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第6章「(ま)おうさま」 3-3 出し物

 ウェッソン、後ろの魔術師たちとレームス達、そして恐慌状態だった村人らまでも、一様に凍りついた。


 白煙が晴れてきて、恐る恐る目を向けると、無表情のストラに剣を持った右腕を掴まれて呻いているガーデンナーがいた。


 バックハウスは、ストラに一撃で蹴り殺されたのだ。

 「ガ、ガーデンナー!」

 「ウェッソン様!! おお、お助け下さい!!」


 ウェッソンの声に、ガーデンナーが泣きながら訴えた瞬間、ストラがその腕を軽くひねり・・・上げた。


 すると、折れるどころか、右手が肘から下で折れ千切られ、切断された。

 鮮血と絶叫をぶちまけ、ガーデンナーがその場に崩れた。


 そのこめかみを片手で鷲掴みにし、ストラ、無言で持ち上げる。泣き顔と苦悶のガーデンナーが左手でストラの手を掴んだが、意味が無い。


 ストラは容赦なく、卵でもつぶすようにガーデンナーの頭蓋骨を握りつぶした。


 「…………!!!!」


 脳漿をぶちまけてガーデンナーがストラの前に崩れ落ちて横たわり、ウェッソンが震えだした。村人達など、気絶する者までいる。


 さしものレームスも、驚愕に固まりついた、

 そう。

 魔王の喰う生贄は、必然「演出」されなければ意味がない。


 戦いにあっては、魔王は無敵にして無慈悲である、と、恐怖と共に人々に認知・・させなくてはいけない。


 地下深くで人知れず生贄を喰っていたレミンハウエルは、勇者が帰ってこない事で人々が魔王にやられたのを噂するだけという、はなはだ効率の悪いやり方をしていた。それはもう、単なる自己満足に近いやり方だ。


 ストラが、ガーデンナーの死体をちょいと蹴り飛ばした。

 ドサリ、とガーデンナーがゴミのように転がって、


 「……動け! ウェッソン! 我らも加勢する! 誰か、ライードたちを呼びに行け! 三組で一斉にかからねば、とうてい魔王は倒せんぞ!」


 レームスが叫び、自ら剣をふるって猛然とストラに向かった。アナーゼルも、自慢の大戦斧を振りあげて続く。


 遅ればせながら、ウェッソンも続いた。


 その後ろから、バーラとエルステル、ヴォールンとワーデラーの援護魔法が飛ぶ。


 オルトンは、足が震えて声が出ない。


 レームスとアナーゼル、それにウェッソンに対物理防御魔法、対魔術防御魔法、対物理攻撃力アップ魔法、対魔術防御突破魔法、さらに高速移動魔法が飛ぶ。全て、いつもの連携攻撃パターンの一つだ。


 それが終わるや、ストラめがけてバーラの魔術の矢、エルステルの電撃、さらに、再度ワーデラーの火球が迫った。戦士と勇者は防御魔法で魔法攻撃が無効化されているので、遠慮は無い。


 ちなみにヴォールンはドルイド魔術の使い手なので、基本、直接攻撃魔法は使わない。回復と援護、それに呪い、催眠などの間接攻撃専門だ。


 二組の勇者パーティによる、同時攻撃だった。よほどのバケモノでなくば、一撃で倒せる攻撃だった。


 だが、少なくともウェッソンは、その心中の大部分を絶望が占めていた。


 先ほど難なく撃退された戦士二人も、これらの攻撃・防御補助魔法を既にたっぷりと付与していたからだ。


 「ぬぅあああ!!」


 海賊あがりのアナーゼルが戦斧を叩きつけると同時に、エルステルの放った七本の魔法の矢がストラに突き刺さった。


 ストラは、準超高速行動セミ・ハイマニューバにすら、入らなかった。

 観客むらびと達に、この「出し物」をちゃんと魅せ・・ないといけない。


 原理不明ながら魔力子マギコリノが電磁バリアをスルーするのは、レミンハウエルとの戦闘で分かっている。が、この魔力子マギコリノの塊による極小ミサイルに、レミンハウエル程の攻撃力がないのは明白だった。


 光子バリアが展開し、ストラが輝きを放った。甲高い摩擦音がして、魔法の矢が全て弾き飛ばされた。それから、ストラが人差し指一本でアナーゼルの戦斧を止め、受け流しながら方向を変えてワーデラーの火球にアナーゼルをぶつけた。対魔法防御がかけられているとはいえ、衝撃までは防げない。アナーゼルが、爆轟でぶっ飛ばされる。


 そこに、エルステルの雷撃がストラに突き刺さった。すかさず、レームスが攻撃力+80付与の、竜の首すら一撃で落とす魔法の剣をストラの細身めがけて振るった。


 電撃がスパークして、空気を引き裂いた。轟音の中、ストラは光子剣アンセルムすら抜かずに、その場を動くことも無く、レームスの魔法剣めがけてまた右手の指先を当てる。

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