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第8章「うなばら」 2-9 マギコリノ集中器官

 もっとも、ストラの出力では、あの程度の魔物など一撃で蒸発させられる。が、近接すぎてあまりに大火力では船にダメージが出る。


 (待機潜伏モード、自衛戦闘レベル……3、不許可。2……一時的許可。許可時間は87秒)


 2では、テトラパウケナティス構造体分離方式による「円盤」が使える。


 ビュゥウ……ん、という音と共に、ストラの頭上に直径2メートルほどの銀灰色の円楯シールドめいた物体が2つ出現。ほぼ同時に触腕がストラを襲う。


 その触腕攻撃を、2つの円盤が楯となって防いだ。


 間髪入れず、魔物が次々に触腕を繰り出すが、2つの円盤が自在に空中を移動してその全てを防ぐ。円盤は凄まじく強力な魔力(と、冒険者たちは思っている)によって操られ、魔物の凄まじい攻撃を受けてもびく・・ともしないし、攻撃を受けるごとにショックアブソーバーのように後ろに下がって衝撃を吸収するので、触腕は威力を殺され、元の位置へ戻るのに時間を要している。


 心底驚愕したのは、船長を含む船員達よりむしろ、ラペオン号護衛の冒険者達だ。


 「なっ……ヴィヒヴァルンの魔法剣士か!?」

 ホーランコルが叫ぶも、誰も分からぬ。

 「それにしても、あれほどの楯の魔術を駆使するとは!」


 これは、ネルーゴフン司祭だ。防衛術は、むしろ神聖魔法のほうが得意というか、種類が豊富なのだが、これほど見事なものは、少なくともネルーゴフンは知らなかった。


 まして、2人の神官と2人の神官戦士に至っては、あまりの円盤の動く速度と防御力の高さに、呆然としている。


 (だ、だが、魔法戦士は、我らウルゲンの神官戦士と同じく、魔法の威力は専門の魔術師より大きく劣るという……!! それが、あ、あの威力とは……!?)


 ウルゲリア人の感覚と常識で云えば、聖騎士の中でも特段に強力な聖騎士……聖勇者級かそれ以上の聖騎士ということになる。


 ちなみに、たとえウルゲン流の神聖魔法の使い手でなくとも、御聖女おんせいじょ信仰に帰依していれば、それは聖騎士となる。


 (王都から来られたというのが本当なら、さぞや名のある聖騎士様に違いない!! あのような御方がいるなど、ま、まったく知らなかった……!)


 ネルーゴフンは素直に感動し、頬を紅潮させた。

 (レベル2使用許可限界まであと47秒)

 既に、ストラは魔物の全身深層探査を終了している。


 (心臓及び脳状器官、神経系統無し。循環する血液状組織液は無いが、全細胞に体液が満ちており、魔力子マギコリノにより生命維持活動を行っている。身体ほぼ中央部に、魔力子マギコリノ集中箇所を確認。当該器官よりの魔力子マギコリノの供給と、魔力子マギコリノによる行動命令と推測される信号の伝達を確認。よって、心臓及び脳代替器官と認定。攻撃開始)


 冒険者たちの眼前で、ひと回り大きい3つめの円盤が出現。


 その円周に、回転ノコギリの歯のように緑色のレーザーエッジがビッシリと出現して、円盤ごと超高速回転を始める。


 そして、瞬時に上空へ向かったと思ったら、獲物めがけて突っこむ海鳥めいて高速急降下。魔物の鯨類部分の背中に突き刺さった。


 体液と体組織をぶちまけながら、円盤が魔物の肉体を切り裂き、掘り進む。魔物が驚いて仰け反り、横倒しに海中に没した。


 円盤はまっすぐ「魔力子マギコリノ集中器官」を直撃し、その場で突進を止め、縦回転に加えて横回転も行い、ミキサーのように器官を粉々に切り裂き、すりつぶした。


 すると、魔物の生命活動が機能停止しただけではなく、巨大な身体全体がグズグズに崩れだして、海中に融けはじめた。


 (魔物って、あの魔力子マギコリノ集中器官を破壊すると、肉体が崩壊するんだ……)

 思わぬ弱点を発見し、ストラが記録する。


 (さすが聖下だ! あの大型の魔獣をいともたやすく……しかも、船に被害を与えずに……ようし、僕も!!)


 ストラが本命と思わしき大物を撃退したことで、ルートヴァンも客室で奮起。


 既にラペオン号の遥か後方に流れている氷海竜と魔物だったが、竜が凍結ブレスをさらに吐きつけ、自らごと魔物を周辺の海水と共に凍りつかせる。そして質量を増やし、海中に沈む部分を多くして氷の下部に魔物を押しこめた瞬間、氷の竜が自爆した。


 「なんだあッ!?」

 氷山が崩れたような低い轟音が轟き、水柱が上がった。

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