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第6章「(ま)おうさま」 5-4 シンバルベリルと人が融合したもの

 ストラを中心に、神聖魔力が渦を巻いて集中する。この世界における神聖魔力は、本質的な部分は通常魔力とほぼ同じなのだが、信仰心という「人の心」を元にして動くため、フィジカルな効果を及ぼす通常魔力と性質が少し異なり、より時空間領域や精神領域に効果を及ぼす。


 ストラ的には、魔力子マギコリノの性質が変化した異パターン振動を伴うバージョンといったところだった。


 それを「手がかり」にし、より強大な魔力を使って、次元陥没効果を発揮させようとしていた。すなわち、


 「小規模次元破砕兵器と認定。対次元振防御展開。自己防衛戦闘レベル……3の限定的使用許可。ただし、こちらからの次元攻撃は不可。エネルギー総量不足」


 ストラがそう云うが、代官所や代官たちを含む一体に光の亀裂が走り、空間が裂け、異空間に沈み始めた。


 「う! うわっ、わあッ!!」

 「せ、聖騎士様! お助け、おたす……!」


 代官所の建物や代官達が次元の隙間の振動……次元振に触れ、粉微塵となって亜空間にばらまかれた。


 この次元振は、次元攻撃の典型的な手法である。人為的に次元振を発生させ、敵の攻撃を防ぎかつ触れるものを破砕して攻撃する、攻防一体に使える現象だ。


 が、いま現れているのは、次元陥没に伴う天然の次元振動だった。


 振動特有の音と光を発する壁に囲まれて、見る間に一行が次元断層に沈んでゆく。


 次元の裏側・・・・・よりその光景を見ていたプランタンタン達が、震え上がった。

 「……いってえ、こりゃあ、どういうこって……!?」

 「話せば長い。黙って見ておれ。ここは安全だ」

 タケマ=ミヅカに云われ、仕方なくストラの戦いを見守る。


 ストラは次元陥没効果を中和しつつ、聖騎士たちではなくその背後でこの攻撃を支えている「存在」を素早く探知した。


 と、いうのも、当の騎士たちが想定をはるかに超える呪法の効果に戸惑い、

 「隊長、こ、これは、どういう……!」

 「司祭様!」

 「これは、聖魔転想ではありません!」


 秘術「聖魔転想」は、膨大な神聖魔力をもって神敵を次元の隙間へ落とし、空間固縛するもので、術者ごと次元陥没するものではない。


 勇者ルテローク以外は、固縛し無抵抗となったストラをルテロークが必殺の聖剣で攻撃するという作戦のつもり・・・でいた。


 だが、未だに大音声で聖呪を唱えるルテローク、様子が異なっている。


 形相は別人のようになり、凄まじい魔力が全身を貫いて、空間へ放出していた。その魔力は、とても人間の発するレベルではない!


 「しっ、司祭様あ!!」

 魔力の流れが、稲妻のように四人の聖騎士を捕縛した。

 「グァアアア!!!!」

 騎士たちが悶絶し、悲鳴を上げた。魔力抵抗に、心身共に焼きつくされる。

 「……見つけた!」

 ストラが、中和波を放って次元の壁を一枚、破った。


 薄皮が破裂し、ガラスが砕けるように次元壁が割れ、次元のすぐ裏側に隠れてたもの・・が姿を現す。


 「げえっ……!」


 呻いたのは、ペートリューだった。フューヴァとプランタンタンは、その異形さも恐ろしさも凄まじさも分からなかった。


 それは、人間と鉱物? が一体化したような……黄色とオレンジに輝く結晶を彫って作られた彫像というか……とにかく、原寸大の人間が、棺桶めいて結晶化した大きな水晶のような半透明の鉱物に閉じこめられ、あるいは一体化し、空間中に浮かんでいた。人物は、手を交差して胸の上で合わせ、目をつむり、眠っているようにも見えた。硬質化しているので、とても静謐だ。ただし、その膨大な魔力の奔流を除けば。


 そしてその人間……いや、エルフには見覚えがあった。

 プラコーフィレスである。

 「あ! あ、あ、あ、あれ、あれ、あれっ……!!」


 ペートリューはそれ・・を知っているわけではなかったが、膨大な魔力と、何よりシンバルベリルと人が融合したもの・・・・・・だとは理解できた。そんなものが、存在するとは信じられなかったが。


 「……あれでは、だめだ」

 タケマ=ミヅカがそうつぶやき、

 「ええエエっッ!?」

 ペートリューが二度、驚愕する。


 「タ、タケマ=ミヅカさん! あっ、あれを知ってるんですか!? そっそ、それに……だめだ、とは……!?」


 「あれでは、失敗だ」

 タケマ=ミヅカは、そこまで云うと、厳しい表情かおで黙りこんでしまった。

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