表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/1273

第6章「(ま)おうさま」 1-3 三組の勇者御一行

 帝国中北部から北部、北西部にかけて活躍。魔物退治、盗賊退治、その他、傭兵請負、遺跡探索等で修行と金儲けをする、いわゆる「冒険者」だった。


 別に数値化されているわけではないが、比喩表現として皆かなりの高レベルになり、いよいよ最終的な地位と名声と報酬を求め、南に来た。


 フィーデ山の火の魔王を倒すために。


 その矢先、フィーデ山が大噴火。驚いていると、つい先日、ヴィヒヴァルン王の新しい告知に接した。


 「フィーデ山の魔王を倒したヤツが……よりにもよって新らしい魔王になった、とはな……」


 昨日の夕刻、その報に接したときは、度肝を抜かれた。魔王を倒した者は、てっきりヴィヒヴァルンの新王か、領地を得て高位貴族にでもなると思っていたのに……まさか、新魔王を名乗るとは。


 「ナニを考えてやがるんだ? ソイツ」

 「バカじゃねえのか」

 彼らの発想では、そう考えるのが自然だった。


 「待て待て……オレたちにとっちゃあ、好都合だろ。倒そうと思ってた魔王を倒され……先を越されたと思ってたとたんに、これ・・だからな。このまま、新魔王を倒すんだ!」


 レームスの言葉に、仲間たちが決意を新たにする。


 そうして、明日にもフィーデ山方面に新魔王探索に出ようかと思っていたところに、ストラ達がやってきたというわけだ。


 しかし、どうしてストラが新魔王と分かったのか……?

 ヴィヒヴァルン王の告知には、こうあった。



 ~~ 新魔王:魔法剣士。未知の魔法と、魔法剣の使い手。種族不明ながら、人間に酷似。しかし人間ではないことは確実。ゲーデルエルフと人間二人の従者あり。全員女。魔王号は不詳。フィーデ山の火の魔王より、何らかの号を授けられていると思われる。新たなる魔王号を知った者は、即座に王宮へ報告されたし ~~

 


 既に、ストラの情報はヴィヒヴァルン中央に筒抜けであった。


 ヴィヒヴァルンは魔術王国であり、宮廷魔術師にして魔法院院長シラールの「眼」は、王国中に届いている。まして、レミンハウエルとは代々盟約を引き継いできた。シラールもヴァルベゲル8世も、何度もレミンハウエルと会ったことがある。


 さて……。


 たまたま、レームスと同じように魔王を倒そうと村に来ていた「勇者」が、他に二人いた。


 世界に「魔王」は八人いるというが、どこにどのような魔王がいるのかというのは、全く分かっていない。バーレン=リューズ神聖帝国には、少なくとも三人、伝承や噂を含めると五人いるとされた。


 その中で、ヴィヒヴァルンで正式に退治を奨励し、その実は魔王の生贄にしていた「フィーデ山の火の魔王」は、ある意味、世界一有名な魔王だった。場所も特定され、いるのが確実だし、実際、何百人という冒険者が魔王に返り討ちに遭っている。


 その魔王が倒されたのに、倒した魔王が新魔王となって、しかもノコノコ目の前を歩いているなどというのは、カモネギというレベルではなかった。


 のだが、非常に面倒くさい・・・・・ことに、彼ら「勇者御一行様」は、レベルが高ければ高いほど、体面や世間体、評判、名誉を気にした。闇討ち不意打ちは、やるなら絶対にバレないようにする必要があった。冒険者などというのは、民衆の支持率が落ちると、ただの野盗とやっていることは大して変わらないからである。


 従って、村に新魔王が現れ、同じ宿に泊まったからといって、単純にラッキーというわけでもない。


 どこでどう倒すか。

 それが、大問題だ。


 できれば、魔王がこの村を襲ってくれると非常に助かる。むしろ、そう仕向けるのも冒険者の「ウデ」と云えた。


 「まして、いま、この村には魔王退治の『勇者様』が他に二人もいやがるからな」

 レームスが、皮肉に顔を歪めた。


 つまり、勇者御一行が三組いるというわけだ。ちょうどホテルが三軒あるので、それぞれ滞在している。


 ストラと同じホテルに彼ら五人、隣のホテルにい七人、少し離れたところのホテルに五人の勇者一行パーティがいた。


 その合計17人が、ストラの探査した兵士、魔術師、その他の全員だった。


 三組が、村に滞在しながら情報を収集し、フィーデ山へ向かおうとしていた矢先の、レミンハウエルの死と新魔王の誕生だった。


 「だけど、本当に新魔王が向こうからやって来てくれるとはなあ」


 そうつぶやいたのは魔術師エルステルだ。その他、女魔術師のバーラ、見るからに荒くれっぽい戦士アナーゼル、そして、これも見るからに情報屋、盗賊、暗殺者といった雰囲気の斜に構える中肉の男、ベロウだった。


 「今夜にでも、っちまいますか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ