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第6章「(ま)おうさま」 4-4 第一の宿場

 ストラも、タケマ=ミヅカの後から、部屋に戻る。薄暗いランタンの明かりの中、さっそくタケマ=ミヅカがベッドで寝息を立てていた。


 (……本当に寝てる・・・・・・……)


 ストラは、三次元探査によりタケマ=ミヅカが魔力子マギコリノの集合体による疑似物質構成体であり、その本体は何者かの精神体アストラル・ボディであるらしいことまでは探知したが、その様々な探知波がタケマ=ミヅカを「すり抜ける」現象は解析不能だったし、今も、偽装ではなく本当に睡眠状態にあることを確認した。つまり、


 (どういう原理や環境でそうなっているのか、まったく不明、解析不能)

 そういう状態であった。


 壁の剣立けんたてに、タケマ=ミヅカの珍しい片刃湾曲剣が掛けてあるが、この剣も、タケマ=ミヅカの衣服も、全てが、


 (魔力子マギコリノによる疑似物質……)

 タケマ=ミヅカの一部・・ということになる。

 基本的概念は、ストラと同じなのだ。

 (引き続き観測を続けます)


 ストラは、静かに部屋を出ると、真っ暗な通路の窓から素早く外に出た。三階だったが、そのまま空中に浮かび、重力制御で天に落ちる・・・。雲を突き抜けて上空2000メートルまで上がり、いつもの重力レンズ展開により宇宙線等補充行動に入った。スルヴェン地下深くでの超絶巨大カルデラのマグマエネルギー吸収に比べたら、雀の涙以下の補充量だったが、


 「しないより、マシ……」

 で、あった。



 翌朝、まだ寝ているペートリューをなんとか起こし、尻に酒樽を括りつけている毛長馬の背に無理やり乗せると、他の者は歩きながら宿場を出た。


 「クソ、けっきょく通訳はみんなタケミズさんにやってもらって、こいつは役立たずのままだな……」


 フューヴァがブチブチ云うが、


 「まあまあ、ペートリューさんもようやく旦那で世界を征服しようとやる気を出したんでやんすから、きっと、いつかパリッとしてくださりやすよ」


 「そうだといいけどな。ま、この国がストラさんの活動の起点になるんだろうから、アタシも、早く言葉を覚えねえとな。その意味じゃ、ペートリューに頼りっぱなしにならねえように、こんな調子のほうがやる気になれるぜ」


 「ゲッシッシシ、そういうことでやんす」

 二人の会話を聞いて、タケマ=ミヅカが苦笑する。

 (世界を征服のう……頼もしいことよ)


 街道は荒野から坂となって森に入り、森を抜けると、田園地帯となった。葉物野菜や、根菜、小麦畑が延々と続いている。


 「次は、バーレルという宿場だ。ここは大きいぞ。冒険者もよく中継基地にしている」


 タケマ=ミヅカが歩きながら云う。ここまで来ると、火山灰もまったくない。

 「てえことは、街道が交差してるんでやんすか?」


 「いかにも。いま通っておるのが南部街道で、バーレルで王都街道及び北部スデーン街道にぶつかる。我らはそこから王都街道に入って王都へ向かう。南部街道は、バーレルで終着する」


 その日の午後遅く、一行はバーレルに入った。ここは街道が交差しているので、大きな関所があった。ヴィヒヴァルン王国は街道を行き来するのに通行証が必要な国ではなく、武装や素性を管理するだけだった。


 従って、役人も気楽なものだ。


 「えー、と……五人……と。字は書けるか? 書けない? 名前をここに書け……フランベルツ語なら書けるのか? じゃあフランベルツ語でいい。あんたとあんたは、ヴィヒヴァルン共通語が分かるのか? アンタも分かる? あっそう。じゃ書いて。そうそう」


 ヴィヒヴァルン語が分からないのは自分たちだけだと、プランタンタンとフューヴァは改めて認識させられ、少し焦った。


 「で? あんたらは冒険者なの? 剣士二人に、魔術師が一人、従者が二人……フランベルツから来たのか? フィーデ山が噴火して、大変だったな……え? あんたは、こっちで仲間になったの? あっそう。ところで、あんた、見かけない人種だけど、帝都の人?」


 面倒くさいので、全て役人の云う通りということにし、適当に書類を書いて通行料を支払い、一行はバーレル宿に入った。


 「旦那の職業を『マオウ』にしたほうが、良かったんでやんすかね?」

 プランタンタンに尋ねられ、タケマ=ミヅカ、

 「魔王号は、職業ではない……あくまで、号よ」

 「ゴウって、なんでやんす?」

 タケマ=ミヅカが、一瞬、言葉に詰まる。

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