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第5章「世の終わりのための四重奏」 6-8 ストラの真理

 そのまま、レミンハウエルを貫いている五本の剣が一斉に動き、文字通り全身を細切れ・・・にした。


 魔王の魔力は、それすらも即座に回復したが、

 (こっ……!! この……衝撃は……!!)

 一斬一斬に、エネルギー回収効果場フィールドがまとわりついているではないか!

 回復した瞬間、またも五本の剣が四方八方より同時に心臓に突き刺さる。

 そして、直接、魔力を強制吸収する。

 声も出ず、レミンハウエルが眼をむく。

 そのまま剣が動き、胴体を五等分する。

 すかさず回復するが、流石に消耗が激しい。

 (な、何がどうなって……!!)

 レミンハウエルは現象を認識できず、混乱した。

 しかも、

 (てっ、転送魔術を掴めないぞ……!?)


 通常空間ならまだしも、ここ・・はレミンハウエルの結界内で、高濃度の魔王の魔力で満ちている。そもそも転送など不可能なのに、ストラが空間移動をどうなって行っているのか分からない。そのうえ、たと強引に魔力を動かして転送しているのだとしても、異質の魔力が動くので、転送など手に取るように把握できるはず・・なのだが……。


 さらに、レミンハウエルが真後ろから袈裟切りに真っ二つにされた。

 すぐさま後ろに向けてヨーヨーを飛ばすが、既にいない。いや、無い。何も無い。

 そこを、胴斬りで再び真っ二つだ。

 修復したそばから、脳天から股下まで唐竹割にされる。


 そこを回復したところに、首から手足から五体バラバラに切断される。

 さらに回復……また切断……!

 切断の都度、衝撃と共に魔力が奪われてゆく。

 きり・・がない。

 延々と切り刻まれ始めた。


 まして、ストラは次元の裏にいて姿を現さず、剣だけが出現して消える。

 ついにレミンハウエルが振り回すヨーヨーすら、次元窓に飲まれて「消え」た。


 すぐに新しいヨーヨーを出すが、ストラを認識できないのだから攻撃のしようがない。


 「クソが!! チクショウ!! なんだ、なんだこれは!! おのれ……!! 何なんだ……何なんだよ、お前は! どうなってんだ!! ストラあ!! ナニモノなんだよ!! ストラ……ストラァアアアァアーーーーッッ!!!!」


 魔王の叫びが、地下空間にこだま・・・した。

 そして……ついに……。

 レミンハウエルの回復が遅れ始める。


 膨大な魔力も底が見え始め……なにより、レミンハウエル自身が、疲れてきている。


 精神的に持たない。

 これは、ある種の、拷問だった。

 「クソッ、クソがああ! 来るな……来るなああ!!」

 煌めく光子の剣が視界に入るや、レミンハウエルが恐慌を起こした。

 その自らを庇う左手が、音もなく切断される。

 だが、もう復元しなかった。


 ストラが、魔王の左手を持って、浮遊していた。

 左手の指輪にあるのは、赤色のシンバルベリルだ。

 かなり薄くなったが、まだなんとか赤を保っている。

 ストラ、シンバルベリルから、残った魔力を全て吸収した。


 その効果場フィールドの中で、レミンハウエルの左手は原子分解された。

 レミンハウエルは唖然としてその信じられない光景を凝視していたが、

 「フ……フフフ……クク……! ハハハ……アハハハハ!!」

 復元しない左手首を押さえ、肩を揺らして笑いだす。

 「……私の負けだ……ストラよ……」

 「…………」


 ストラは無言で、空っぽになった小さなシンバルベリルを握りしめて砕いた。そして手を開くと、シンバルベリルの破片とひしゃげた指輪が落ちた。


 「ストラよ……お前は、この世界・・・・ことわり動いていない・・・・・・だろう……」

 ストラの真理に気づいたレミンハウエルの表情は、諦観していた。

 「いったいお前は……お前は、どこから・・・・来たのだ!?」

 「…………」

 ストラは、答えなかった。答えたところで、どうせ理解できない。


 「答えろ! ストラよ! 本当に、お前は何者だ!? 人間ではあるまい! まして魔族でも……どうして……どうして、この世界に来たのだ!?」


 それは、ストラにも分からない。答えようがない。空間破砕兵器の影響で、次元の狭間に落ちたストラがこの世界で目覚めたのは……天文学的確率による、偶然に過ぎない。もしくは、神というものが本当に存在するのであれば、神の気まぐれ、神の思し召しとしか云いようがない。まさに、神が、ストラをこの世界に導いた。

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