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第5章「世の終わりのための四重奏」 4-6 襲撃、フィーデンエルフ

 まず全長7メートルはあろう水中の巨大な影に突き刺さり、弾ける。高温と衝撃で水しぶきが上がって、白いずんぐりとしたナマズともオオサンショウウオとも云えぬ目のない怪物がくの字になってひっくり返り、その巨体を波間に沈める。


 そしていまにもプランタンタンに咬みつこうとしていた、これも全長が10メートルはあろう双頭のムカデは、その右側の頭部に球電が直撃、爆裂して弾け飛んで、これもひっくり返ってのたうち回った。さらにその体に小さな球電が複数、直撃して、バラバラに引きちぎられて周囲に吹き飛ぶ。


 ストラがプランタンタンの近くに着地し、すぐさまフューヴァが助け起こした。

 「おいっ! しっかりしろよ!! プランタンタン!! 眼を覚ませ!」


 子供のように細く小さいプランタンタンは、フューヴァの腕の中でがっくりとうなだれている。


 「……水を吐かせて、人工呼吸を。お湯だったせいか、体温は下がってない」

 「……??」

 ストラの云っている意味が分からず、悲愴的な顔でフューヴァが混乱する。

 「貸して」


 ストラがプランタンタンを受けとり、緊急医療プログラムを起動。戦場医療チームの救急救命士と同様の処置ができる。しかも、機能的に電気心臓マッサージから擬似ナノマシン緊急手術まで可能だ。


 うつ伏せにして背中を叩き、胃を押して水を吐かせると、仰向けにして人工呼吸を施した。


 フューヴァはストラが何をやっているのか理解できず、固まったが、

 「……ゲホ!! エッホエッホ!! ゲホゲホホ……!!」

 プランタンタンが一撃で息を取り戻したので、

 「おい、こいつ! 生き返ったかよ!!」

 ストラの横に膝をつき、涙目となってその細い手足をさすった。


 「……? はあ、だ、旦那……旦那が助けてくださったんで……?」

 プランタンタンも、状況が分かってきた。感涙し、涙をぬぐう。

 そこへ、ペートリューの緊迫した声が轟く。

 「ス、ストラさん! こいつら、まだ生きてますよ!!」


 見ると、プラズマ弾によって複数に引きちぎられた双頭巨大ムカデの体が、バラバラになってもまだ激しく動いている。


 「下がってて」

 フューヴァがプランタンタンを支え、ペートリューを連れて下がった。


 ストラは同じプラズマ球でも、次は超高温の火炎弾を発して、魔物の体を焼きつくした。悪臭と共に、ムカデの体が激しく燃えあがった。


 その様子を谷の上から見下ろしているのは、ヂャーギンリェルに率いられた、150人からなるフィーデンエルフの襲撃隊だった。みな、 2メートルから3メートルはある巨大なゲジゲジのような、脚だらけ、触覚だらけの濃い乳白色の殻を持つ魔物に乗っている。


 「ラルルンリューの殻を一撃で砕いて、あまつさえ塵も残さず焼き払うとは……なんたる攻撃力……!!」


 ヂャーギンリェルが瞠目した。

 ラルルンリューとは、双頭のムカデのバケモノのことだ。

 「本当に、魔力が動いてませんね。どういう術なんでしょう?」


 兵士の一人が、不思議そうにつぶやいた。彼らはみな、魔王レミンハウエル直下の優れた魔法戦士である。


 「わからん」

 ヂャーギンリェルが首を振る。


 「だが、どのような魔術にしても、我らの装備は魔王様直伝……あれしきの火球など、水を弾くが如く弾きましょう」


 「確かに……」

 ヂャーギンリェルが右手を上げた。一同が臨戦体勢となる。


 サッと手がふり下ろされ、ゲジゲジどもがいっせいにすり鉢状になっている谷の斜面をおりる。

 


 「警告。フィーデンエルフと思わしきエルフの集団による襲撃を確認」

 ストラの声に、三人が飛び上がって周囲を確認する。

 「あっ、あそこでやんす!」

 水晶天井からの薄明かりに見ると、谷をおりてくる騎馬武者……もとい、

 「うわっ、なんだ、ありゃ!!」

 「わからねえでやんす!!」

 三人が、そのおぞましさに震え上がる。


 なんといっても、彼らフィーデンエルフの「馬」は、巨大ゲジゲジ(に似た魔物)なのだから。


 それらが、一直線に急斜面の岩肌の谷を下りてきて、さらに途中から二手に別れる。漆黒の革の衣服の上にやはり漆黒の軽鎧をつけ、丸い黒楯、そして先端に鉤のついた独特の形状をしている片刃刀を持っている。


 その姿は、まさにフィッシャーデアーデで戦った黒騎士ゴハールや、魔物のトルネーグスに酷似していた。

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