表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/1274

第6章「(ま)おうさま」 4-21 魔王紋

 「……おい、行くぞ、二人とも」

 タケマ=ミヅカに云われ、二人は我に帰ると、はぐれぬように続く。

 商会から少し離れたところに、「ホテル・ボグル」があった。

 「ホテル・ボグル?」

 「関連のホテルだよ」

 ストラがそう云って、中に入る。

 「はあ……」


 プランタンタンとフューヴァがタケマ=ミヅカを見たが、タケマ=ミヅカも肩をすくめて続いて入ったので、その後に続いた。


 「いらっしゃいまし」


 ロビーや従業員からして、それまで泊まってきたホテルとは異なる、いわゆる豪華ホテルだった。以前ならとても泊まれたものではないが、とにかくいまは金がある。手持ち金はペートリューごと奪われたが、ストラの次元格納庫から既に数百トンプ相当の金貨銀貨を出している。


 余裕で上階の部屋をとることができた。


 二人ずつ部屋に入り、取り急ぎ片方の部屋に集まってミーティングを行った。


 「……で、ストラの旦那、ここのホテルがどうかいたしやしたか? ペートリューさんは、どうするんで?」


 そこからのストラの発言に、久しぶりにプランタンタンとフューヴァは仰天した。


 「ペートリューを誘拐した盗賊団が、三日後に隣のボグル商会の本部を襲い、従業員を皆殺しにして金品を奪う予定」


 「……エッッッ!!」


 「さらに、盗賊団の頭領は元勇者であり、勇者時代のツテにより、街道警備本部リピー支署長のペンケルなる人物と裏でつながっており、これまでも何回かの襲撃を見逃してもらっています。さらに、ボグル商会はこのペンケル支署長に賄賂を渡さないので、支署長はこのデイザー盗賊団の襲撃を機会に、ボグル商会をリピー宿から排除しようとしています」


 「……!?!?!?」


 プランタンタンとフューヴァは驚愕に凍りついたが、タケマ=ミヅカは一人で腕を組み、ニヤニヤと笑っていた。


 「……で、どうするのだ?」


 「まずは、何も知らないふりをして、街道警備本部リピー支署に盗賊団の情報を与え、ペートリューの捜索を依頼しようかと」


 「フフ……妥当なところよ。ではストラよ、支署に行くのなら、そろそろ『魔王紋』を考えておくか」


 「魔王紋」

 「いかにも」

 「……」

 ストラが、無表情のまま黙りこむ。代わりにプランタンタンが、

 「なんでやんすか、それ」


 と、タケマ=ミヅカに訪ねつつフューヴァを見やったが、当然、フューヴァとて知る由も無い。


 「も、紋章みたいなものですか?」

 「そういうことよ」

 フューヴァの問いにうなずきながらそう答え、タケマ=ミヅカ、


 「魔王は、必ず魔王紋を持つ。ただし、紋章というより古代紋ゆえ、もっと簡易なものだ。わらべの落書きのような、古代の遺跡にあるような、な。ちなみに、これがレミンハウエルの魔王紋だ」


 タケマ=ミヅカは、懐から掌に収まるほどの薄い銀のメダルを出した。そこに、△の真ん中に棒線を縦に描き、底辺から少し飛び出ている、まるで我々のオデンの先っぽか矢印のような単純なマークが鋳造されていた。


 「……え、これが、魔王レミンハウエルの紋章なんですか?」

 「いかにも。フィーデ山を表しておる。……らしい」

 「へええ」

 フューヴァが目を丸くした。まさに、子供の落書きだ。

 「こんなもんがねえ……」

 「じゃあ、ストラの旦那の紋章も、こんな単純なヤツがいいんですか?」

 「そうなるな」

 「じゃあ、ストラさん、どんな紋章にしますか?」


 さっそくフューヴァがそう云ってストラを見やると、ストラはやおら右手で宙に渦巻を描き出した。


 「??」

 「何か、書くものを」


 タケマ=ミヅカが促し、プランタンタンが部屋に備え付けのフルトス紙を発見する。


 「こんな、雑用にフルトス紙を用意してるなんざあ、さっすが、高級宿でやんす」


 ストラに渡すと、羽ペン(の、ようなもの)にインクをつけ、テーブルの上で描いたそれは、まさに右に二回半ほど巻いた簡易な渦巻き模様と、その上に我々の「ツ」のような三つのチョンチョンが着いたものだった。さらに、その右横に星のマーク……五芒星が描かれている。


 「……な、なんですか、これ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ