第6章「(ま)おうさま」 5-15 マジのガチで魔王退治の旅
シラールもヒョコヒョコとついて歩き、
「陛下! フィーデンエルフの生き残りどもは、いかがいたします?」
「長年、レミンハウエルに仕えてきた功はある……。適当に、余生を送ることのできる土地を与えておいた」
「既に対処済とは……! さすがでござりまする」
と、執務室で大臣の一人が待っていた。
もちろん、魔術師でシラールの弟子の一人だ。
「陛下、畏れ入ります……急ぎのご報告にて」
「どうした」
「はい。フランベルツのラグンメータ総督より、救援物資食料援助の依頼と、魔術師の派遣要請が来ております」
「フランベルツから?」
「いかがいたしましょう」
ヴァルベゲルとシラールがチラッと眼を合わせ、シラールが片眉を上げて肩をすくめた。
「当方もそれどころではない。フィーデ山噴火により、甚大な被害だ。無理だと伝えろ」
「畏まりましてございます」
深く一礼し、大臣が下がる。
「南部平原の無人地帯に、甚大な被害ですからな!」
「フフ……それに、新たな下賤の総督は、ストラの力を借りてフランベルツを乗っ取ったというではないか。自業自得よ」
「左様! かまっておる暇も余裕もありませぬ」
「ケツ持ちは、策謀の根源であるマンシューアル藩王にやらせればよい」
「それより、陛下には、ウルゲリア侵攻の御準備を! 殿下より、聖魔王討伐の知らせが入りましたら、即座に攻め滅ぼさなくてはなりませぬ!」
「忙しくなるな」
「いかさま……!」
老人2人の眼が生き生きと輝きだし、さっそく周辺諸国の大地図を広げた。
王都を出てからも、しばらく花火は続いた。
街道を行き、農村地帯に入っても、動員された村人たちが見送りに並んでいた。
街道筋の村を出て、昼過ぎとなり荒野に差しかかって、ようやく誰もいなくなり、人心地ついた。
「やれやれ、やっと静かになったでやんす」
「この先の宿場でも、ずっとこうなのか?」
荷台と話をする壁の小窓を開け、フューヴァが辟易してつぶやいた。
「さあ……」
「少し、休もうぜ。おまえも疲れただろ」
「さいでやんすね」
プランタンタンが馬車を止め、道の端に寄った。台からおりて、伸びをする。フューヴァとストラも、荷台の後ろの両開きドアを開け、外に出た。
日射しが強い。
「ヴィヒヴァルン国境まで、どれくらいだ……?」
フューヴァが、道端で与えられた地図を広げた。
その地図は、既にストラもインプットしていた。
「東に約10日……ヴィヒヴァルン諸侯の所領四か所を抜けて、国境。そこからアルメデス平原国、ヴルヘニア公爵領、スメトルム諸侯連邦を経て、ウルゲリア神聖王国に到着。ルートヴァンもといルーテルは、10日後にアルメデス平原の小さな農村で合流予定」
「はあ……」
意外と遠く、フューヴァとプランタンタンが見合わせる。
「まず、詳しいことは、ルーテルの旦那が合流してから聴きやしょう。それまで、金もあることだし、のんびりと旅を続けましょうや」
夏の日射しに汗をぬぐいながら、プランタンタンが道端で体操のように身体を動かし続ける。
「そうだな」
フューヴァも、地図を折り畳んだ。
「しっかし、マジのガチで魔王退治の旅とはねえ……」
日射しを手で遮りながら、フューヴァが街道の先を見つめた。いまいち、現実味が無い。レミンハウエルも、すぐにストラが逃がしてくれたので、チラッとしか見ていない。これからも、あのような魔族と戦うのだろうか?
入道雲が、高く屹立して青を切り抜いていた。




