけにゃあ、いかねえんで……早く、頼んでくだせえ。言葉が通じるんでやんしょう!?」


 「う、うん……この、ゲベル島でもらった道具が……通訳してくれてるみたい……」


 「なんでもいいでやんす! ほれ、ほれっ!」

 プランタンタンにせかされ、ペートリュー、

 「あっ、ああああ、あの、あ、あのー、あのーーーーー」


 「ところで、あんたら、どこの人とエルフなんだあ? 見たことないよ。あたしらの言葉が分かるってことは、はんおうこく・・・・・・の人なのかあ? 魔法で話してるのかあ?」


 ピオラの方から、そう訪ねてきた。


 「ええ! まあその、えええーーーーーとですね、わっわ、私はペートリューで、このエルフはプランタンタンさんです。えーーーと、えーと、えーと、リリリ、リーストーンから、フランベルツに出て、そこからフィーデ山の地下を通って、ヴィヒヴァルンに出て、そこからウルゲリアに行って、そして海を渡ってゲベロ島に行って、そこから……えーーーーと、まあ、魔法でここ・・に飛ばされて……」


 「ぜえんぶ、しらねえ場所だあ!!」


 ピオラがそう云って笑い、血だらけの手で顎の辺りをぬぐったので、真っ白な顔に真っ赤な血の跡がついた。


 その血化粧のような美しい顔を、ぼんやりと見つめてペートリュー、

 「あ、あの、こ、ここ(・・)は、どこなんですか?」


 「ここは、はんおうこく・・・・・・のダジオンさあ。ここらの連なった山々を、あたしらの言葉でダジオンっていうのを、はんおうこく・・・・・・の連中もそう呼んでるのさあ」


 「ダジオン……ダジオン山脈……ってことかな。で、その、あ、あの、あの、お願いがあるんですけど……」


 「魔法で飛ばされたってことは、だれかと戦っていたのかあ?」

 「え、ええ……その、魔王……ロンボーンと……」

 「魔王おおおお!?」


 ピオラが眼を丸くして、大きな牙の見える愛らしい口を尖らせた。

 「え、えーーと、その……ええ、まあ」

 「魔王と戦ったのかあ!? あんたら!!」


 「いや、あたし達じゃあ、ないですけどね。戦ったのは」

 「それで、負けて、逃げてきたのかあ!?」

 「いやっ……勝ったみたい……なんですけどね……」


 「勝っただってえええ!?」

 「えっ、いやッ、まあっ、そのっ……」


 「すっげええなあ! 魔王に勝つなんてさあ! その、ナントカ島に魔王がいたのかあ!?」


 「ええ……ゲベロ島です」

 「そっから……魔王に勝って……」

 「えーーーーーと……」

 ペートリューは即座に適当な云い訳を考え、


 「えーーーーー最後にーーーーーそのーーーままままっま、まーーあおーーうの罠にハマってええええーーーとえーーとえーとえーーーとーーーーー脱出というかーーーそのーーーーー脱出する時間もなくてえええーーーーーーーなんとかここ・・までえええーーーそのおおーーーー飛んできたと云うかあああーーーーーーーーーーーー」


 「はああー……すっげえなあ……」

 ピオラの眼が、冷気を映して深く青に澄みきって、キラキラと輝いた。


 「なあ、あたしのムラに来いよ。しばらく休んで、体力を回復させてさ。魔王との戦いを、話してくれないかなあ!」


 「えーーーーまあああーーーそのーーーー話せる範囲で、なら……」


 なんと云っても、レミンハウエルもゴルダーイもロンボーンも、ストラが戦っているのを直接見ているわけではない。話せる範囲も何も、魔王のことなど何も話せる事柄は無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ