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第5章「世の終わりのための四重奏」 5-5 はさみうち

 それからしばらくし、やっとコルネが落ち着いて、歩き出した。歩きながら説明するには、


 「魔物のエサは……違う魔物や、森の動物とかの肉なんだけど……たまに、人間の手や足や……胴体や頭があって……魔物がすごく喜ぶんだ……それで……知ってる人がたまにいて……エルフ達は……死んだ奴隷だって云うんだけど……元気だったのに……急にいなくなって……大きくなったら、魔物に喰われるんだって思って……」


 三人とも、声も無い。


 (いやはや……いくらあの極悪非道なグラルンシャーンのクソジジイでも、よほどの刑罰以外に奴隷をゲドラムのエサにするなんざあ、しなかったでやんす)


 それを、日常的に行っているとは。


 (……しかし、奴隷とはいえ労働力……あまり精神的に追い詰めると、生産性に欠ける……。たとえウソでも、いつかは元の生活に戻してやるとか、働き次第で地位を向上させる等の報酬を与える……。どうして、将来は魔物のエサにするなどという絶望的な決定事項を秘匿しておかないのか……?)


 ストラが、コルネの小さな背中を見やって目を細めた。念のため脳内探査をしようと思った矢先、近距離三次元探査に感。


 「前方に魔物」

 「エッ!?」

 四人が、緊張で硬直した。

 同時に、ストラが前に出た。


 とたん、

 「後ろからも魔物」

 ストラが、今来た道を振り向いた。

 「はっ、はさみうち・・・・・でやんす!!」

 プランタンタンが、震えながら叫んだ。

 「てめえ、まさか!?」


 フューヴァがコルネを睨みつけたが、コルネは恐怖と絶望にひきつって泣きながら半分笑った表情かおをし、またガクガクと震えていた。フューヴァは、そもそもコルネの提案がエルフの罠かと思ったのだが、出会い自体が偶然だし、


 (確かにこんな奴隷の牧童だったガキに、なんかできるとは思えねえ……!)


 そう判断し、少しでも抵抗するべく腰の後ろの野外用大型ナイフを抜き、逆手に構えた。


 だが、もう洞窟の左右に向かって、ストラの高熱プラズマ弾が一条の軌跡を残して飛んでいた。四人は、輻射熱防護用電磁バリアに護られている。フューヴァは眼がチカチカし、瞬きした。洞窟の両端から迫ってきていたのは、前が巨大コウモリガニ……キラトプル、後ろは触手と節腕の怪物だった。


 背後の触手と節腕の怪物はストラのプラズマ弾を防ぐ防御力は無く、多脚の中心にある野菜のカブみたいな胴体をブチ抜かれて一撃で絶命した。


 問題は、前方のキラトプルだ。分厚いハサミを楯のように使い、プラズマ弾丸を弾いた前例がある。


 そこはストラ、対応策をとる。


 先ほどニドラムを倒したのと同様に、超強力電磁波と重力制御で簡易の極小重力レンズを作り、プラズマ弾を爆縮。髪の毛の先ほど一点に対戦車プラズマの威力を集中して、貫通力を数百倍にも高める。そこから膨大な熱が貫通の内側に拡散し、キラトプルの分厚いハサミ脚が肉も甲殻も熱変性して焼け焦げ、火を噴いて防御力が失われた。


 そこへ第二弾がヒット。人間の胴体など両断しそうな、重機のアタッチメントめいた巨大なハサミが爆発した。


 ギュウギュウと鳴き声を発し、巨大キラトプルが後ろに下がった。

 「目的地はまだ?」

 やおら、ストラがコルネに声をかける。

 「あの魔物を、どこまで押せば・・・いい?」

 返事を待たず、また問う。コルネはビックリして、固まっていた。


 「おい、御覧の通り、魔物なんざストラさんの敵じゃあねえ! ホラ、どこまで追っ払えばいいんだ? 通路の途中でぶっ殺したら、塞がって通れなくなるだろ?」


 フューヴァの説明に、コルネが我に返る。


 「いっ……! 行き止まりを右に行った先の小さい部屋だよ! そこから、いっつも外の森に……! そこでエルフに見張られながらコケをとったり、草を摘んだりしてたんだ!」


 「行き止まりかよ……!」

 フューヴァが顔を歪める。

 「いや、行き止まりは丁字路。左にこいつを追いこむ」


 距離、37メートル。探査で判明した。フューヴァの云う通り途中で殺すと数路を塞ぐし、跡形も無く焼きつくす火力を発揮すると、流石に電磁バリアだけでは四人を保護できない。どうしても、物理的にどこかに行ってもらう他はなかった。

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