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第6章「(ま)おうさま」 1-5 ライード組~急な出立

 バックバウスの部下の女戦士のガーデンナーと、勇者ウェッソンの噂を聞きつけて、半ば強引に仲間に入った新人女魔術師のオルトン、そして少年従者で盗賊見習いの美少年ミレス。ガーデンナーとオルトンは身分違いの恋を実らせて玉の輿に乗ろうと必死だったが、ウェッソンは美少年のミレスのがお気に入りで、事実上の情夫にしているのが現実だった。


 そして少し離れたホテルにいる五人組は、ライードを含めた魔術師三人と戦士二人の強力なパーティで、みな帝都リューゼン周辺出身のエリート冒険者だった。恐らくパーティ戦では、三組の中で最強だろう。以後、「ライード組」とする。


 魔術師にして勇者ライードは、祖父母と父がマンシューアル藩王国のさらに南方諸民族の出身移民で、いわゆる焦げ茶に近い褐色肌に黒髪。強力な幻覚・催眠魔法の使い手で、自らに超絶敵な暗示をかけ、無敵の魔法戦士に「変身」するという、ちょっと変則的な戦い方をする。


 ライードの友人の魔術師ヘーゲルバッハは、薄い褐色肌で先祖がマンシューアル北部出身。新人の頃、2人で冒険を始めた。水魔法の使い手である。


 三人目の女魔術師メールナーは、ライードが酒場でナンパしたのがきっかけで仲間になった。ライードの魔法は発動に時間がかかり、ヘーゲルバッハも直接攻撃というより間接攻撃が得意なので、二人のサポートとして攻撃・防御魔法をバランスよく使える万能タイプ。彼女は帝国中西部の出身で、日焼けした薄小麦色の肌にソバカス、茶金髪だ。


 そして二人の戦士は、三人の物理的防御及び攻撃を担当する。


 一人はグーラントという女戦士。メールナーと同じく帝国中西部の人間で、濃い茶金髪に薄い褐色の肌だった。いわゆる冒険者斡旋所で、戦士を探していたライード組にスカウトされた。風を操る希少な魔法剣を持っており、ライードに気に入られた。また、腕も確かだった。


 もう一人の戦士メルツァントは、グーラントの知人で楯使いだった。もちろん魔法の楯だ。変形して攻撃にも使える万能武器である。


 ちなみに、グーラントとメルツァントはこの冒険行で気が合い、恋人というほどではないが、互いの身体を知る仲である。


 彼ら17人(・・・) が、にわかに高まった緊張感の中で、新魔王ストラとどう戦おうかシミュレーションを始めた。



 2


 その夜はぐっすり・・・・と休み、緊張感のカケラもないプランタンタン達三人、特に部屋から出ることも無く、女将に地図や新しい装備、糧食と水、四頭の毛長馬、衣類一式を注文し、これからのことを考えた。


 採寸のために村の仕立て屋が部屋を訪れ、またペートリューは二軒の醸造所が持ってきた試飲用のワインをがぶ飲みして醸造所の人間を驚かせた。


 翌日はそんな感じで過ぎ去り、三日目の朝食後にプランタンタンが、

 「じゃあ、昼過ぎに出立いたしやあしょう」

 いきなりそう云いだしたので、フューヴァが驚いた。

 「ずいぶん急だな」


 プランタンタン、壁際にだらしなく両足を投げ出して座りこみ、既に飲んだくれかけているペートリューを顎で示す。


 「なるほど……」


 普段なら、いくらペートリューが飲んだくれていようと馬に括りつけるなり荷馬車に転がすなりできるが、当面は通訳をしてもらわないといけない。いつまでもダラダラと飲んだくれさせているわけにはゆかないのだ。


 もっとも、村の空間記憶探査により、ストラが既にヴィヒヴァルン南部語から王都共通語、さらには17人の勇者一行を探査することにより、ノルマンドル語からホルストン共通語、帝都周辺のリューゼンベル語まで会得しているが。


 ついでに、三人の勇者がどうやってストラを襲おうとしているかまで、とっくに把握済みだった。レームスとライードは、自ら闇に乗じて村人を襲い、それを口実にマッチポンプでストラへ戦いを挑むことができないかと画策していた。また、貴族出身で基本的にお坊ちゃんのウェッソンは、クソ真面目にストラが街道に出てから追撃しようと準備を整えていた。


 今日の午後にもう出るのなら、出鼻をくじくことになる。

 「ストラさ……」

 「いいよ」

 決まった。

 ペートリューを起こし、荷物を馬に括りつけ、女将へ出立を告げる。

 「あら、まあ、まあ、もうつんですか? それはそれは……」


 女将、一か月は豪遊滞在できる前金で、三日で出発するのだから笑いが止まらぬ。大儲けだ。


 それを、ロビーで何気なく監視していたベロウが聴いていた。

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