表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/1273

第6章「(ま)おうさま」 4-17 帰依

 そのストラが、スタスタと二人のところへ歩いた。人々が波のように分かれ、ストラを通す。


 「旦那、お疲れ様でやんした」

 「うん」

 「こいつらが、魔獣使いだそうですよ」

 「うん」


 出迎えたプランタンタンとフューヴァへぶっきらぼうに答えつつ、ストラは何の感情も無いような眼で、幾重にも槍を突きつけられて地面に這っている二人を見据えた。


 (……こ、これが魔王か……!? な、なんたる……何の感情も無い……ひ、人ではないような……!)


 キレットは、ストラの鋼色の眼を見つめ、恐怖に震えた。

 「まっ、魔王様! こんなヤツラ、死刑にしてくださいまし!!」

 「そうだ、そうだ!」

 「この子らの母親が、く、く、食い殺されたんです!!」

 「魔王様ああ!!」

 「お願いでございます!!」

 「どうぞ、我らの復讐を!!」

 大衆が、憤って口々にまくしたてる。


 (さて……どうする? ストラよ……魔王は、ただの為政者ではないぞ……。時には、理不尽や不条理をつきつけねばならん……)


 タケマ=ミヅカが腕を組み、気配を消してそう思っていると、ストラ、やおら、その手を音もなくカマキリの構えのように持ち上げ、キレットに人差し指を向けた。


 一瞬にして、人々が黙りこんだ。

 「私に帰依・・し、私のために命を捧げて働くのなら、今は・・許しましょう」


 云ってから、ストラは自分がどういうプログラムに従って、帰依などという「宗教用語」を口走ったのか、不思議に思った。もしかしたら、人間だった時の感情と記憶か?


 「ハ……」

 キレットは全身から汗が噴き出て、ガタガタと震えだした。


 「ハハアアアーーッ!! ぜっ、ぜぜ、全身全霊全魔力を捧げ、まま、魔王様に御仕え申し上げますううーーッ!!」


 キレットがそう叫び、土下座して地面に額を擦りつけたので、あわててネルベェーンもそれに続いた。


 宿場の人々が凍りついていたので、すかさずフューヴァが前に出た。


 「てめえら!! 魔王様の御決定に、不服のあるものはいるか!? いたら、命を懸けて申し出やがれ!!」


 「……!!」

 「文句が無いなら、魔王様に態度で示せ!」

 人々も、一斉に片膝をついて、ストラに平伏する。

 


 「フフ、あれでよい。文句なしだ」

 「そうですか?」


 タケマ=ミヅカがうなずきながら不敵な笑みで云い、フューヴァが満更でもなくニヤニヤする。


 四人は、焼け残った仮宿に入り、次の宿場を目指す準備をしていた。


 「魔王は、ただの英雄ではない。恐怖の対象でもある。一方的に決定を下すだけで良いのだ。有象無象の云うことを、いちいち聞く必要はない。それは、側近として魔王を・・・利用する・・・・己らの仕事になると心得よ」


 「え? アタシたちのですか?」

 「いまにわかる……」

 「はあ……」

 で、配下になった魔獣使いであるが。


 そのまま、タケマ=ミヅカの命令で遥か東北へ向かった。鷲頭有翼獣グヴェンシーを殺さずに残しておいたので、移動も早いだろう。


 「北海の魔王を探し出すのに、とある魔獣が必要よ。奴らに使えるかどうかは、わからんが……ま、いないよりマシ・・・・・・・、というところだな」


 「北海の魔王でやんすか?」


 席に着き、ブドウの果汁水を飲んでいたプランタンタンがタケマ=ミヅカに目をやり、高い声を発した。


 「カッコイイ名前でやんすね」

 「いずれ、ストラが倒す。帝国最辺境……絶海の孤島に隠れておる……はずだ」

 「へええ……」

 そこでフューヴァが思い出したように、

 「そういや、ペートリューのやつは、どこに行ったんだ?」


 あっ、とプランタンタンも素っ頓狂な声を発した。

 「もう、とっくに宿場に来ててもいいころでやんす!」

 「あのアホ、まさかあのまま呑みつぶれて寝てるんじゃねえだろうな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ