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第6章「(ま)おうさま」 1-4 レームス組とウェッソン組

 ベロウの言葉にレームス、

 「そんなんでれたら、苦労はないだろ」

 思わず笑ってしまい、ベロウもちがいねえ、と苦笑した。

 「ま……とりあえず様子見だ。ベロウ、目を離さないでくれ」

 「へい」


 ベロウが、目を細める。レームスは選帝侯家の一つ、ノロマンドル公国の騎士階級出身だが、けしてただの騎士ではなかった。裏仕事メインのベロウをけして軽んじておらず、報酬も弾んでいた。


 「だけどよお、他の連中に先を越されちまいやせんか」


 荒くれは、北ノランド海の元海賊である。レームス組に退治され、その後、スカウトされた。また、女魔術師のバーラも、鋭い目つきで、


 「ホルストンの坊ちゃん達はまだしも、帝都から来てるという魔術師軍団は、ちょっと要注意ですよ」


 「確かに……」

 レームスが顎を撫でる。どうせ、他の二組も新魔王のことは把握している。

 だからこそ、向こうもまずは様子見するだろうというのも、予想できた。


 「ま……様子見と云っても、二、三日中には始まる・・・だろう。もしかしたら、混合戦かもしれん。それも想定しておけ」


 四人が、無言でうなずいた。

 


 ホテルの最上階(と、云っても四階だが)の大部屋に入ったストラ達は、大きな石炭ボイラーにより用意された湯に入り、女将に用意させた着替えを買って、その日は休息に使った。夕食も、こんな田舎には不釣り合いなほど豪華だったが、料理が豪華というより量が多いだけだったので、固辞しようとした。が、ストラが全部食べてしまったので、プランタンタンとフューヴァが驚いた。


 「だ、旦那、ふだんからそんなに食ってやしたっけ?」

 「いや」


 ストラにとって飲食は人類偽装行動であり、半眼の無表情で粛々と食べたそばから原子分解して疑似呼吸等により排出される。むしろ、分解に要するエネルギーのほうが損するほどだ。とうぜん、ほぼ無尽蔵に食べ続けられるし、毒殺も不可能である。


 「残したってしょうがないさ。でも、明日から少し減らしてもらいましょう」

 「うん」

 ペートリューだけ、久々にワイン飲み放題にご満悦だった。

 さて……。


 レミンハウエルとの戦いにおいて、未知世界における自律行動待機潜伏モード自衛戦闘レベル3が発動したことにより、レベル1に戻っても限定的に位相空間制御プログラムが使用できるようになった。具体的には、フィーデンエルフの財宝を収納している専用次元格納庫へのアクセス権を得たのと、三次元空間探査の空間記憶直近過去深層探査の範囲が広がった。


 それを利用し、ストラはさっそくこのホテルを含め、他のホテルにも滞在している17人全員をその夜のうちに三次元深層探査した。


 判明した全てを記すときり・・がないので、概要を記す。


 まず、ストラと同じホテルにいる五人組であるが、帝国の中北部の、選帝侯家が一、ノロマンドル公国を中心とした地方の出身者で構成され、同地方をメインに活躍していた勇者レームスを隊長とするパーティで、以後便宜上「レームス組」と呼称する。


 公国出身の騎士レームスの他、レームスの愛人でもある同じく公国出身の魔術師バーラ、公国近隣のビルフェキア出身の魔術師エルステル、北部スデンセンの重戦士で元海賊のアナーゼル、そして旅の途中でスカウトされた盗賊にして情報ネタ屋、暗殺者のベロウの五人からなる。出所不明のベロウ以外は、帝国北部の諸民族で、色白で茶髪、金髪、赤毛に眼が青いか茶色い。ベロウだけ、もう1000年近く民族人種の入り混じった帝都周辺の人間に見えた。


 隣のホテルにいる七人組は、ヴィヒヴァルンの隣国ホルストン王国出身のパーティで、勇者ウェッソンはホルストン貴族の出身だった。以後便宜上「ウェッソン組」とする。才能ある魔法剣士のウェッソン以外の六人は、大きく分けてウェッソン家の家人の三人と外部の人間三人からなる。分かり安く、ホテルの階も上階四人と下階三人で分けられている。


 ウェッソン家に仕えていたドルイド系魔術師のヴォールンはウェッソンと年も近く、幼少からの友人でもある。また、末子のウェッソンを心配した当主により、元家宰で家老魔術師のワーデラーが老骨に鞭打って(と、云っても62歳だが)帯同している。そして同じく当主に命令されてウェッソンに付き慕っているウェッソン家の家人、戦士バックバウス。槍と剣の使い手だった。村の通りでプランタンタンに気づいたのは、彼である。


 その他の三人は、パーティの仲間というより従者に近い。

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