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第7章「かいほう」 4-5 ひたすら指をクルクルやるお祈り

 (やれやれ……まさに狂信者・・・……か。これは、他の派閥より異端とされるだけは、ある……)


 ルートヴァンが微かに口元を歪め、その視線を受け止める。

 (だが、これ・・を利用しない手はない)

 ルートヴァン、ストラへ深々と頭を下げ、


 「聖下、如何で御座りましょう、彼らの願いと目的は、過程は異なれども、我らと結果を同じくするものにて……」


 「うん」

 云うが、ストラが立ち上がった。

 「おおっ……!! イジゲン魔王様……それでは!!」

 「いいよ」

 「有難き幸せ!!!!」

 大総主長を含め、全員が一斉に土下座をする。

 「で、いつ? いま?」


 「い、いいえ! 今宵は是非にも、我らバレゲルエルフのブヤロホの祈祷に御参加願い奉ります……そして、明後日、我らにより、王都まで御案内させていただきます……!!」


 ディーンボロウに代わり、キュヴュイィがそう声を上げた。

 「案内って……また、あの転送通路を開くのかい?」

 ルートヴァンの問いにキュヴュイィ、


 「はい。ここから王都ガードラまで、7000タラムンはあります。徒歩で向かえば、大森林を超え、3か月はかかりまする」


 7000タラムンとやらがどれくらいの距離なのか、ストラはもちろん、ルートヴァンやフューヴァ達にもサッパリだった。が、我々で云うと、およそ650キロほどだ。そもそも、この大森林を徒歩で抜けるだけで難儀する。


 「じゃあ、その通りに」


 云うが、ストラがスタスタと歩き初めて本殿を出ようとしたので、あわてて他の者も後に続いた。

 


 5人はいったんゲストハウスのような豪勢な小屋に通された。もっとも、豪勢な……と云ってもヴィヒヴァルンの王宮に比べたら掘っ建て小屋だが……そこは、比べる方がどうかしている。それでも、


 「……なかなか、小綺麗じゃないか」


 ルートヴァンが小屋の中の質素ながらもセンスのよい民族的な装飾を見やってつぶやいた。小屋の中は3部屋があり、ストラとルートヴァンが1部屋ずつ、プランタンタン達3人が大きめの居間のような部屋に1泊する。


 そこで休んでいると、用意ができたようで、儀式に招待された。

 「ま~た、あのひたすら指をクルクルやるお祈りでやんすか」

 「プランちゃん!」


 手を頭の後ろで組んでブツクサ云うプランタンタンを、笑顔でルートヴァンがたしなめる。プランタンタンは首をすくめ、顔をしかめた。


 実際、祈祷の儀式はこれまでのバレゲル派と少し異なっていたが、御聖女おんせいじょ祝詞のりとを延々と皆で朗唱しながらひたすら額と胸の前で右手の指先をクルクルやるのは変わらなかった。


 「手がいってえでやんす」

 儀式は2時間ほども続き、ストラを除く4人はうんざり・・・・しながらハウスへ戻った。


 「いささか疲れたなあ。なあ、ルーテルさんよ、いつまであんなお祈りにつきあわなきゃいけないんだよ」


 「そりゃ、聖下が聖魔王を倒すまでさ」


 フューヴァがプランタンタンやペートリューと顔を見合せ、容赦なく3人で口元や目元をひん曲げる。


 「ストラさんと、あんただけでいいんじゃね?」

 「ええ? 僕に押しつけるのかい?」

 「なんだよ、ルーテルさんだってイヤなんじゃないか」

 「そりゃそうだよ! あたりまえだろ」

 苦笑まじりのルーテルの答えに、3人が笑う。

 「シッ……誰か来たでやんす!」


 耳と感度の良いプランタンタンが、小屋に近づくバレゲルエルフの気配を察知した。


 「どうぞ、直会なおらいの準備が整いました」


 訪れた案内係にそう云われ、暗くなりかけた森の中を5人が連なって三度みたび本殿に戻る。


 と、広い本殿内の祭壇の前に、宴会場がしつらえられていた。

 「やっとメシでやんす」

 ホッとし、いそいそと席につく。低いテーブルの前に胡座あぐらで坐る形式だ。


 夏も終わりに近づいてきており、深い森の中はどんどん暗くなってきて、明かりが灯された。

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