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第7章「かいほう」 2-16 どうでもいい

 フューヴァが目を丸くして、しばしルートヴァンを凝視していたが、


 「はああーーーー! さっすが、すっげえこと考えますね。つまり、この国の人間は、皆殺しっつうことですか!」


 「結論としては、ね」


 フューヴァは少なからず厭味を云ったつもりだったが、ルートヴァンは悪びれもせずに、ニヤニヤしながら車内で横になって片肘をついた。


 「どうせ、信仰なんかそう簡単に捨てられっこないんだから、必然、そうなるさ」

 「ストラさん、だ、そうですよ!」

 「いいよ」


 ルートヴァンが飛び上がり、片膝をついて、

 「有難き幸せぇええ!!」

 狂気じみた喜悦の笑みを浮かべ、ストラにこうべを垂れた。


 もちろん、ストラにとって、

 「どうでもいいよ」

 という意味である。


 未知世界の原始的原住民の政治的行動など、ストラにとって本当にどうでもいいのだ。ただ、来たるべき時・・・・・・に供え、なんでもいいのでエネルギー総量を回復しておくのが最優先であり、魔王と戦うとその機会が増えると思われるので、そうするに過ぎない。


 やれやれ、とフューヴァが息をつき、


 (さすが、ルーテルさんは考えがまとまってやがるぜ……一国の後継者だもんな。それにひきかえ、アタシ達はいきあたり・・・・・ばったり・・・・で、なりゆきまかせ……か)


 フ、と苦笑が漏れた。

 (奴隷に娼婦に飲んだくれ・・・・・なんだから、あったりまえか……)

 そんなフューヴァを見やって、ルートヴァン、

 「フューちゃん達が、聖下を導いてくれたんだよ。僕たちの前にね」

 「ええ?」

 フューヴァが、目元をひきつらせる。

 「導いた? ストラさんを? アタシらが?」


 んなアホな、というふうで、フューヴァは黙って馬車の壁に背をつけ、足を投げ出した。


 「んふふぅう~~~~ストラさんに、どこまでもついて行く~~~うひひぃ~~~~」


 酔っ払って樽の合間に寝転がっているペートリューが、寝言なのだか譫言うわごとなのだか分からぬことを口に出し、よだれを垂らしながら寝返りを打った。



 3


 バレゲルの大森林は広大な広葉樹林体で、総面積はウルゲルア国土のほぼ1/4を占める。ここから得られる木材も、重要な収入減であったので、バレゲル大神殿で厳重に保護・管理され、信徒たちが林業に携わっている。古くから立派な街道が整備され、突破には馬車で約10日を有する。


 しかし、大神殿の支配下にあるのは、森林面積の南側の1/3ほどだった。

 残りは、北部に住まうバレゲル森林エルフの支配地域だった。


 バレゲル森林エルフはウルゲリア建国以前よりこの森に住まっているだけではなく、伝承によるとウルゲリア信仰の大本である御聖女おんせいじょがバレゲルエルフの少女であったといい、長らく格別な待遇を受け、ウルゲリア信仰を支えてきた。


 その様子が変わったのは意外と新しく、ここ数十年であるという。


 エルフ達は大神殿の御聖女信仰に異を唱え、「聖女を解放」し「真の信仰を取り戻すべき」と主張し始めた。そうしてエルフ達はおろか一部の人間までその教えを信仰し始めたため、両大神殿により「異端」と認定されるに至った。


 そもそも対立していた両大神殿が共に異端認定したことにより、ウルゲリア信仰は「王都派」「バレゲル派」「森林派(異端)」の三つ巴の様相を呈している。


 「と、いうのが、この国における聖女信仰の現況です」

 野営の焚火を前に、ストラがそう説明した。

 これは、ストラがミヨンテの脳内を三次元深層探査し、得た情報であった。

 「解放とか、真の信仰とか、どういう意味なんです?」


 火で炙った堅パンと干し肉をかじり、赤ワインで流しこんで、フューヴァがルートヴァンに尋ねた。


 「いや、さすがの僕も、そこまでは分からないよ」

 堅パンを片手に、ルートヴァンが苦笑する。

 「どういう意味でやんす?」

 干し肉をむしりかじって、一応・・プランタンタンがストラに尋ねた。

 「よくわかんない」

 「わかんねえそうでやんす!」


 プランタンタンがフューヴァに向かってそう云い放ち、笑った。プランタンタンは、ストラがそう答えるのを分かって、あえて聞いたのだ。


 それを理解し、フューヴァがチェッ、と口を尖らせた。

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