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第6章「(ま)おうさま」 4-5 勇者ゴレオン

 「な……なにって……その……なんだ、呼び名というか、称号というか……」

 「ショウゴウ?」

 「エルフにはそういうの、ねえのかよ」

 横からフューヴァに云われ、

 「ないでやんすね」

 プランタンタンはあっさりと云いきった。


 ところで、そんな一行が宿場の通りを今夜の宿を探してそぞろ歩いていると、さすがに冒険者の中継基地だけあって、そこかしこから視線と殺気が飛んでくる。タケマ=ミヅカも気づいているし、なによりストラは全て三次元広域探査でどこにどのような冒険者が何人いるか、瞬時に把握している。


 「ねえ」

 ボソリと、ストラがタケマ=ミヅカに声をかけた。

 「なんだ?」

 「ここ・・は、どうすれば?」

 どうやって戦えばいいか、という意味である。


 「さあてのう

 タケマ=ミヅカは、目を細めてニヤニヤと笑い出した。

 「おぬしは、どうしたい?」

 「別に……」

 「そうさのう……」


 タケマ=ミヅカ、細い顎をしきりに撫で、

 「基本は変わらぬ。見物人に被害を与えず、叩き潰せ・・・・

 「了解」

 ストラは半眼のまま、ぶっきらぼうに答えた。


 その後、一行は宿場の真ん中・・・・・・のホテルを取り、休息した。

 意外なことに、タケマ=ミヅカは、よく寝た。

 しかも、やはり本当に寝ている・・・・・・・のである。


 自分と似た構造を持っていると認識している相手に「眠る」という機能がついていることが解析不能で、ストラは常時観測していた。肉体としての本体が物質的休息を得る為に睡眠を必要とするのならまだ話は分かるが、精神体アストラル・ボディ何のために寝る・・・・・・・のか、理解できなかった。


 それとは別に、既に何組かの冒険者……自称勇者達が、動き出している。

 それらは、全て広域三次元探査で把握していた。

 「あれが、例の魔王か?」

 「間違いない……。王の告知より、一人多いけどな」


 「かまわねえ、どうせ魔王に着くような奴だ……見たこともねえ人種の、チビの女剣士だ。どうってことねえ」


 「いつ襲撃する?」

 「誰から行く?」


 「バカ、オレからだ。というか、いまこの宿場で魔王に挑めるのはオレ達だけだ。お前らにゃ、まだ早い……!」


 「わかったよ」

 「お手並み、拝見だ」


 などと、各組の連絡員を使って四組の勇者達が互いに調整し、明日にも「勇者ゴレオン」なる人物が「魔王退治」としてストラに戦いを挑むらしい。


 (ふうん……)

 ストラは直近過去情報も含め、ゴレオンなる人物とその仲間達を探査した。

 したからといって、別にどうというほどの物でもなかったが……。


 ちなみに「ゴレオン」とは強そうに聴こえる芸名というか、仮名(あるいは勇者名)で、本名はペロンピスといった。


 翌日……。

 朝食時、食堂にタケマ=ミヅカは現れなかった。

 「……タケマズの旦那は、まだお休みに?」

 席に着いたプランタンタンが、前歯を見せてつぶやいた。

 「うん」

 相変わらずのぶっきらぼうで、ストラが答える。


 「珍しく、疲れたんですかね。とはいえ、こっちもペートリューのヤツ、いつも通り呑みつぶれてますけど」


 フューヴァが肩をすくめた。


 ヴィヒヴァルン中部は養鶏が盛んで、どこの宿場も卵料理が名物だった。目玉焼きにゆで卵、バターたっぷりのオムレツ、その他、チーズ類を合わせた各種の料理だ。


 もっとも、ストラにしてみればニワトリのような・・・・種類不明の謎の生き物の卵料理である。卵の形状も、凄く細長かった。


 (恐竜の卵に近い。原始的な骨盤を有している鳥類近似家畜)


 ストラは、そんなことを思いながら少しだけ口にし、食後のハーブティーを飲んで部屋に戻った。身支度を整えたタケマ=ミヅカが、窓際に座って外を眺めていた。

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