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第9章「ことう」 5-7 ヤマハル墜落

 その読み通り、ストラが超音速の体当たりでミサイルを全て迎撃しつつ、位相空間転移法の応用による次元バリアを展開して指向性ビーム兵器を防ぎながらヤマハルの周囲を飛び回っているだけで、すぐにヤマハルは沈黙した。


 全システムがダウンし、スピース回収器も落ちる。最低限の機能維持システムも機能停止し、ただの巨大な残骸となったヤマハルが、高度約30,000メートルより凄い速度で落ちた。


 圧縮された空気が発熱し、真っ赤に焼けた巨大宇宙船が雲を割って落下、大海原に向かって一直線に突入する。


 当然その光景は、ゲベロ島からも見えた。

 「ルーテルさん!」

 「聖下が勝ったのだ!!」


 まだ、プランタンタンとペートリューを発見できないでいたルートヴァンが、ゲッツェル山山麓地上20メートルほどの位置で、水平線に向かって落ちる、真っ二つに折れたヤマハルの船体を凝視する。


 幸いにも、あらゆる機能を失い、ただの物体と化したヤマハルは空気抵抗や重力、惑星の自転の影響でゆるやかに軌道をずらし、ゲベロ島から数キロの海面に墜落した。


 大質量飛来物とはいえ、宇宙空間の彼方から超高速で突っこんでくる隕石と異なり、成層圏の中ほどからゆるやかに落ちたため、それほどの衝突の威力は無かった。


 が、それでも、熱衝撃により海面が海底近くまで凹んでから盛り上がり、大爆発してヤマハルを粉々に砕いた。


 その衝撃波は、ゲベロ島にも10秒ほどで到達。ルートヴァンが地表へ降りつつ魔法のバリアを展開するも、2人ともバリアごと吹っ飛ばされて転がった。


 フューヴァが悲鳴を上げ、ルートヴァンにしがみつく。


 (これは……! プランちゃんとぺーちゃんは、助からないかもしれない……! 聖下に御期待するしか……ない……!)


 そのルートヴァンに、ストラから位相空間転移法を応用した次元通話が届いた。

 「ルーテルさん、ルーテルさん、聴こえますか」

 「あッ! ……ハハッ! 良く聞こえます、聖下!」


 「手短に云います。まだ魔王ロンボーンが健在です。ルーテルさんは、フューヴァと共に先に脱出してください。プランタンタンとペートリューは、私が救出します。次は、ガフ=シュ=イン藩王国へ向かうのでしょう?」


 「あ……は、いかさま! そこに、次なる魔王が!!」


 「では、そこで落ち合いましょう。しかし、ロンボーンはこれまでの魔王の2倍から3倍以上の魔力を保持し、戦闘はかなり激しく行われると予想。私も、どのような状態になるか分かりません。私から連絡をつけられない状態に陥った場合、これを使って、探索してください」


 ルートヴァンの目の前に、小さな羽を象ったような形の、薄い金属の装飾品が転送された。


 「これは……!」


 テトラパウケナティス構造体分離方式による、ストラの身体の極小一部というわけだ。


 「ルーテルさんなら、これを使ってどうとでもなる・・・・・・・はず。キレット、ネルベェーン、ホーランコルと合流し、うまく行動してください。よろしく」


 「ハハァ!!」

 「なに、ぶちぶち・・・・独りごと云ってるんだよ、ルーテルさん!」


 ルートヴァンに抱き寄せられて転がったまま、フューヴァが声を張り上げた。

 「プランタンタンとペートリューのヤツは、生きてるのか!?」


 「聖下が、僕たちだけで先に脱出しろってさ! 2人は、聖下がなんとかするようだ!」


 ルートヴァンが起き上がり、フューヴァを助け起こした。

 「ホントかよ!?」

 「これを渡された」


 ルートヴァン、いまストラからもらった羽のような装飾品を見せる。

 「ストラさんから、渡されただって……!?」

 フューヴァが眉をひそめ、その銀白色に輝く羽の飾り物を凝視する。


 「じゃあ、さっさとトンズラだ!! それ、なくすんじゃねえぞ、ルーテルさん!」


 「そう、こなくっちゃ!」


 ルートヴァンがそう云い、まだ濛々と真っ赤に燃える雲を噴き上げるヤマハルの墜落地点を見やると、衝撃波に続いて爆発の影響による高波……いや、津波が迫って来ているのが、夜の海面に見えた。


 「じゃあ、行こう」

 「ああ」

 ルートヴァン、転送魔術を思考行使。

 2人が、流星のようにその場から天に向かって消えた。

 


 衝撃波でくの字に折れて船体に大穴が空き、浅い砂浜に座礁したラペオン号が、高さ8メートルもの津波に押し流され、ゲベル人たちの集落に突っこんだ。


 波はそのまま集落を襲い、箱のようなゲベル人たちの家がプカプカと浮かんで、モミクチャになった。

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