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第6章「(ま)おうさま」 4-1 裏の謁見

 4


 ヴィヒヴァルン王都ヴァンルテーゼンにあるヴァルラマナ城最深部、表舞台の謁見の間の裏側にある、秘密の部屋。


 そこに、ヂャーギンリェルを筆頭に、生き延びたフィーデン洞窟エルフ達の代表がいた。


 みな、足を組んで床に座り、王と宮廷魔術師の登場を待っている。


 本来であれば、正装し着飾るところだが、代表達ですら泥まみれ、埃まみれだった。最低限、顔や手足を洗っている程度だ。


 フィーデンエルフ達は、かろうじて転送魔術が間に合って脱出できた者たちが、ヴァルベゲル8世に庇護を求めた。


 五日間、王都近郊の森で厳重な警護と監視の元、待機してたのだが、ようやく代表三名の謁見が許された。


 ヂャーギンリェル、プラコーフィレス、そしてヂャーギンリェルの息子で次期族長候補筆頭のニェルジェンキェルだった。


 全身、髪まで真っ白に血のような赤目、着ているものは黒染めされた漆黒の革衣装である彼らの姿は異様で、エルフと云えばアデラドマ草原エルフを思い出す王宮の人々は、一様に奇異の眼で見た。


 三人の周囲には魔法剣を装備する近衛兵が何人も立ち、また、魔術の行使を防止する魔術師もいる。そもそも、巨大な王宮全体に対魔法妨害の秘術が施されている。


 「国王陛下の御成り」


 係の者が甲高い声を発し、一同が威を正す。非公式な裏の謁見とは云え、形式は頑なに護られる。


 フィーデンエルフ達も石床に拳をつけ、深々と白い頭を下げた。

 衣ずれの音がし、国王が質素な椅子に座った。その横に、小柄な老人も立つ。

 王立魔術院院長のシラールだ。


 「おもてをあげよ」

 重々しい声が響き、フィーデンエルフ達がそろって顔をあげた。

 「改めて聴く。レミンハウエルが死んだのは、まことか?」

 「ハハッ」

 ヂャーギンリェルが代表し、ヴィヒヴァルン語で応える。


 「まことにございます。フィーデ山が噴火し、我らが山を脱出したのが証左にございます」


 「して、倒したのは、まことにストラなる謎の魔法戦士か?」

 「いかさま!」

 「何者だ?」


 「ハ、直にストラと戦った我が巫女戦士、このプラコーフィレスによりますと、まさにこの世の・・・・ものではない・・・・・・……と」


 「この世の……」


 意外なことかもしれないが、この世界にいわゆる「ゴースト」系のモンスターは存在しない。死者の魂がこの世に戻る、あるいはこの世に留まるという現象は、この魔法世界でも確認されていない。


 従って、この世のものではない、というのは、現実世界では到底考えられないほど、という比喩になる。


 が、ストラの場合、それが現実にそうなのだ。

 「レミンハウエルは、何と申しておった?」

 それには、プラコーフィレスが応えた。


 「はい、私めが転送を終えた後に聴こえてきた魔王様……いえ、レミンハウエル様の声によりますと、新たなる魔王は、この世界とは異なる世界より到来した……我らとは異なることわりによる存在である……と」


 「この世界とは異なる世界……?」

 ヴァルベゲルが眉をひそめた。

 「そんなものが、存在するのか?」

 傍らのシラールに、耳打ちする。


 「聴いたことも見たこともございませんが、レミンハウエルがそう云うのであれば……あるいは……!」


 「ふうむ……」

 ヴァルベゲルが腕を組み、


 「にわかには信じがたいが、そのストラなる者にレミンハウエルが倒されたのは事実。そして、今やそのストラが新たな魔王となって、この王都に向かっている」


 目を細め、厳しい視線をフィーデンエルフ達へ向けた。


 「で、我らとは盟約も何もない其方そのほうらが、何ゆえ、我らへ庇護を求める? アデラドマの連中ですら、ホルストンへ逃げたというぞ」


 「それは……」

 「おおそれながら申し上げます!」


 プラコーフィレスが緊迫した声を発し、したまま少し前に出たので、瞬間的に近衛兵二人が国王の前に立った。


 「よい」

 云われ、再び別れて控える。

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