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第6章「(ま)おうさま」 4-15 イゲンジン

 (あ、当たった……)

 ストラが少なからず驚いて、たじろいだ。

 想定外に、弱い・・


 地上方面を確認すると、タケマ=ミヅカに続いてプランタンタンとフューヴァが、街道に溢れかえる人々に合流するところだった。


 「ま、間に合った間に合った……!」


 タケマ=ミヅカがつぶやいた。当然、ストラが魔獣を倒す前に間に合ったという意味だが、人々は別方向に逃げてはぐれた冒険者が、人々と共に逃げるのに間に合ったという意味だと思った。


 「大丈夫か!」

 「さあ、逃げるんだ!」

 「あんな魔物が現れるなんて……!!」

 心配し、タケマ=ミヅカ達に声をかける。しかし、逃げている場合ではない。


 「ホレ、ホレ……!」

 まだ息を切らせているフューヴァを前に出し、タケマ=ミヅカが急かす。

 「み、みんな、心配はいらねえ! まっ……ゴホゴホ!」

 急に息を吸ったので、フューヴァが喉を詰まらせて咳きこむ。

 仕方がなくプランタンタン、


 「魔王様が、あーんな魔物なんざあ、いっぺんぱんにやっつけてくれるでやんす!」

 「まおうさまあ!?」

 街道にごった返していた人々が、目を丸くした。

 「異次元魔王」

 「イジンゲ・・・・魔王様でやんす!!」

 「い・じ・げ・ん だ! 良い加減、覚えんか!」

 「そんなこと云ったって……」


 プランタンタンが前歯を見せ、鼻をピスピスと鳴らし、タケマ=ミヅカに向けて眉をひそめた。


 それはそうと。


 「フィーデ山の前の魔王をぶっ倒して、正式に新しい魔王様になったのが、あのストラさん……じゃなくってストラ様だってえことだよ!! 逃げる必要はねえ! みんなイゲンジン・・・・・魔王様があんな魔物を指先一つでぶっ殺すのを、ここで見物してりゃあいいんだぜ!!」


 「げえっ……!!」

 フューヴァの言葉に、ぶっ魂消たまげて、人々が街の上空を見やった。


 すかさず、タケマ=ミヅカが両手を振り、大きくマルを作ってストラへ合図をする。打ち合わせていたわけではないが、ストラのことだからきっと気づいてくれるだろうという希望的観測だ。


 果たして、ストラは常時大深度三次元探査でそれをとらえた。

 (……意味不明……)


 しかし、避難民が一斉にこちら・・・に集中しているのは分かったので、自己判断で撃滅反撃を開始する。


 魔獣供の恐ろし気な咆哮の三重唱も、ストラにとってはカラスがわめいているに等しい。


 特に怒り狂う人面有翼獅子アーペンデールがありったけの魔力を集め、特大の火球を口から吐こうとした矢先、ストラの大球電が炸裂した。あまりの威力に、自らが発射しようとしていた火球魔術の爆発も加わって、人面有翼獅子アーペンデールは身体が木端微塵に爆散! 骨まで炭化して地面に散らばって落ちた。


 (……やりすぎた)


 爆炎に巻きこまれた他の二頭が、翼をはためかせて煙を押しのけ、驚いて距離を取る。本能的には、逃げ出したがっていた。


 地上では、路地から表通りに出た魔銃使いの二人が、驚愕に顔をひきつらせた。

 「な、なんだ、いまの攻撃は!?」


 はるばる大陸の彼方の故郷より連れてきた、愛着のある魔獣を瞬殺されたキレットはしかし、憤りや怒りよりも、恐怖が勝った。少なくともあのクラスの年経としへ人面有翼獅子アーペンデールを一撃で倒すというのは、よほどの相手だ。


 「ネルベェーン、逃げるぞ!」

 流石に、師匠は判断が早い。

 「し、しかし、3万トンプだぞ!」

 「金より命だ!」


 だが、もう上空では、ストラがガニュメデでガルスタイのゴーレムを破壊したときのように、火竜ハラゲドルめがけて重力制御による超絶加重力キックをお見舞いしている。


 同時に、硬質でしなやかな竜の鱗を突き破って肉に食いこんだストラの足先から超高熱線が噴出し、高熱爆発を起こした。火竜ハラゲドルは肉体の内部より爆裂して焼け焦げ、火と煙を吹き上げながらどこかへ吹っ飛んで行った。


 「スゲエ、スゲエぞ、おいぃい!!!!」

 宿場の人々が、沸き立った。

 「あれがイゲンジン・・・・・魔王ストラ様だぜ!!」

 「異・次・元!!」

 「イジンゲン・・・・・魔王だ!!」

 「もうよいわ……」

 そんなに難しい言葉かな、とタケマ=ミヅカが首をひねった。

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