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第6章「(ま)おうさま」 2-4 仕切り直し

 ストラはタケマ=ミヅカが消えた場所をやや空間探査していたが、結局どうやって転送したのか分からなかった。


 (魔力子マギコリノの移動痕跡……無し、位相空間制御痕跡……無し、時空間歪曲効果……無し)


 つまり、空間転送ではなく、本当に消えた・・・・・・という他は無かった。

 (いったい……何者……!)


 プランタンタン達とウェッソン達が、固唾を飲んでストラの後姿を見守っていたが、ストラが踵を返し、戻ってきたので、


 「だ、旦那、もうよろしいんで?」

 「うん」

 プランタンタンから手綱を受け取ったストラは、しかし、そのまま村に戻り始めた。


 「旦那? どこへ?」

 「いったん帰る」

 「え? へぇ?」


 「戻って、しばらく経過観察します。予定は三日。その間に、いまの人物が再び現れなかったら、再出発します」


 「…………」

 三人はやや唖然としていたが、急いでストラの後を追った。

 驚いたのはウェッソンだ。

 「ち、散れ、散れッ……!」


 七人が慌てふためいてその場で解散し、何事も無かったように村人らの中に溶けた。その辺は、流石に熟練の冒険者だ。


 また、エルステルも大急ぎで再び念話魔法。舌を打ってレームス、全速力で戻る。

 「ま、待ってよ……!」

 バーラが、魔術師ローブを翻して、大汗をかきながらその後に続いた。



 女将、ストラ達が戻ってきたので驚いて、

 「忘れものですか!?」

 「い、いえ、あの、その……」

 ペートリューが真っ赤になってオタオタしていると、


 「訳あって出発を延期し、あと三日滞在します。料金は別に払います。よろしく」


 ストラがそう云ってプランタンタンを見たので、プランタンタンがフランベルツ銀貨を四枚、出した。つまりフランベルツ相場で400トンプだ。それでも、飯付きで一泊12トンプなので、三日分ならかなり色をつけたほうである。


 「いえ! 前にもらった分でけっこうですから! さすがに、もらいすぎですよ!」


 女将はそう云って固辞したが、それは遠慮ではなく、ここまで来たら他の二軒のホテルからやっかみ・・・・が出るレベルだからだ。


 「いいから、とっておいて。もしかしたら、迷惑料になるかもしれないので」

 「えっ……!?」


 女将が、びっくりして硬直する。もちろん揉め事は御免だが、前にペートリューが払った1,600トンプは部屋の改装分には充分すぎたので、いちおう承諾する。


 また同じ四階の大部屋に入り、ストラは腕を組んで窓際に立つと、外を眺めたまま微動だにしなくなった。


 「…………」

 三人はどうしようもなく、普通に寛ぎ始めた。

 ただし、

 「おい、いつでも動けるようにしておけよ……」


 さっそく女給に頼んで持ってきてもらった村の特産白ワインをズラリとテーブルに並べ、端からラッパ飲みで・・・・・・グビグビやるペートリューに、釘を刺すのを忘れない。



 「魔王め……何を考えてやがる……!」


 ドタバタしただけだったレームスとウェッソン達、とにかくホテルへ戻っていったん仕切り直しとなった。とりあえず、監視を続ける。いざとなったら、村で戦うことも想定された。


 ところで、少し離れたホテルにいる、三組目の勇者達、ライード組であるが……。


 魔術師三人がメインのパーティーであるためか、ライード達は離れていてもストラの動静を魔法のカラスやスズメ、ヤモリ、ネコ等で常時把握していた。これはこの世界の常用魔術である伝達魔法の上位版で、我々で云う使い魔に感覚が近く、偵察・諜報ツールとして上位の魔術師は重宝している。当然、ストラは魔力子マギコリノ凝縮諜報ツールの動向として全て把握しているが……。


 レームス組のバーラとエルステル、ウェッソン組のヴォールンとワーデラーの四人の魔術師の中では、ワーデラーだけがこの魔法術を行使できた。が、なにぶんワーデラーはこの世界では高齢の部類であり判断が鈍っているし、何よりウェッソンからそういう魔術偵察の命令も無いので、何もしていない。何より、相当長期間この偵察魔法を使っていないので、本当に使えるかどうか怪しいところであった。


 そのようなわけで、ライード、ヘーゲルバッハ、ルーメナーの三人の魔術師も、ホテルにいながらタケマ=ミヅカなる謎の異邦女剣士の存在を知ったわけだが、


 「あいつ、西方人街の奴じゃないか?」

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