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第6章「(ま)おうさま」 4-8 ゴレオン敗北

 さらに、魔術師二人が連携で指向性圧縮魔術に火球を乗せて放つ。これは、一種の魔力爆縮レンズに火球魔術をぶち当てるもので、爆発力と熱を一点集中させる。


 サッとゴレオンが避け、ストラに弾き飛ばされた三人の戦士も打ち合わせ通りに距離をとる。雷撃剣を持っている一人だけ、ストラにぶっ飛ばされて近くの店舗の正面から建物の中につっこんでいたが、それでも急いで飛び出て離れた。


 つまり、それほど・・・・の威力なのだ。


 集中した熱線が、灼熱の光を発した。まともに食らったストラ、超高熱線を浴びたのちに高熱が解放されて大爆発を起こした。


 これは、さすがに魔王に挑むだけはある、ゴレオン組の最大規模の攻撃だった。

 もっとも、周囲の宿や店は爆風にふっとび、たちまち燃えあがった。

 「ハハハ! 魔王め、目を丸くしただろう!」


 云いつつ、炎に照らされたゴレオン、侮らずに第二波攻撃の準備に入る。これで倒せるとは思っていない。


 「す、少し下がれ」

 思ったより攻撃力があり、タケマ=ミヅカが三人と荷馬を誘導した。

 「いったいぜんたい、なんでやんすか、あいつあ!!」


 プランタンタンが、驚きと憤りに声を荒らげた。いまの攻撃で宿場の人が何人死んだか、想像もできなかった。


 「止めを刺してやるぁあ!! おいぃ!!」


 爆炎棚引く中、ゴレオンが高々と超大剣を掲げ、そこに魔術師達がさらに重複で攻撃力付与魔術をかける。他の重戦士三人は、その補佐のため所定の場所に陣取った。


 「いっくぞぉおおおるああああ!!!!」


 まだ高速化魔法が効いており、四人の重戦士が超高速行動ハイ・マニューバに匹敵する速度で連携攻撃に入ろうと動いた、その瞬間。


 ストラの放った数千度の超高熱プラズマ炎が、同じく超高速行動ハイ・マニューバから同時に三発、ゴレオンの周囲の重戦士達を直撃した。


 「…!!」


 一瞬で三人が骨まで炭化して、自らの高速行動の衝撃に耐えられず、バラバラに崩れた。


 「どぉるぅあああああ!!」


 それを知ってか知らずか、ゴレオンは両手持ちの超大剣を左からの横殴りにストラへ当てる。


 ストラが、光子剣アンセルムを抜いた。

 居合だ。

 互いに、超高速行動ハイ・マニューバ下での攻防だった。


 ストラは膝を折り、屈むようにして横一文字切りを避けた時には、上方のゴレオンの両手首めがけて下から光子剣アンセルムを抜きつけていた。間合いを自ら作るため、下がりながら抜く、引き斬りだ。


 いかに多重対物理防御魔法をかけていようと、光子破断効果の前では意味がない。


 光子剣アンセルムを防ぐには、前魔王レミンハウエルが開発した、魔力を一定の固定パターン文様で蒸着した対魔法防御装甲が必要だ。こんな、ただ単に分厚く魔力を乗っけただけ・・・・・・の防護など、防護の内にも入らぬ。


 過重力効果付超大剣が、それを握った両手首ごと物すごい速度で明後日の方向へ飛んで行く。


 そのまま集落を越え、遥か彼方の荒れ地へ落ちて、まるで航空機が落ちたような爆炎を噴きあげた。


 そしてゴレオンはバランスを崩し、跳ね飛ばされたように真後ろにひっくり返って、魔術師達の頭上を越えて十数メートルもぶっ飛ぶや、後頭部から地面に転がってバウンドし、土煙をあげて転がったまま動かなくなった。全身が、異様な角度に曲がっている。また衝撃にくわえ、既に空中にいる時点で、ストラの高電圧プラズマ球電が突き刺さって体内より心臓を止めていた。


 「……!!」

 魔術師達が凍りつく。

 「あ……」


 女は、ゴレオンを振り返って震えだした。男は、超高速行動ハイ・マニューバを解いてゆっくりと納刀しながら立ち上がるストラを凝視した。


 「あっ……はひ……!」

 男の魔術師が、腰を抜かしてへたりこんだ。

 女の方は、ゴレオンに向かって走り出し、懸命に回復魔術をかけた。


 「ゴッ、ゴレオン様、しっかり、ゴレオン様!!」

 だが、もう、死んでいる。

 「ゴレ……!!」


 蘇生は不可能と分かると、女魔術師はがっくりと地面へ手をついた。

 「はいはい、おしまいだ、おしまい」

 パンパンと手を叩き、タケマ=ミヅカが前に出た。


 「さあ、さあ、バーレル宿の者たちよ、代官を呼べ。あの勇者バカの死骸を片づけさせよ。おい、魔術師ども」


 「……!」

 腰を抜かしていた男の魔術師が、恐怖にひきつってタケマ=ミヅカを見やった。

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