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第1章「めざめ」 7-1 シンバルベリル

 三人のリーダー格である年長のホーデルが、さらに戸惑った様子で口ごもる。

 「どうした、答えよ」

 「少し早いが、シンバルベリルを使え……と」

 「な……!?」

 代官も息をのんだ。


 「つ……使えと云ったって……使えるのか? ランゼとは音信不通なのだろうが」

 「はい……」

 「おまえたちが使うのか?」

 「う……」

 ホーデルは答えられなかったが、必然、そうなる。


 「それに……あれだけ使ったところで、どうにかなるものではないはず。まず、組合をつぶして、ゲーデル山羊製品の利益を独占し、その金で兵を集めて……ダンテナへ対して兵を挙げる。その際に……シンバルベリルの破壊力をもって、伯父上の兵へ開幕で大打撃を与える……。これは、グラルンシャーンとランゼの作戦だぞ!」


 「で、ですから、ことが急変しております。グラルンシャーン殿も、それを見越して……」


 「なことを云ったって、こっちの兵はまだ充分に集まっておらん! たった70やそこらの兵で……」


 「そのための、我らの魔法と、シンバルベリルです」

 「ううん……!!」

 代官が唸る。


 「ダンテナの総兵力は約300だ。そのうち80がタッソにもうすぐ到着する。それを、シンバルベリルで焼き尽くすと同時に、挙兵する……。おれはよく知らんが……そのシンバルベリルというのは、そんな、何十という兵を一撃でほふるような破壊力を、そう何度も使えるのか?」


 「グラルンシャーン殿から頂いたものは、魔力貯蔵量からみて、おそらく……十回やそこらは、余裕で使えるかと」


 「ほほう……」

 「ただ……完全な制御は、やはりランゼ様でなくては」

 「不完全でもやるしかあるまい」

 「で、では……!」


 「どうせ、遅かれ早かれ……だ。よし、やろう。いや……やるぞ。やってやろうじゃないか!!」


 代官が意を決し、兵を集めた。

 


 早朝から緊急令が出て、兵士たちが武装して代官所に集まったので、タッソの人々も何事が起きたかと動揺した。ゲーデル牧場エルフの代表であるケペランにも、緊急の伝令が来た。ケペランはまだ休んでいたが飛び起き、


 「……代官が決意したか!!」

 「ハッ!」

 伝令兵が、深く礼をした。


 「グラルンシャーン様から、指令は来ている……最大限の協力をすると伝えよ!」

 「ハハッ!」

 「既に我が竜騎兵が30、森の中で待機している。いますぐ合流させると伝えよ!」

 「かしこまりました!」

 伝令が代官所へ戻る。


 「ケペラン様!」

 起き抜けに現れた護衛エルフたちも、急いで支度を始めた。

 「兵を集めろ! 我々とて、仇討ちだ!! 既に13人、殺されているからな!!」

 「いかさま!!」


 「あの謎の女剣士め……どれほどの剣を使うか知らんが……シンバルベリルの威力をくらって泣きを見るなよ……!!」

 


 まず代官所の兵士たちが急襲したのは、ゲーデル山羊製品卸商組合の本部だった。リックを筆頭に、専従職員三人が建物に暮らしている。


 「な……なんだ、なんだ!?」


 朝早くからドアを破らん勢いで叩かれ、急いで開けたら一気に兵士が数人、中に入って、


 「わ、あっ……!」

 と、いう間に三人は拘束された。

 「な……どういうわけだ、こりゃあ!?」

 「命があるだけマシと思え!!」

 「なんの罪だ!?」

 「罪は無い」

 「ハア!?」

 「組合は解散だ!! 卸商は全て廃する!!」

 「……!」

 同様に、14軒ある各種の卸商の家々にも、兵士が怒鳴りこんで主人を拘束した。

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