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第6章「(ま)おうさま」 5-12 独り言

 「自己判断プログラム。未知世界現地待機潜伏行動モード続行。引き続き調査行動許可。ただし、主戦闘メイン・バトルモード実行は、エネルギー総量の絶対的不足により不許可。各魔王との戦いにより、エネルギーの大幅な回収が期待できることにより、随時各魔王との戦闘を許可。その後の、世界の要を勤めるとやらの現地任務に対しては、情報不足により判断保留。情報収集を求む」


 「……!?」


 ストラの「独り言」を初めて聞いたヴァルベゲル達は平伏したまま流石に戸惑ったが、チラリとヴァルベゲルがグダグダのかっこうのまま立ち尽くしているフューヴァを見やり、フューヴァが何度もうなずいたので、


 「有難き幸せ!!!!」

 とにかく、3人してそう平伏した。

 「うん」


 ストラの返事に安堵し、ヴァルベゲル、

 「畏れながら申し上げまする、聖下」

 「いいよ」


 「魔王大討伐の大偉業の遠大にして聖なる旅に、この私めの孫を、何卒御同行願い奉りたく……」


 ヴァルベゲルが、シラールと反対側に控える若者を手で指した。

 「誰?」

 青年が、おもてを上げる。


 「御初に御尊顔を拝し奉りまする、聖下。ヴィヒヴァルン王ヴァルベゲル八世が長子フィデリオス王太子が長子、エルンスト大公ルートヴァン・エラルド・エルンストン・フィデリアウスヴェン・ヴィヒヴァルネスめに御座ります。以後、御見知りおきかつ、どうぞ全魔王討伐の旅に御帯同の栄に浴せますよう、王家王国魔術院の名にかけ、心より御願い奉ります」


 魔術の才能と知識知性はずば抜けており、眉目秀麗、性格温厚、家柄は頂点ともなると、上は貴族諸侯のお姉様方から下は魔術院の初等生に至るまで、国中の子女の憧れにして玉の輿争奪戦の対象であるルートヴァンは、しかし、異様なほどの堅物で通っている。かといって、女嫌い、男好きという話も流れぬ。24歳になる。


 現実問題、ルートヴァンが結婚するとなると、他国の王家直系の姫しか吊り合いが取れないし、政略結婚の意味もある。単に、色遊びに興味がないだけである。


 そんなヴィヒヴァルンの至宝とも云うべき嫡孫を、よりにもよって魔王退治の旅に同行させるとは、ヴァルベゲルは気でも狂ったのかと思われても仕方がないほど衝撃的な判断だが、その旅を生き残ってこそ、ヴィヒヴァルンは次の帝国の要になることができる。まさに、王家王国の存続を、ストラとルートヴァンに賭けたのだ。


 ストラは、しばしそんな不敵かつ野心と智謀にあふれた青年の眼を無機質に見つめていたが、ふいと3人のほうを振り返った。


 フューヴァはよく分からずとにかく何度もうなずき、プランタンタンは判断がつかず小首を傾げた。ペートリューは、酒が欲しいので挙動不審に目を泳がせておろおろした。


 「いいよ」

 ストラが向き直ってそう云うや、


 「恐悦至極にして感謝の極み!! 道中の案内指南は、全てこのルートヴァンにお任せ下さりませ!!」


 大仰に声を張り上げ、ルートヴァンが鏡のように光る大理石の床に額がつかんばかりに平伏した。


 「じゃ、出発は明日。今夜の儀式と直来なおらいは、私だけ出るから、3人の夕食などは、この部屋に運んでおいてください」


 「畏まって御座ります!」


 3人が立ち上がり、また深く礼をする。退室ぎわ、ルートヴァンが執事長へ軽く右手を上げた。執事長はそれだけで、以後すべての行動の予定変更を取り仕切った。


 プランタンタン達は晩餐会の衣装合わせから旅の装備のしつらえに変わり、かなり頑丈かつ魔法防御のかかった服や野外マントが用意された。ストラが晩餐会へ行ってしまうと、食べきれない量の豪華な食事や、ペートリューが泣くほど高級な酒が運ばれてき、3人でしばし自由に憩った。部屋が広すぎかつ豪華すぎるのと、10数人のメイドたちが一から十まで世話を焼くのには、最後まで慣れなかったが。


 一方ストラは、王都にいる主だったヴィヒヴァルンの国衆たる貴族諸侯が勢ぞろいする中、王家王族、シラール以下魔術院の重鎮、政府の重役達に五段ほど高い位置に用意された神坐にて「披露」され、一同で参拝拝礼の後、金銀財宝から珍味珍物、特産品などありとあらゆる供物、各地域の芸能や珍しい魔術奥儀が「奉納」された。その後、晩餐会というか宴会となり、なんと五時間に及んだが、その間ストラは本当に神像めいて飲み食いや身じろぎもせず、瞬きすらしていないように見えて、段々人々も神のように畏敬や信心、又は親しみを持ち、ヴィヒヴァルンの新たなる守護神として崇めだした。

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