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第6章「(ま)おうさま」 4-18 勇者くずれ

 フューヴァが舌を打ち、

 「ちょっと探してきます!」

 部屋を出ようとする。

 と、窓際に突っ立って、腕を組んでぼんやりと外を見ていたストラ、ボソリと、

 「ペートリューは、三頭の馬ごと誘拐された・・・・・模様」

 「…………」

 プランタンタンとフューヴァが、パチパチと目をしばたかせる。


 「え……誘拐ィ!?」

 「うん」

 「いつですか!?」

 「さっき」

 「だ、誰にでやんす!?」

 「よくわかんない」


 二人がタケマ=ミヅカを見やったが、タケマ=ミヅカも流石にそこまでは把握していない。


 「まあでも、こういった主要国の街道筋には、勇者くずれ・・・・・の盗賊団も多いというが、のう……」


 「勇者くずれ!?」

 フューヴァが眉をひそめる。

 「迷惑な連中だなあ」

 「どうしやす? 旦那……」

 「ちょっと、行ってくる」

 ストラが組んでいた腕を解き、歩き出した。

 「ま、待て待て! 一人で行くな!」


 タケマ=ミヅカが慌てて止めた。ストラは、その半眼をタケマ=ミヅカへ向ける。


 「これも、異次元魔王の名を広める催し・・だわえ」

 「……じゃあ、いっしょに」


 「よしよし……では、魔王様、賊退治と参りましょうか。ほれ、己ら、喧伝せい、喧伝」


 云われ、フューヴァが急いでホテルの階下に降りる。


 「いいか、お前ら、いまからイジ……ゲン? 魔王様が、街道筋を荒らしてまわっているっちゅう、勇者くずれの盗賊を退治してくらあ!! 愉しみに待っててやがれ!」


 魔王見たさにホテルのロビーに集まっていた者たちがそれを聞き、

 「……勇者くずれ!?」


 「もしかして、リピー宿を何度も襲っている、デイザー一味のことじゃねえか?」


 「なんだ、そいつら……」


 「知らんのか、街道警備兵がずっと追っかけてるけど、返り討ちにあってるんだ。魔術師もいやがるからな」


 「そ、そいつらを、魔王様が退治してくださるんですか!?」

 「お……おう、もちろんだぜ!!」

 何のことやら分からなかったが、フューヴァ、とにかくうなずいた。

 おお……! と、どよめいて、


 「御願いでございます! ひ、一目、魔王様に御目通りを!」

 「魔獣を倒して下すった御礼を!」

 「こ、これを納めますので、どうか、私どものホテルに滞在を!」

 「てめえ、ウチが先だ!」

 「抜け駆けすんな!」

 「どうして、こんなところに泊まるんですか!!」

 「こ、こんなところとはなんだ!! あんたに関係ないだろ!」

 「おまえ、いくら貢いだんだ!?」

 「魔王様に失礼だろが!」

 「魔王様に御取次を! どうか! どうか……!」

 「お前なんか、どうせ商売ガタキを魔王様にどうにかしてもらおうって魂胆だろ!」

 「お、お前こそ!!」

 「御願いします!!」

 「どうか……!」

 いっせいにフューヴァに詰め寄った。

 しかしフューヴァ、もみくちゃ・・・・・になりながらも、


 「いい加減にしやがれ!! 魔王様を何だと思ってんだ!! 何でも屋じゃあねえんだぞ!! 死にたくなかったら、その口を閉じろ!! 閉じやがれ!!!!!!」


 ぴたり、ロビーに集まっていた人々が静まりかえった。


 「いいか、てめえら! イジゲン魔王様は新しい魔王として、本来ならヴィヒヴァルンの王様を呼びつけるところ、王国に敬意を表して御自ら王宮を尋ねなさる旅をしてるんだ!! その途中で、たまッッたま困ってるてめえらを助けてやってるにすぎねえッちゅうことを、ゆめゆめ忘れるんじゃねえッ!! 勝手なことばっかり云ってやがると、どうなっても知らねえぞ!! こんな宿場、指先ひとつで灰になるんだからな!!!!!!」


 「ウ……」

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